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ゾルダⅡ世・素敵な仲間達編9

 投稿者:仮面歩行者  投稿日:2018年 8月 1日(水)17時21分19秒
返信・引用
  -渡帝辺地区に繋がる交差点のある国道-

一台のタクシーが路肩に停車して、後部座席から一人の男が下りた。伊達昌平である。ただし、ムッキムキで獣臭い筋肉野郎ではない。前章の空想科学6神戦でフンドシ力を使いすぎた結果、一時的な勃起不全になり、自慢の躍動する筋肉も萎えてしまい、筋肉野郎の時よりも一回りほどスマートな伊達昌平である。

「お客さん、悪いことは言わない。この先には行かない方が良いですよ。」
「ご忠告、感謝する。しかし、亡き妻の指示でね・・・この地の調査をしなければならないのさ。」

昌平的には、タクシーで目的地まで行きたかったのだが、運転手が「行ったら死ぬ」「地元民で、この峠に行く命知らずはいない」と乗車拒否をしたので、仕方なく、安全圏の国道沿いで下車して、峠道を歩いて上ることにした。
緩やかに曲がりくねった舗装道を歩き続けると、‘渡帝辺工業高校 この道2㎞’と書かれたベッコベコに曲がった表示板が見えてくる。

「ふむ・・・この先で良さそうだな」

数日前、極楽浄土の亡き妻から連絡が来て、「文架市渡帝辺地区で何かが起こりそうだから確かめて欲しい」と指示をされた。昌平が「何が起こるんだ、遥?」と訪ねたら、「よく解らないけど、とりあえず行け」と言われた。もの凄く大雑把な指示である。あと、まぁ、作戦時は「遥」ではなく、「シャア神」または「赤髪の彗星」と呼べと注意された。スゲー面倒臭い。
妻としては、痒いところに手の届く良妻だが、相変わらず、それ以外の面では、何か大事な物が大幅に欠落した痛々しい女なのだ。亡き妻が事前に知らせてくれた情報によると、渡帝辺地区は酒池肉林らしい。亡き妻からは、「多数の女の子を抱きまくるのは構わないけど、避妊はちゃんとしてね!」と釘を刺されている。

表示板を通過してしばらく歩くと、今度は「○月×日 渡帝辺怒」、「【真の漢を決めろ!!タイマン秋の陣!!】参加者求む」、「『熱々潮吹きクイーン決定戦!!』『センズリ王者決定戦!!』、学外の飛び入り参加自由」、「『ビバ自然!!屋上ビアガーデン!!』テイクアウトできます」等々と、雑な字で書かれた立て看板が立ててあり、何のことかはよく解らないが、近々【渡帝辺怒】ってイベントがあるっぽいことだけは理解できた。
あとついでに、『避妊具、売店にあります。ゴム1個5000円、ピル1個10000円』って表示もある。

「ふむ・・・とても、興味深いな!」

この道の先で、何か面白いことがありそうだ。昌平は、少しやる気を出して、峠道を上っていく。



―渡帝辺工業高校・聖飛会室―

「フン!私に恥をかかせやがって!やっちまいな!!・・・嵐を~起こしてぇ、すべてを~壊すのォ♪」
「ひぃぃぃっっっ!!私が何をしたんだぴょんっ!!?」

ザシンっ!!ズバッァッッ!!

恐怖で引き攣った表情の駕籠ちゃんの手が机の上に押さえ付けられ、久遠静花の指示で、容赦なく刃物が振り下ろされた!途端にモザイクがかかって、鮮血的な物とか、肉片みたいなのが飛ぶ!渡帝辺名物・エンコ詰である!
聖飛会は、ただの仲良しグループではない。聖飛会長・久遠静花を頂点にして、徹底的に統制をされた組織なのだ。例え聖飛会幹部でも、リーダーに逆らった者は、見せしめを兼ねて、容赦なく処罰をされる。

「ぐぅぎゃぁぁぁっっっっ!!これじゃ、鍛えた指技が披露できないぴょ~~ん!
 『太陽がくれた季節!!熱々潮吹きクイーン決定戦!!』で優勝できないよ~~~!!」
「駕籠ちゃん、今は『太熱々潮吹きクイーン決定戦!!』の心配をしている場合ではないぴょん!!」

親友の津地ちゃんが、恐怖で腰を抜かしながらも、手を押さえて苦しむ駕籠ちゃんの傷にタオルを巻いて止血をする。タオルは、みるみる真っ赤に染まっていく。

「フン!2番煎じの猛任愚夢寿女(もうにんぐむすめ)如きが調子に乗るなっ!
 私を裏切るからこうなるんだ!指だけで済んだことを感謝しなっ!・・・嵐を~起こしてぇ♪」

何故、駕籠ちゃんにエンコ詰の刑が下されたのか?その理由は、静花に「許可無く、自分より先に真司に跨がったのは、駕籠ちゃんなんじゃね?」と疑われたからだ。言うまでも無く、真司に跨がったのは日野芳華で、駕籠ちゃんは全く関係が無い。しかし、静花に疑われたら最後、彼女の意思に逆らえる者など誰もいない。

聖飛会は、時の狭間のイケメン狩り軍団とは、似て非なる組織である。イケメン狩り軍団は、同性に寛容で、♂捕虜に徹底的に厳しいグループだが、聖飛会の場合は正反対で、捕虜への待遇は比較的良いが、足並みを乱した同性メンバーへの罰は厳しい。

静花の、駕籠ちゃんへの制裁は終わったが、裏切り者と疑っているメンバーは、もう一人いる。羽交い締めにされたまま、静花の眼前に引っ張り出されたのは、酷升(こくしょう)小百合である。

「あ、あたいが何をしたってんだ!?・・・バレンタインデーキッス♪」
「フン!自分の胸に聞いてみなっ!・・・嵐を~起こしてぇ、すべてを~壊すのォ♪」
「わ、解らないから、アンタに聞いてるんだ!・・・バレンタインデーキッス♪」
「しらばっくれるなっ!このメスブタがっっっ!!!・・・嵐を~起こしてぇ、すべてを~壊すのォ♪」

静花の強烈な膝蹴りが、酷升の腹を抉る!羽交い締めにされたまま蹲る酷升!静花はすかさず酷升の髪を掴んで強制的に顔を上げさせ、渾身のビンタを叩き込む。

「・・・うぐぅぅ!!・・・バレンタインデーキッス♪」

「本来なら、アンタにもエンコを詰めて欲しいんだけどねぇ・・・
 アンタは、聖飛会発足時から一緒にやってきた鬼矢雲呼苦羅武(おにやんこくらぶ)の仲間だ。
 その功績に免じて、巨大振動具刑で勘弁してやるよ!
 ただし、期間は、文化祭が終わるまでだ!・・・嵐を~起こしてぇ、すべてを~壊すのォ♪」
「くっ!ちくしょー!アンタを呪ってやるっ!!・・・バレンタインデーキッス♪」

巨大振動具刑、それは全身を拘束されたまま、固定された巨大振動具で、ず~~~っと刺激をされ続ける刑罰である。まぁ、それなりに気持ちが良いんだろうけど、問題は期間である。文化祭終了まで、約10日間もの間、ず~~~~~っと刺激されっぱなしってのは、正直言って辛い。そして、出会いとテイクアウト有りの文化祭が終わるまで、拘束されっぱなしって事は、文化祭には参加できないのだ!酷升の今年の文化祭は、今この場で終わりを迎えた。

実刑判決を受けた酷升は、静花を睨み付けて、大声で罵声を浴びせながら、お仕置きの部屋に引っ張られていく。
何故、酷升に巨大振動具刑が下されたのか?その理由は、静花に「許可無く、自分より先に真司に跨がったのは、酷升なんじゃね?」と疑われたからだ。言うまでも無く、真司に跨がったのは日野芳華で、酷升は全く関係が無い。しかし、静花に疑われたら最後、彼女の意思に逆らえる者など誰もいない。


このたびの判決は、いささか度が過ぎている。立ち会った聖飛会幹部の皆がそう感じたが、誰一人、意見を出来る者はいない。
静花が聖飛会発足時のメンバーってだけなら、例え、番長の座にいても、同格の酷升や、その他の鬼矢雲呼(おにやんこ)メンバーが意見を言えただろう。実際に、聖飛会発足時の静花は、やや独善的な部分はあったが、皆の意見を聞きながら組織を運営していた。しかし、今の静花は違う。数年前の解散騒動以降、少し落ち目になってきたとはいえ、全盛期だった頃の喜村卓矢(通称・きむたく)を落として、蛇煮IS(じゃにいず)をバックにつけたのだ。流石に、静花への権力の一極集中は免れず、校長の秋○さん以下、誰も静花の暴政に文句を言えなくなってしまった。

お仕置き室の方からは、酷升の静花を呪う声と、幸せそうな喘ぎ声が、同時に聞こえてくる。きっと、もう十数分もすれば、幸せそうな喘ぎ声だけになるだろう。



-夜・渡帝辺工業高校-

ド底辺な男共に宿舎なんて立派な物は無い。皆、教室や廊下など、適当な場所で雑魚寝をしている。ただし、番長や幹部など、校内で権力を持つ者は、保健室のベッドや、体育用具室のマットなどで寝ることが出来るのだ。

梶赤馬は、校庭にテントを立てて、中で一人で休んでいた。昼間は素性を怪しまれない為に、ド底辺な男子生徒達と行動を共にしているが、就寝まで、連中に合わせるつもりは無い。本日は、聖飛会との抗争で仲間(珍走仲間)が数人死んだが、特に事件は起きなかった。タブレットで香西警察署の特災課に「本日も異常なし」と報告をした後、今に至る。
赤馬は寝転がりながら思案をする。赤馬が所属する1Aの文化祭の企画は‘お好み焼き屋’である。材料の小麦粉は、‘龍神うどん’の子会社の‘龍神フーズ’ってところから仕入れるらしい。どんな製法で小麦粉を生産しているのかは不明だが、その小麦粉を炙ってニオイをかいだり、水に溶かして体内に入れると、精神が高揚するって特殊な小麦粉らしい。末端価格ではかなり高額だが、‘龍神フーズ’の幹部と仲の良い男子生徒が、破格で買い付け・・・てか、横流しルートを確保しているらしい。

「今日も収穫無し。事件性無しで、そろそろ捜査を切り上げるべきかな?」

ド底辺の野郎共は、一見、粗っぽいが、付き合ってみると気の良い奴ばかりである。対立関係にある生徒会の女達だって、恋と性に夢中な、年相応の女の子達ばかりだ。彼女達からは、何度か、聖飛会補佐の「【慧愚漸威琉】に入らないか?」と、誘われたこともある。捜査の為に潜入はしてみたものの、こんな普通の学校で、事件が起こるとは到底考えられない。

・・・てか、事件しか起こっていないのに、何故気付かないんだ、赤馬!?そんなザルだがら、パートナーや義妹が寝取られたことに気付けないんだぞ!

少々余談になるけど、作者は、久々の執筆で、全談をだいぶ忘れていたので、読み直してみて、「げっ!」と思った。俺、第303話で、「全校生徒2万人(大半が文架市以外の出身)」「女生徒は1~2割」と書いちゃっていた。
各学年はA~D組まであるので、単純計算で、各クラスに1600~1700人の生徒がいるわけだ。そんで、「1Cと2Aと3Cは、退学や粛清や抗争で人数が1/6に減っちゃった」らしい=3クラス×1700×5/6=約4200人が居なくなったって事だ。他のクラスも減り方が少ないってだけで、ある程度は減ってるだろうから、合計で6000~7000人くらいは、既にいなくなってる感じかな?
まぁ・・・社会の害にしかならないド底辺なクソ野郎ばかりだし、どうって事無い数字か。


ド底辺な男子生徒達も、文化怒は楽しみにしていた。ある者は「【見てくれ!!俺の愛車大自慢!!】にエントリーする!」と、またある者は「【真の漢を決めろ!!タイマン秋の陣!!】に参加する」と、そして命知らずのツワモノは「屋上ビアガーデンに行って、久遠静花をテイクアウトする!」と息巻いている。

毎年、文化祭で全校の2割&学外から遊びに来た人の4割、体育祭で全校の3割が消える。ちなみに、1Cと2Aと3Cでいなくなった5/6は、大半が体育祭の死者だ。武器所持OKの騎馬戦、地雷設置OKの棒倒し、谷を間に挟んで負けた方が谷底に落ちる綱引きで、生徒がだいぶ減った。1Cと2Aと3Cは、運動神経面で弱者だったので、体育祭で餌食になったのだ。
一応、退学が何人かいるが、その殆どが、自主退学ではなく、いなくなったけど亡骸を確認できず、処理に困って退学扱いにしたってパターンなのである。たいていは、芋掘り遠足とかに行くと、芋と一緒に土の中から発見される。嫌いな奴を埋めようとして穴を掘ったら、最近見かけなかった別の奴が既に埋まっていたって事もある。


男子も女子も、生徒の誰もが、「ウキウキ・ワクワク、文化祭が待ち遠しい!」ってテンションだが、一人だけ浮かない表情をしている生徒がいた。数週間前まではイケイケだったのに、色々あってスッカリおとなしくなった釣ルン手ハシル蔵である。

義兄の東品ウル彦が、目の前で脳改造をされて廃人になって以降、人間が怖くて仕方が無い。ハシル蔵とウ ル彦は、時給2万円のバイト代に目が眩んで、アトミック研究所のバイト面接に行った。面接は、優しそうな面接官と2~3言会話しただけで終わり、直ぐに採用が決まった。
最初の検体にはウル彦が選ばれた。事前に、バイト(手術)は、半日から1日程度かかることと、麻酔で眠るだけで、何もしなくて良いと説明され、ハシル蔵が見てる前で、ウル彦のバイト(手術)が始まった・・・が、バイト(手術)開始30分後くらいに、「あっ!やべっ!まちがった!でも、まぁ良いか!」的な会話があり、ウル彦は、ボタボタ涎を垂らして、何を訊かれても「アウ~」と言うばかりで、食事も排泄も歩行もままならない廃人になっちゃったのである。
「改造プランを練り直すので、直ぐにバイトは出来なくなった」って理由で、ハシル蔵は「3日後にまた来て欲しい」と言われたが、もちろん行っていない。見付けられたら研究所に無理矢理に連れて行かれそうで怖かったので、息を潜めて身を隠す事にした。言うまでもなく、珍走行為なんて目立つ事は出来ない。ハシル蔵が率いた≪刃禍魔琉堕死≫は、サブリーダーの狆相弾(ちんそう だん)に譲渡して、≪苦礎矢狼(くそやろう)≫ってグループ名に変わった。
ちなみに、狆相弾(ちんそう だん)は、昨日の聖飛会との抗争で、バズーカ砲の直撃を喰らって木っ端微塵になったらしい。

「くっ・・・なんでこんな事に?・・・いつまで、息を潜めていれば良いんだ?」

ハシル蔵は、校庭に出て、駐輪場に駐まっている自分のバイクを見つめる。義兄のウル彦が仕上げてくれた自慢の愛車(盗品)が、走れなくなって、まるで≪マタ一緒ニ走リタイ・・・・走リタイ≫と泣いているように感じる。

「走らせてやれなくてゴメンなドリームCB750FOUR。俺だって、オマエと一緒に走りたいよ。」

また、愛車で存分に暴走したい。信号無視とかしたい。車輌乗り入れ禁止の大型ショッピングモールの中を突っ走りたい。バイクでショーウインドーに突っ込みたい。警察に見付かってカーチェイスとかしたい。パトカーを見付けて、火炎瓶とか発煙筒を投げたい。鉄パイプを持って一般車と並走して、屋根をボッコボコにブッ叩きたい。愛車を駆って≪刃禍魔琉堕死≫をしていた頃は楽しかった。

 走りたい・・・走りたい・・・走りたい・・・走りたい・・・走りたい・・・走りたい・・・
 走りたい・・・走りたい・・・走りたい・・・走りたい・・・走りたい・・・走りたい・・・
 走りたい・・・走りたい・・・走りたい・・・何もかもを踏み潰して、我が道を突っ走り続けたい!!

「GOOD!・・・オマエ、随分と美味そうな闇を背負っているな!! その闇、使わせてもらう!!」
「・・・え?」

それまで、誰も居なかったはずの場所に、強面で体格の良い、赤い革ジャンを着た男が立っている。その手には、直系15センチ程度の水晶玉が握られており、水晶玉の中は、黒いモヤで濁っていた。

「フッフッフ・・・この黒いモヤは、オマエの背負っている闇
 ・・・その闇をもっと開放しろ!そしてこの水晶玉に食わせろ!!」
「・・・なんだ、テメェ!?」
「フッフッフ・・・俺は炎の災厄をもたらす者・・・アカデンジャー!
 さぁ、その願望を、もっと強く望め!抑圧された走りたい衝動を開放しろ!!」

アカデンジャーが水晶玉を近付けると、それに呼応するようにしてハシル蔵の全身から黒い霧が立ち上がり、水晶玉に吸収されていく!!

「あぁ・・・ぁぁぁ・・・・・これは?」
「フッフッフッフッフ!いいぞいいぞ、美味い闇は、強いデザスタを育てる!!」

闇に染まった水晶玉は、アカデンジャーの手から離れ、今度は水晶玉内から闇が吹き出し、愛車・ドリームCB750FOURを闇で包んで融合して、次第に生物の形を作っていく!!それはやがて、首の部分に火の形をしたタイヤを装着した白い狐へと変化をした!まぁ、ぶっちゃけ、愉快な仲間達・第16話でゲンジ達に倒されたのと同じ奴である。こっちの世界では倒されてないので、出てきちゃった。

「う・・・うわぁぁっっっっっっっ!!!!」



-渡帝辺工業高校・女子寮-

真司は相変わらず手足を繋がれて、ベッドに拘束されている。渡帝辺工高の校庭でモンスターが出現したんだけど、全く動けないので、戦いには行けそうにない。・・・てか、校庭と女子寮は離れているので、モンスターの出現に気付いていないようだ。



-アトミック研究所近くの道路-

燕真は散歩をやめて、アトミック研究所に向かって歩いていた。あの後、何人かの女の子に声を掛けられたが、何故か、燕真がOKをした瞬間に、どいつもこいつも、突然、死んでしまった。逆ナン無理。燕真は帰ってふて寝をする事にした。
渡帝辺工高の校庭でモンスターが出現したんだけど、燕真は、そ~ゆ~のは一切感知できない。



-渡帝辺工業高校・校庭-

赤馬は、テントの中で、就寝した直後だった。直ぐ近くでタイヤデザスタが暴れているんだけど、夢うつつの赤馬は「こんな平和な学校で事件なんて起こらない」「仲間達が騒いでいるだけ」としか考えなかったので、「うるさいな~」と思いながら、深い眠りに落ちていった。



-渡帝辺峠の途中-

「ふぬぅ?なんだ、このまがまがしいオーラは?」

渡帝辺工業高校に向かって歩いていた伊達昌平が、モンスターの気配を感じ取って立ち止まり、進行方向を見つめる。目的地に何かおぞましい物が発生している。亡き妻が言っていた「何かが起こりそう」ってのは、この事なのだろうか?確認の為に携帯電話を取り出して、亡き妻に電話をしてみる。

「なぁ、遥?なんかが出現したっぽいが、ソイツを倒せば良いのか?」
〈任務中は、私のことは、シャア神、もしくは、赤髪の彗星って呼んでって言ったでしょ?〉
「あぁ・・・そうだっけ?
 ・・・で、出現したっぽいのを討伐すりゃ良いのか?」
〈なんかいるの?よくわかんない。とりあえず、行ってみて。
 行けば、きっとなんか色んな事ががあって、それをクリアすれば良いんだよ!〉
「あ・・あぁ・・・うん。解った。行ってみる。」
〈女の子達とエッチするのは構わないけど、避妊だけはちゃんとしてね、しょうちゃん〉
「・・・了解」

相変わらず大雑把な指示である。それなりの良妻なんだろうけど、上司としては全く頼りにならんな。でも、まぁ、「行け」ってんだから行くしかない。昌平は、再び、渡帝辺工業高校に向かって歩き出すのだった。
 
 

ゾルダⅡ世・素敵な仲間達編8

 投稿者:仮面歩行者  投稿日:2018年 8月 1日(水)08時02分35秒
返信・引用
  聖飛会長・・てか、番長の久遠静花は、『飛び出せ青春!!センズリ王者決定戦!!』の優勝賞金を得る自信があった。最近入荷した城戸真司って男、あれは化け物だ。栄養ドリンク漬けにしてやれば、すぐに勃つ。ヤツが、今までどんなSEX道を歩んできたのかは解らないが、ヤツのチンポは相当鍛えられているようだ。ヤツを下僕にして、『センズリ王者決定戦!!』にエントリーすれば、必ず勝てるだろう。

そうと決まれば行動あるのみ。久遠静花は、試しに1発飛ばしてみて、手応えを確かめてみたいと考え、聖飛会が解散すると同時に、早速、【見てくれ!!俺の愛車大自慢!!】にエントリーする予定の改造アメ車で、下僕が監禁されている部屋に向かった。
余談だが、欲を言えば、‘ド底辺祭’など関係なく、毎日、干物にしてやりたいが、‘ド底辺祭’を盛り上げ、『センズリ王者決定戦!!』で勝つ為には、3日間くらいは断淫をして、城戸真司の精子を溜めた方が良いのだろうな。



-渡帝辺工業高校・女子寮-

渡帝辺工業高校から渡帝辺峠を国道側に下りた所に、廃ラブホテルを不法占拠した女子寮がある。その一室に、ベッドで大の字に手足を拘束された、干物で全裸の真司がいる。最後に交わったのは深夜の2時で、既に半日以上が経過している。部下達には「しばらくは自分専属にするので、許可無く交わるな」「連続交尾で、自分が果てた時だけ、交わっても良い」と命令してあるし、食事係の日野芳華が滋養のつく食料を与えてるハズだから、精子的にはそれなりに回復しているだろう。

「よぉ、真司!元気にしてたかい!?・・・嵐を~起こしてぇ、すべてを~壊すのォ♪」
「げっ!もう来たっ!!どっか他に、寄り道とかしないのかよ!?
 毎日毎日に、放課後と同時にここに来て、朝まで居座るなんて、どんだけ暇なんだ!?・・・真司だ。」
「フン!こんな山奥の学校で、平日にできるお楽しみなんて、捕虜の干物化以外に無いさ。
 休日ってなら、街に狩りに出掛けるがね。・・・嵐を~起こしてぇ、すべてを~壊すのォ♪」
「だったら、勉強とか部活とか・・・もっと他に・・・おふぅぅん・・・真司だ。」

静花は真司が拘束されたベッドに腰を下ろすなり、真司への断りなど一切無く、真司のチンポをムンズと掴んで、激しく擦り始めた。悲しいかな、真司の理性は拒否をしていても、静花はヤンキーなりにかなり可愛いし、しごく手つきも達者なので、真司のチンポはムクムクと肥大&硬質化してしまう。
静花的には、ホントは、真司に跨がって激しく動きたいのだが、『センズリ王者決定戦!!』で優勝する手応えが欲しいので、一射目は手こきで我慢する。『熱々潮吹きクイーン決定戦!!』が「鍛えた指技だけでの勝負」なんだから、『センズリ王者決定戦!!』だって、「素手のみの勝負」だろうし、もし、合体による刺激OKだとしても、発射タイミングを誤って体内射精をしてしまったら、記録無しになってしまう。

しこしこしこしこしこしこしこしこっ!
一心不乱に、真司のチンポをしごく静花!

「おふぅぅん・・・ぁあぁんっっ・・・真司だ。」

しこしこしこしこしこしこしこしこっ!
手足を四方に拘束されたまま、身をよじらせて悶える真司!強すぎず、だからといって弱すぎず、静花は、丁度良い握り具合で、しかも、良い感じに加速で、真司への刺激を続ける!やがて!!

「おふぅぅん・・・ぁあぁんっっ・・・ぁぁああああああああっっっっっ!!・・あふぅん・・・真司だ。」

しこしこしこしこっ・・・・・・・・・・ぴゅっ・・・・とろ~~~~ん

「なにぃっ!?・・・嵐を~起こしてぇ、すべてを~壊すのォ♪」
「あふぅぅぅん・・・ふぅ~~~~~。・・・真司だ。」

静花は、目を見開いて驚いた。それなりの飛距離を期待していたはずの真司の一射目は、そんなに飛ぶこと無く、チンポの先っぽから溢れ出して、滴りながら静花の手にこぼれ落ちる。
有り得ない。そりゃ、まぁ確かに、精子が満タンの状態ではないだろうけど、半日も休ませて、滋養を与えたのに、これほど飛ばないなんて、考えられない。静花は、自身の手に絡み付いた真司の体液を舐めてみる。薄味だ。続けて、真司のチンポを口に含み、残った体液を吸ってみる。薄味だ。
まるで、数時間前・・・いや、数十分前まで、誰かと交わっていて、3発以上放出して、その後、無理矢理搾り出した4発目以降のような薄味である。

「真司・・・さっきまで、此処に誰かいたのかい?
 あんた、誰と交わっていたんだい?・・・嵐を~起こしてぇ、すべてを~壊すのォ♪」
「あふぅふぅ~~ん・・・誰とも交わってませ~ん・・・これが俺の限界ですぅ~・・・真司だ。」
「ちぃぃぃ!・・・嵐を~起こしてぇ、すべてを~壊すのォ♪」

真司は呆けた表情で否定をしたが、到底、信じられない。先日、山で捕獲した直後に交わった「最初の1発」は、体内で暴れ回るほどの、激しい勢いを感じた。2発目、3発目も、それなりの手応えがあった。城戸真司は、「イケメンだけど1~2発で打ち止めになる弱者」ではない。「イケメンで、アレもタフで使い込まれている、かなり強い超大物」なのだ!

「この程度のハズが無い。・・・嵐を~起こしてぇ、すべてを~壊すのォ♪」

静花は、派手に飛ばなかった理由を、いくつか考える。
エサ(久遠静花)が悪くて、真司が興奮しなかった。それは考えられない。全盛期の喜村卓矢(通称・きむたく)を落として、結婚をするほど魅力的な自分が、エサとして不足のワケがない。
実は、静花が思うほど、真司の射精力は高くない。それも考えられない。この男のチンポは、相当に使い込まれている。静花は、今まで、スポンサーの社長とか、プロデューサーとか、大物俳優とか、人気アイドルとか、行きずりのイケメンとか、あ○もとさん等々、多数の男と交わってきたが、これほど、使い込まれたチンポは、経験をしたことが無い。
※伊達と接触しちゃったら、価値観が変わるだろうけど、まだ静花は、筋肉野郎に会ったことはない。

では、何故、派手に飛ばなかった?
残る理由は、一つしか無い。静花が、ここに来る数分~数十分前に、誰かと交わっていたのだ。何度思案しても、この結論にしか至らない。つまり、部下の中に裏切り者がいる!

「チクショ~!一体誰が!?見付け次第、エンコ詰の刑だな!
 ・・・嵐を~起こしてぇ、すべてを~壊すのォ♪」

まるっきり、飼い犬に手を噛まれたような気分である。聖飛会幹部の集いが終わって直行したのに、先を越されたということは、裏切り者は、聖飛会幹部以外の誰か?それとも、聖飛会の集いが始まる前に、誰かが交わりに来て、その後、素知らぬ顔で聖飛会の集いに参加をしたのか?自由奔放な駕籠愛衣、静花にライバル心ムキ出しの酷升小百合(こくしょう)あたりは、全面的には信頼できない。誰が裏切っているのかは解らないが、ムカついて仕方がない。

その後、静花は、腹いせに十数回ほど真司に跨がって、真司をガッツリと干物にして、その場を立ち去るのであった。



-数十分後-

コンコンコンコン!
真司の監禁部屋のドアをノックする音がして、食事係の日野芳華が、心配そうな表情で顔を出した。

「城戸さん・・・無事ですか?」
「・・・あぁ、芳華ちゃん・・・真司だ。」
「スミマセンが、入っても良いですか?」
「あぁ、どうぞどうぞ、いつもありがとう。・・・真司だ。」

芳華は、食事を乗せたトレイを持ったまま部屋に入ってきて、手前のテーブルにトレイを置き、真司が拘束されたベッドに腰をかける。初対面の時は、真司の丸出しのチンポを見て慌てたか、今は、少し慣れてきたらしく、動揺することも無い。ただし、恥じらいが無いわけではなく、「ごめんなさい」と一言断ってから、真司の下半身にバスタオルをかけてくれる。

今回の食事は、ひつまぶし、豚肉のニンニク炒め、卵黄入りの納豆。滋養強壮を意識しつつ、それなりにバランスの良い食事である。

「ねぇ、芳華ちゃん。献立はいつも、誰が考えてるんだ?・・・真司だ。」
「申し訳ありませんが、私です。
 スタミナが付く食事って条件以外はフリーなので、
 私なりに、真司さんが食べられそうな物を考えているのですが、
 ごめんなさい、もしかして、苦手な食材とかありましたか?」
「いや、無い無い。いつも美味しくて、嬉しいんだ。
 以前、時の狭間の電車に監禁された時なんて、栄養ドリンクや、
 滋養はつくけど死ぬほど不味い謎の汁(アマゾン汁)ばかり飲まされていたからね。
 拘束されたままってのは辛いけど、その時に比べると、かなりの好待遇だよ。
 君のおかげだね、ありがとう。・・・真司だ。」
「そ、そんなっ!わ、私はただ、任務ばかりに盲目的になるのではなく、
 真司さんに少しでも喜んで欲しくて・・・。」
「はははっ!俺はそれが嬉しいのさ・・・真司だ。」

毎食のことだが、真司は拘束をされていて自由が利かない為、芳華が「ふぅ~ふぅ~」と吐息で飯を冷ましつつ、「はい、あ~んして」と言いながら食べさせてくれる。
あ~・・・良い。なんか、芳華ちゃん、スゴく良い。こんな好い娘、リレー内では、今まで会ったことが無い。
可愛くて、お淑やかで、常識的で、恥じらいがあって、低姿勢で、乳は平らではなくて、恋敵を憎むことも出来ないほど穏やかな性格で、優しい気遣いができる。

しかも、「拘束されたままでは風呂には入れず不衛生です」「静花さん達、ナメナメしたいんでしょ?だったら、真司さんも、清潔にしてもらわなきゃですよ」と、芳華は、真司に少しでも不自由をさせたくない一心で、勇気を持って上層部に直訴したら、「真司が手錠をする」って条件付きで、「毎日3回、浴室で真司を洗浄する」係も、芳華が任されることになった。

「え゙!?私が真司さんを洗うんですか!?」

まさか、そんな破廉恥な係を任されるとは思っていなかったので、最初はかなり戸惑った。殿方の体を洗うなんて行為は、惚れている赤馬にすらやった事が無い。芳華は、顔を真っ赤にして、渡帝辺ジャージを着たままで、何度も「ごめんなさい」と謝罪しながら、真司の背中や髪の毛を洗ったが、流石にチンポや尻を洗うことはできなかった。チンポだけは、真司自身が、手錠をされた不自由な手で洗った・・・が、やがては、見かねた芳華が、恥ずかしそうな表情を浮かべながら洗ってくれるようになった。

もちろん勃った。しかもギンギンに。そんで、芳華にとっては、男性のチンポは「未知の物体」ではなく、刺激をすれば大きくなるってのは知っていたので、以前のように「城戸さんのヘンタイ!!」と批難することはできない。

ずっこんばっこんずっこんばっこんずっこんばっこんずっこんばっこんっ!!!
「うぉぉぉぉぉぉっっっっっっ!!!・・・真司だ。」
「あんぁんあんぁんあんぁんぁあぁんっっ!!!ダメダメダメダメ、ぃくぃくぃくぃくっ!!
 もっと、激しくっ!しんじさぁん、すてきぃぃぃ~~~~~~~~~~~~~~~っっ!!」
「うぐぅぅぅぅっっっっっっっ!!!・・・真司だ。」
どぴゅっっっっっ!!!

まぁ、そんなわけで、監禁室の浴室からは、芳華の激しい喘ぎ声が聞こえてくるようになった。スケベイスに座った真司が、跨がった芳華を、激しく上下に動かす。浴槽で合体したり、床に押し倒して合体したり、壁ドンして合体したり、色んな体勢で楽しんだ。手錠は邪魔だが、手足をベッドに拘束されてるのに比べれば、はるかにマシである。
ご飯を「ふぅ~ふぅ~、あ~ん」の時点で、なんとな~く‘時間の問題’的なところはあったけど、体を洗ってあげるって行為まで行っちゃうと、もはや決定的である。こうならない方が不思議だろう。
芳華が真司のチンポを洗うって辺りから、捕虜のハズの真司の方が「お礼に俺も芳華ちゃんを洗ってあげるよ」って感じに、言葉巧みにリードをするようになり、芳華は「ジャージが洗い水で濡れちゃうので不便ですね」と言い訳をしつつ、裸で真司を洗ってくれるようになり、チュ~をしたり、真司が手錠をされたまま芳華の乳を弄ったり、大事な場所を刺激するようになり、芳華は芳華で、「真司さんの大事な場所を綺麗に洗わなきゃ」と言い訳をしながら、チンポばかり重点的に洗うようになり、真司が「ちゃんと綺麗になったか舐めて確かめてみて」と芳華にフェラを頼むようになり、真司と芳華は浴室の中で乱れまくった。1日に3回のお風呂タイムの度に、最低でも2回、調子が良ければ5回は交わった。そんでその後は、何事も無かったかのように、綺麗になった真司を所定のベッドに拘束して、芳華は退室をする。

芳華は、赤馬に好意を持っているが、それとこれとは別の話である。任務遂行と、真司救済の為、芳華は、獣になったかのように、黄色い悲鳴を上げながら、腰を振りまくるのだった。・・・てゆ~か、なんかもう、態度が曖昧な赤馬より、優しく気遣ってくれる真司の方が、好きになっちゃってるかもしれない。

まぁ、そんなわけで、久遠静花が言った「裏切り者は誰だ?」の犯人は日野芳華なのであった。



-アトミック研究所・第一研究室-

服を着たまま机に仰向けになった萌に、上着は着たまま下半身だけ裸になった桃次郎が覆い被さっている。激しく上下に腰を振る桃次郎。その動きに呼応するようにして、服の上からでも解るくらい豊満な萌の乳がタプタプと揺れる。

「ぁんぁんぁんぁん・・・桃さん、すごいっ!!!萌えるっ!萌えるっ!もっともっと!!」

数日前、桃次郎は、萌に「気持ちの整理をして、義兄に気持ちを伝えろ」とアドバイスしたが、萌は気持ちを伝える勇気を持てずにいた。そんで、見かねた桃次郎が、「萌ちゃんは、もう少し恥じらいを捨てろ」「俺が捨てさせてやる」と、萌の閉ざされた心をこじ開けるように、強引に内面に踏み込んで、ついでに、萌の体をこじ開けるように、男らしく体内にも踏み込んじゃった。
その後は、廊下で偶然会って、桃が積極的にスキンシップをしつつ、便所に同伴して性交。桃が萌の研究室に遊びに行って、積極的にスキンシップをしつつ、控え室に同伴して性交。萌の入浴中に「一日中研究をして疲れただろ?マッサージをしてやる」と言って桃が入室してきて、マッサージをしつつ性交。

経験不足な萌は、懸命に桃に従いながら、徐々に‘桃’色に染まっていった。テクニック的には、桃が入り浸っているフーゾク嬢とは、比較にならないほど下手くそだが、その下手くそっぷりが、フーゾクとは別のコーフンを呼び起こす。

一方の萌は、桃次郎のリードで、雌の悦びを身に妬きつつも、リケジョのプライドが有る故に、性には溺れることは無かった。桃次郎と交わる度に、桃次郎が放出した精子をサンプルとして保管する。萌は、桃次郎の精子から桃次郎のクローンを作って、仮面ライダー焔を援護する為の、量産型桃次郎軍団を組織するつもりなのだ。全ては、愛する義兄を助ける為に。・・・てゆ~か、なんかもう、いい加減な義兄より、男らしくリードしてくれる桃次郎の方が、好きになっちゃってるかもしれない。焔を助ける為の量産型桃次郎軍団を作るつもりはあるけど、それよりも先に、自分専用のクローン桃次郎を作りたいって気持ちがある。

ただまぁ、それはそれとして、先日、散歩に出た時に、事件の捜査の為に渡帝辺地区に来て、珍走集団≪苦礎矢狼(くそやろう)≫に襲われて瀕死になった‘北條透’とかって名前の警察官を拾ってきて、プロトタイプスーパー1に緊急改造をして一命は取り留めたんだけど、「さて、これから脳改造をしよう」と思った直後に、桃次郎に性交をせがまれて、「あんあん」と喘いでいる間に、逃げられてしまったようだ。まぁ、反旗を翻すような生意気なことをしたら、動力の「小型核融合炉」にセットした「小型核爆弾」を起動させて、自爆させれば良いだろう。



-アトミック研究所・文架支所・宿舎-

秀一郎が目を輝かせながらテレビアニメを見ていて、燕真は、ボケッとした表情で、秀一郎に付き合って、全く興味の無いテレビを見ている。なんか、何から何まで不満だらけだ。桃次郎が恋に夢中で、この地域から動く気が無いので、まるっきり足止めをされている。真司は日野芳華と、桃次郎は梶萌と、スッカリ良い仲になっちまっている。ぶっちゃけ、芳華も萌も‘当たり’である。だが自分はどうだ?愉しめる事が何も無い。大人の体格の3歳児と一緒にアニメを見ているだけ。自分にも、少しくらいは、恋愛フラグが発生しないのだろうか?

「・・・暇だ。少し、散歩でもしてくるかな。」

燕真は、アトミック研究所の敷地外に出て、アテも無くプラプラと散歩をする。研究所に繋がる坂道を下りていけば、渡帝辺工業高校があるわけだ。校舎近くを彷徨いちゃうと、ド底辺な男子生徒達や、対立する女子生徒達に絡まれちゃうのだろうか?ド底辺圏内を散歩するのは、少々危険か気がする。・・・が、燕真的には、あまりにも暇すぎて、「たまにはトラブルに巻き込まれたい」と、チョットだけ期待をしている。・・・てか、真司みたく、女子生徒に拉致されて、干物にされつつ、女子生徒の誰かと恋に落ちたいと、淡い期待をしている。イケメン度ならば、真司と比べて遜色は無い。女子生徒に発見されれば、間違いなく拉致されるだろう。

「そこのイケメンのお兄さん、何処に行くの?」
「暇だったら、私達と遊んでよ!」
「遊ぶ?こんな山の中で、なにして遊ぶんだ?」

そうら来た。イケメンというエサに獲物がかかったようだ。
燕真の進行方向で、某アイドルグループの、名前は解らないけど誰かに似ているって感じの、可愛らしい女子2人が、通せんぼをするように立ちはだかった。
なるほど、問答無用で拉致をするわけじゃ無くて、甘い言葉で誘いをかけて、誘われるがままに密室に招き入れられて、その後は、激しく干物にされるってパターンか?干物にされるのはイヤだけど、あえて誘いに乗ってみるか。

「素敵なところに連れて行ってあげるから、一緒に来てよ!」
「素敵なところ?一体何処へ?」
「ヒミツヒミツ!気持ち良くて楽しい思いをさせてあげるから、おいでよ!」
「ふっ!・・・よく解らないけど、暇だから、ついて行ってみようかな!」

素敵なところ=監禁室、気持ち良くて楽しい思い=激しい性交、予想はできるけど、あえて、解らないフリをしつつ、クールなイケメンの表情を崩さずに、女の子達に付いていく事にした。・・・が!!

「うぐぅぅぅっっっっ!!!」
「ぐわぁぁっっっっっ!!!」
「・・・・へ?」

燕真が女の子達の誘いに乗ろうとした瞬間、女の子達は、突然、顔色を真っ青にして、悶え苦しみだして、崩れ落ちるようにして倒れ、そのまま動かなくなった・・・てか、ぶっちゃけ、死んだ。
まるで、新世界の神に、黒い死神のノートに名前を書かれた悪い人達のように、何の前触れも無く、いきなり死んでしまった。

「おいおいおいおい・・・なんで死んだ?なにが、どうなってるんだ?」

燕真は状況が飲み込めずに、突っ立ったまま呆然とするのみ。まるで、何かに呪われてるかのようだ。こうして、燕真の「出会いを求めて拉致される」作戦は、失敗に終わるのだった。トラブルが欲しくて彷徨いたのは事実だが、欲しかったトラブルは、こ~ゆ~のじゃない。



-数秒前・愉快な仲間達の世界-

亜美&美穂&バルたんと、ライブの練習中の紅葉が、突然、演奏をやめて、鞄からノートを出して、チョイチョイと何かを書き込んで、ノートを閉じて、「ふぅ」と溜息をついた。バルたんに「どうしたばるっ?」と聞かれて、紅葉は徐に口を開く。

「燕真ゎ誰にも渡さなぃもんっ!ァタシがあっちに戻るまで、女の子と仲良くするの禁止!
 ァタシの知らなぃ女の子と仲良くするのも禁止!」
「・・・えんまって誰ばるっ?」
「そんな人、この世界に居たっけ?・・・亜美で~す」
「紅葉の妄想の恋人ばるっ?」
「燕真ゎ燕真だもんっ!!」

紅葉が持っている漆黒のノートの表紙には‘デスノート’ってタイトルが書いてある。紅葉は半妖だ。美穂や亜美とは違って、ゾルダ2世の世界に、シッカリと怨念を残したうえで、愉快な仲間達の世界に来ている。紅葉の身はゾルダ2世の世界に無くても、紅葉の意思はゾルダ2世の世界の残っている・・・てか燕真に取り憑いているのだ!

ちなみに、美穂は美穂で、その日は、終始、殺気に満ちた表情で、苛立ち、「あんにゃろう、ついに自分の意思でやりやがった」「芳華斬首決定」と何度も呟きながら、八つ当たりをするようにドラムを叩いており、練習には全く身が入っていなかった。
 

ゾルダⅡ世・素敵な仲間達編7

 投稿者:ゾルダⅢ世  投稿日:2018年 7月24日(火)18時43分5秒
返信・引用
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ゾルダⅢ世は、パソコンのモニターを眺めながら思ってた・・・「たまには下ネタ・ブラックジョークどんとこいな、純粋ギャグな話を書きたい」と。
そして、ある1点に改めて目を向けて「ニヤリ」と微笑んだ。「『素敵な仲間達』の世界って、『愉快な仲間達』と妙なとこでリンクしてる」ってとこに。









―渡帝辺工業高校・聖飛会室―

今さらだが、現在『愉快な仲間達』の世界は10月で、目下≪優麗祭≫に向けて盛り上がってる。だから『素敵な仲間達』も10月って事に決めた。
10月が学園祭シーズンなのは、渡帝辺工業高校も例外ではない。で、名前に恥じぬド底辺な学園祭の企画や運営をしてるのは、何を隠そう聖飛会である。
元はと言えば、全校生徒の1~2割しか存在しない女子達が自衛の為に結成して、名ばかりの生徒会を乗っ取った組織。だが由来どうあれ、生徒会に替わる聖飛会である。
粛清やイケメンの拉致・干物化だけが仕事じゃないのだ。ちなみに開催日は2週間後の日曜日って事にしとくけど、その日が訪れるのが何時になるかは不明だ。3つくらい
先の投稿で始まって盛り上がってるか、来年の今頃に「話の中じゃ会議のシーンから2週間後だ」と言い張って開催されるか・・・そもそも、企画倒れで終わるかも知れん。

「じゃ、始めようか・・・嵐を~起こしてぇ、すべてを~壊すのォ♪」
「う~っす」×いっぱい

聖飛会室に並べられたフカフカと座り心地良さそうなソファーに、聖飛会メンバーが身を預ける。床にペルシャ絨毯が敷かれて、天井には巨大なシャンデリア。
壁にはレプリカとは言え名の知れた画家の作品。荒れに荒れてる校舎だけれど、どのグループも聖飛会室にだけは手を出さない。そんな命知らずは、遅くとも翌日には
『一身上の都合により退学』してしまって、それっきり姿を見かける事が無くなるからだ・・・上座にドンと鎮座してる聖飛会長・久遠静花の一声で、【ド底辺祭】の
企画会議が開始された。皆てんでに、洒落た箱に収まって舌を噛みそうな名前のメンソールタバコを取り出す。そしてテーブルに並んでる飲み物は、カルピスサワーや
カルーアミルクやソルティードッグetcタバコも飲み物も、実に年頃の娘らしいチョイスだ。

「・・・・・・・・・」
「・・・失礼します」

久遠静花が無言でタバコを咥えたら、後ろに控えてた上半身裸でスラックスに革靴って格好のイケメンが、ススっと寄って火を点けた。他の聖飛会メンバーの背後にも、
2~3人に1人ずつの割合で同じ格好のイケメンが直立不動の姿勢で控えていて、タバコに火を点けたりカクテルが無くなると代わりを訊いて作って運んだりしていた。
聖飛会の身の回りやシモの世話をする為に掻き集められた選りすぐりのイケメン達で、グループ名は【慧愚漸威琉】と言う・・・今回は会議なんでボーイみたいな事を
してるけど、要請次第では自慢のダンステクニックで男性ストリップを披露したり、乱交パーティーの相手になったりする。

「看板は、仕上がってるかい?・・・嵐を~起こしてぇ、すべてを~壊すのォ♪」
「出来てますよぉ・・・人生は紙飛行機~♪」

メンバーの1人が指さした先には、板切れにスプレーで『ド底辺祭』と書かれた看板が転がってた。書き間違いで『祭』が『怒』になっちゃってたりするけど、そんな
細かい事は誰も気にしない。まず看板の問題はOK・・・次に校舎のの飾り付けについてだが、元から落書きだらけだったり、あちこち血飛沫で真っ赤だったりなんで
飾りようが無い。せいぜい窓ガラスの補修に、ガムテープでなく赤や青のビニールテープを使うくらいだ。

「看板と飾り付けはOKだね。そしたら、聖飛会が直々に仕切る企画から煮詰めようか。
 特に盛り上がる2つ・・・【見てくれ!!俺の愛車大自慢!!】と【真の漢を決めろ!!タイマン秋の陣!!】なんだけど、
 もっと良くなりそうなアイデアあったら、バンバン言ってね・・・嵐を~起こしてぇ、すべてを~壊すのォ♪」

久遠静花の隣に座ってた書記が黒ペンを出して立ち上がり、壊れて傾いたまんまのホワイトボードに、出された意見を書いていく・・・
いきなり【見てくれ!!俺の愛車大自慢!!】だの【真の漢を決めろ!!タイマン秋の陣!!】だの言われたってワケ解んないだろうから、概要をササっと説明しよう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

聖飛会主催のイベントの中でも特に規模と人気が高い、ド底辺祭の2大名物イベントである。

◎見てくれ!!俺の愛車大自慢!!◎
・自慢の愛車を御披露目し、人気投票を行うイベントである。
・2輪部門と4輪部門がある。
・見てくれのセンスは言うまでもなく、排気音も重要な審査対象だ。
・それぞれの優勝者には、賞金と『渡帝辺で1番イケてるマシンのオーナー』と言う名誉が与えられる。

◎真の漢を決めろ!!タイマン秋の陣!!◎
・逃げも隠れも出来ない金網リングで行われる、公開タイマン大会である。
・『凶器は厳禁』って以外は、ルール無用・ノーレフェリーの無制限1本勝負。
・どちらか、もしくは両者がKOするまで続けられる。死人や廃人が出るのも珍しくない。
・優勝者には、賞金と『渡帝辺最強』の称号が与えられる。

※言うまでもないだろうけど、結果を巡って賭けが行われる。胴元である聖飛会の、貴重な収入源の1つだ。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「細かく部門分けしたら、どうっすか?バイクは【原チャ】と【中型以上】と【チョッパー】で、
 クルマは【軽】【普通】【ミニバン】【アメ車】の4つにしてみたら?・・・モーニングコーヒー飲もうよ2人で♪」
「おおっ、いいなそれ!そうしよう!・・・嵐を~起こしてぇ、すべてを~壊すのォ♪」
「さんせい~っ!!」×いっぱい

満場一致で決定し、次の意見が出される。

「ここ数年、似たり寄ったりな奴が増えた気ぃするんですけど・・・人生は紙飛行機~♪」
「それ言えてるね・・・モーニングコーヒー飲もうよ2人で♪」
「でも、どうするんだい?・・・バ~ナ~ナ~のな~みだ♪」
「投票で最下位だったバイクとクルマは、最後の打ち上げでガソリンかけて燃やしちゃいましょう。
 自信ある奴しか出なくなって、レベル上がると思うんですけど・・・人生は紙飛行機~♪」
「そりゃ面白いっ!採用だっ!・・・嵐を~起こしてぇ、すべてを~壊すのォ♪」

【見てくれ!!俺の愛車大自慢!!】に関する話が終わり、次は【真の漢を決めろ!!タイマン秋の陣!!】の協議になった。

「入場料は、リングサイド¥30000・A席¥20000・B席¥10000で良いっすね」
「それくらいが妥当ね・・・バ~ナ~ナ~のな~みだ♪」
「チケットの転売は、エンコ詰めでしたよね」
「聖飛会の収入源だからね。舐めた真似する奴には、見せしめしないとね・・・バレンタインデーキッス♪」
「賭け金は、1口¥1000からでOK?・・・セーラー服を脱がさないで~♪」
「賞金に使うカネの財源は大丈夫?・・・バ~ナ~ナ~のな~みだ♪」
「校長と教頭と各学年主任の5人にハニートラップかけて、それネタに強請ってます・・・人生は紙飛行機~♪」
「2年のハゲは大丈夫か?アイツ金なさそうじゃね?・・・バレンタインデーキッス♪」
「生命保険に加入させました・・・人生は紙飛行機~♪」
「へぇ~、やったな!GJじゃん!・・・嵐を~起こしてぇ、すべてを~壊すのォ♪」
「毎回、金網にしがみついて露骨な時間稼ぎする選手が居て、試合が停滞する事があります。
 一定時間しがみついてたら、電流を流す仕掛けを作ったらどうでしょう?」

様々なアイデアが出されて、ホワイトボードが埋まって行く。久遠静花は腕組みして聴きながら「今年の聖飛会は、なかなかレベル高いメンツが揃ったな」と、
満足そうな笑みを見せるのだった・・・聖飛会主催イベントの議題が終わり、次は各クラスや体育館での出し物について話し合う。皆それなり真剣な表情して、
配られたプリントに目を通した。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

◎各クラス出し物一覧◎

1A:お好み焼き屋
1B:蕎麦屋
1C:
1D:映画やテレビは教えてくれない!!現役組員の実戦的な撃ち合い教室!!

2A:
2B:焼きそば屋
2C:必ず吐かせる拷問&絶対に発見されない死体処理の講習会
2D:太陽がくれた季節!!熱々潮吹きクイーン決定戦!!

3A:ビバ自然!!屋上ビアガーデン!!
3B:キミも今日からウシジマくん!!闇金経営講座!!
3C:
3D:東大法学部卒エリート組員の、サルでもわかる暴対法の抜け穴教室


◎体育館◎

・DJとバーテンやれる生徒を雇って、終日クラブとして使用する。
・入場料¥3000
・一旦料金を払ったら、出入りは自由とする。
・14:00~14:30は、渡帝辺銀蠅(軽音部)のライブを行う。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「1Cと2Aと3Cは、不参加かよ?上納金が減るじゃん」
「退学や粛清や抗争で人数が1/6に減っちゃったから、他のクラスに合併されましたよ」
「あ、そうだった」
「体育館は、軽音部のライブ以外ずっとクラブなんですか?文化祭で定番な、演劇とかコーラスとかは?」
「この学校に、演劇部やコーラス部なんかあると思う?」
「・・・それも、そうですね・・・」

プリントを眺めてた久遠静花は、またも満足そうに笑みを浮かべた。1Dと2Cと3Bと3Dの企画は、賞賛に値する。仮にも文化祭だから、楽しいだけじゃダメ。
為になったり、いずれ社会人になった時に役立つ知識を学べる出し物を提案するとは、バカ共なりに考えてるじゃないか。

「2Cが大層な企画だねえ。こんなんホントに出来んのかよ?」
「クラス委員のアニキを、特別講師に招くそうです」
「あの“死神”が特別講師を!?」
「だったら大丈夫だろうけど、ギャラどうすんの?そこまで予算ないよ?・・・バレンタインデーキッス♪」
「『他ならぬ弟の頼みだから』って、無料で引き受けてくれたそうですよ・・・人生は紙飛行機~♪」
「そりゃ有難いね」
「でも完全無料は、さすがに気が引けるわ。誠意を見せとかないと」
「お礼に華夜輝紗香(けやきざか)の選りすぐりで、接待しておいてよ・・・セーラ服を脱がさないで♪」
「了解でぇ~す」×いっぱい
「ところで、誰を拷問で始末するんだい?」
「最近のさばって、あたしのアニキがいる組のシマを荒らしてやがる、中国マフィアです。
 既に幹部5人を、拉致・監禁してるそうです・・・吠えない犬は、犬じゃないんだ♪」
「なるほど」
「中国人て、痛いとホントに『アイヤ~!』って言うんですかね?」
「ちょっと見てみたいわね」

そんな感じで“勉強系”な出し物に関する議論も進んだ。小休憩を挟んで、次は模擬店が議題。何やかんや言って「花より団子」だし、育ち盛りに食は大事である。
文化祭の模擬店だから、決して金儲けが目的ではない。『何気なく通ってる店を体験する事により、食べる事の有難さや社会の仕組みを学ぶ』のが第一目的なのだ。

「3Aが屋上の使用許可を求めてますけど、どうしますか?」
「ビアガーデンか。『ビバ自然』ってのは何だい?らしくないねえ・・・嵐を~起こしてぇ、すべてを~壊すのォ♪」
「あ、私のクラスだ・・・素っ裸でビール飲んで騒ぐビアガーデンだよ。早い話、ヌーディストパーティー」
「ナルホド、それなら納得だ・・・嵐を~起こしてぇ、すべてを~壊すのォ♪」
「ちなみに参加費用は・・・男子が¥35000で2時間飲み放題で、女子は無料の予定・・・人生は紙飛行機~♪」
「当然テイクアウトありだよな・・・バレンタインデーキッス♪」
「むしろ、テイクアウトが前提の企画だよ・・・人生は紙飛行機~♪」

ちょっと間違いがあったようだ。どうやら3年A組は、単なる食育でなく『出会いの場』を提供するのが目的らしい・・・あ、解ったぞ。出会いを提供して男女が
結ばれる事で、深刻な少子化問題に歯止めかけようとしてるんだな。なかなか偉いじゃないか。まあ普通の学校なら「ビアガーデンって時点でダメ」となるけれど、
そこは渡帝辺なんで問題にならんらしい。

「楽しそうだけど、女子の身の安全が心配だね・・・モーニングコーヒー飲もうよ2人で♪」
「レイプ防止の対策を徹底させなきゃだね・・・人生は紙飛行機~♪」
「どうするの?警備員でも立たせとくの?・・・モーニングコーヒー飲もうよ2人で♪」
「人手が足りなくね?」
「あと避妊もキチンとさせないと、保険医の先生が中絶手術で忙しくなるわね」
「水子供養にかかる経費も、バカにならないわ」
「どうしましょう、静花姐さん?」
「そうだなあ・・・そしたら、参加者には受付で誓約書にサインさせるって事で、開催を認めよう・・・嵐を~起こしてぇ、すべてを~壊すのォ♪」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

①女子の同意が無いエッチはエンコ詰め
②悪質と判断された場合は、公開チン切り+退学処分とする
③ゴムやピルで、ちゃんと避妊する事

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

久遠静花は以上の事を提案し、この約束を守るって条件で3Aのビアガーデンを許可した・・・また間違いがあったようだ。奴等は少子化問題の事など欠片ほども
考えてなかった。単にビール飲んでハイになってエッチしたいだけだったらしい。何はともあれ3Aの問題はクリアで、他の模擬店の話になった。

「1Bの蕎麦屋ってのは、焼きそばじゃなくて蕎麦?」
「あ、私のクラスですね。そうです、お蕎麦屋さんです」
「文化祭で蕎麦か。渋いと言うか、珍しいと言うか」
「『溜塵そば』の社長の息子のアイデアです」
「あ~、アイツのクラスか」
「イチオシは『大麻天そば』です。大麻の葉っぱを丸々1枚、天ぷらでトッピングします」
「ワイルドだな~」
「あたしのクラスのお好み焼きも、刻んで乾燥させた大麻を青のりの代わりに使う予定です」
「アタイのクラスの焼きそばもだよ~!考える事って、同じだねえ」
「葉っぱの調達、どうすんの?」
「そんなの、裏の林に生えてるよ。ここら辺って、厚生省の役人も近寄らないもん」
「マジすか!?知らなかったっす!!」
「つまり元手はタダか」
「何だよ、丸儲けじゃんよ」
「上手いところに、目を付けやがったな。聖飛会でやりたいくらいだ」

こんな感じで模擬店系な出し物に関する議論も終了・・・最後は2Dの『太陽がくれた季節!!熱々潮吹きクイーン決定戦!!』である。

「・・・・・だいたい想像つくね」
「2Dって確か、駕籠愛衣ちゃんのクラスだっけ?」
「そうだぴょんっ!」
「いちおう、どんなもんか教えてくれるかな・・・嵐を~起こしてぇ、すべてを~壊すのォ♪」
「特設ステージでオナニーして、たくさん潮吹きしたら勝ち!」
「やっぱりか」
「ちなみに玩具は御法度ぴょんっ!鍛えた指技だけでの勝負だぴょんっ!」
「毎年1クラスは、こんな企画するんだよな・・・モーニングコーヒー飲もうよ2人で♪」
「あんたも参加すんの?」
「もちろんぴょんっ!賞金の10万円は、あたしが頂くぴょんっ!」

聖飛会室が、軽く沈黙してしまった・・・3Aの全裸ビアガーデンと同じく、行う分には構わん。ただし、参加する女子の身の安全を確実に確保しなきゃならない。
意見を出し合った結果『ステージと客席の間に有刺鉄線を張り巡らす』『お触り厳禁。破ったらエンコ詰め』ってルールを設ける事で、久遠静花の許可が下りそうに
なった時・・・メンバーの1人が、挙手して発言を求めた。

「男子ばっかり目の保養してズルい。女子も楽しませて欲しいです・・・人生は紙飛行機~♪」
「なるほど、一理あるな・・・モーニングコーヒー飲もうよ2人で♪」
「女子も楽しめる企画にさせるぴょん?」
「そうですよぉ~・・・人生は紙飛行機~♪」
「う~ん・・・・・・閃いた!
 『飛び出せ青春!!センズリ王者決定戦!!』を、同時開催させよう・・・嵐を~起こしてぇ、すべてを~壊すのォ♪」
「名案ぴょんっ!」
「さすが静花姐さんだわ・・・人生は紙飛行機~♪」

とまあ・・・・こんな感じで史上最低な学園祭の企画が、次々と決められていくのであった。囚われの真司は、おそらく日野芳華を通じて知る事になるであろう。
なかなか血生臭くて、死人の5人や10人は出そうない学園祭だ。少なくとも、2年C組の企画で中国人マフィア5人が餌食になるのは確実である。
【真の漢を決めろ!!タイマン秋の陣!!】の規模が不明だけれど、おそらく多数の犠牲者が出るだろう。
果たして真司は、どう動く?テレビ本編での『戦いを止めたいキャラ』として「無益な戦いは止めるんだ!!」って、ド底辺祭に介入するのだろうか!?
 

紅葉と愉快な仲間達・バルたん編入作戦3章⑦

 投稿者:ゾルダⅢ世  投稿日:2018年 7月16日(月)11時09分18秒
返信・引用
  > No.962[元記事へ]

―2年A組―

(紅葉の勢いに乗せられてるのもあるけど)B組のハイテンションと反比例で、A組の生徒達は一定の興味を示しつつ割と冷静にニュースを見ていた。
麻由は自分の席でサンドイッチを時々思い出したように口へ運びながら、食い入るようにテレビ画面を見入ってる。表面上は落ち着いてるけど、心中は
穏やかでない。何故こうも簡単に、バルたんが受け入れられるのか?怒り・妬み・嘲りetc.様々な負の感情に心が支配されて、気を抜くとパニックに
陥りそうになる。だが必死で堪えて“何時もの自分”を演じてた。そんな麻由の心情など知るはずも無く、ニュースは相変わらずバルたん関連の報道を
続けてる。警察からの花束と感謝状の贈呈が終わって署長と澄子が引っ込み、今度は市長が前に出た。

≪科学特捜隊からの提案を緊急会議で協議しました結果、バルたんを文架市民とし、観光大使に任命する案が、
 可決されました。彼女には文架市の名所や名産品のPRを務めてもらい、地域の活性に云々かんぬん・・・・≫

文架市の役人や住民は、バカしか居ないのか?ってゆ~か政府や他国から反対意見が聞こえてこないけど、宇宙人の地球滞在をを認めてるのか?
って事は、世界中バカだらけなのか?市長の話は長々と続いたが、呆れ返っちゃって途中から耳に入ってない。壁を通して、B組から「わあ~っ!!」って
歓声と拍手が聴こえた。その中でも一段と響いてる独特のキンキン声が、気に障って仕方ない。あの声が届かない場所へ行きたい。大急ぎでサンドイッチを
食い終え、勢いよく席から立ち上がって教室を後にした。


―文架文化会館・大ホール―

この展開が面白くない者が、ここにも1人・・・桃井令子である。取材で躓きまくって、特ダネを掴み損ねてる間に知らない場所で話が進んで、バルたんは
晴れて文架市民。壇上に机と椅子が用意され、バルたんが転居届に必要事項を記入してる。やがて書き終えて対面の市長に渡し、市長が自ら印鑑を捺して、
文架市民となる手続きが完了。地球とバルタン星が友好条約を結ぶ、大きな1歩が踏み出された。

(一歩間違えれば、友好関係を築けたはずの知的生命体と星間戦争になる可能性があります・・・
 “少女”と遭遇した場合、冷静で的確な対応をして頂きたいと願っております)

先日の記者会見で、そう発言した。そして実際に願いが受け入れられた。それは良いんだけど、何だかモヤモヤする。この様子は生中継されてるから、
記事に纏めて発信したところで真新しさも何もない。『もっと“自力で掴んだ何か”が欲しい。これじゃ報道人ってより、単なる伝令係だ』・・・
生乾きの朱肉がテカテカしてる転入届を手に、市長と2ショットでフラッシュを浴びるバルたんを撮影しながら、令子はそんな事を思っていた。


―放課後―

思わぬニュースでハイテンションになったまま、午後の授業が始まった。誰とは言わぬが約1名、はしゃぎすぎて何度となく教師に注意されてしまう。
1分1秒が何時になく長く感じたが、ようやく本日の授業が終了。所属クラブで出し物やる生徒達は、そっちを優先して「じゃあね~」と教室を後にした。
当番が掃除を終えてから、スーパーあやかで貰って積んどいたダンボール箱を運び、床から天井までの高さとかを計ってから、客席と厨房の仕切りの製作を
開始した。細かい事は煮詰まったんで、あとは準備して当日を迎えるのみ。これと言って何係でもない奴等が、自主的に引き受けて作業してる。

「・・・・・・ヒマだぁ~」

紅葉が意味も無くウロチョロしてた。粉木に言われて三角巾で腕を吊ってるもんだから、作業に加わりたいけど無理。そうでなくても、何かと不自由してるし
元気が有り余ってるのだ。チャリも乗れないし、体育も見学だし、ここんとこ妖怪も出ない。ただでさえ高2にもなって『落ち着きを持って行動しましょう』
と成績表に書かれてる有様だってのに、そこへ来てバルたん関連のハッピーなニュースでテンション最高潮。だが際限なく溢れるパワーを発散できるところが
無いもんだから、元気が空回りしちゃってる・・・・・・

ズボッ・・・・つるっ・・・・すってんころりん
「ゎぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~っ!?!?」
「げっ!?」
「マジかよ!?」

解体してガムテープで張り合わせたダンボールに塗ろうと思ってたペンキに、足を突っ込んで壮絶にスッ転んでやがんの。尻モチついて「ぃてぇ~!!」と
叫び、ペンキまみれになった片足を眺めてキョトンと首を傾げ、事態を把握してからパニックに陥って立ち上がって、ギャアギャア喚きながら無駄に歩き回った。
蹴っ飛ばされて宙を舞ったペンキを浴びた奴が居なかったのが不幸中の幸いだけど、床が足跡だらけになってしまう。

「ゎぁぁ~~~~っ!!どぅしょぅっ!?どぅしょぅっ!?」
「歩くなあ~っ!!」
「ぁ、そぅかっ!」
「洗ってくるから、とりあえず脱ぎなよ」
「ごめん」

亜美の肩を借りてケンケンで最寄りの椅子へ行って座り、スニーカーと靴下を脱いだ。クラスメート達は、雑巾で足跡を拭いたりペンキ缶を片づけたりする。
水性ペンキで助かった。乾く前なら水洗いや濡れ雑巾で何とかなる。とは言っても、乾いたらシンナー要るから時間との勝負。亜美は「全くもう」とブツクサ
言いながら、スニーカーと靴下を持って水道へ急ぐのだった。

「・・・ぅぇぇぇ~、気持ち悪ぃ・・・」
「ホラ紅葉ちゃん、足拭いて」
「ぁりがとぅ」

渡された雑巾でペンキまみれの足を拭いてたら、騒ぎを聞きつけた美穂がC組から出張して来た。教室を覗いてワタワタしてる紅葉を眺め、「しょうがねえな」と
言いたげな顔でコメカミに汗して笑いながら入ってきて、紅葉の肩をポンと叩く。

「亜美から聞いたぞドジ」
「・・・不覚」
「気持ちは解るけど、落ち着けよな」
「・・・ぅん」
「スニーカーと靴下、取って来てやるよ。玄関の鍵貸して」
「・・・・ぁりがと」
「それと正面玄関のロック、どうやって解除すんの?」
「ぇ~とね、部屋番号ぉ入力してから・・・・・・」

あれこれ訊いて鍵を受け取り、「ちょっと待ってな」と出てった。傍目には『さも面倒見のいい姉貴分』みたいだ。まあ美穂としては、これを口実に原チャリに
乗って来れる・・・学校が終わったらスタジオへ行くし、今日は帰りに買い物する予定。紅葉の並外れた食欲の所為で、色々と大量に買い込むのは目に見えてる。
クソ重たい荷物を担いで、広院町まで歩いて帰るのは嫌である。亜美に原チャリ通学を禁止されちゃったけど、こんな既成事実あれば認めざるを得まい。ついで
だけど、C組での作業をサボれる。教室を後にした美穂は、こっそりと「でかした紅葉、褒めてつかわす」と呟いて「うっひっひ」と笑ってから駆けてった。


・・・そんこんなで放課後が過ぎ、夕暮れ近くになって帰宅を促す放送が流れた・・・


作業を終えた紅葉と亜美が正門へ向かったら、美穂が放課後ティータイムの5人と一緒だった。余談だが、タイプミスしたら『放課後ティー多淫』と変換された。
『多淫』とは何ぞや?ちょっとエロいぞ。それは置いといて・・・話を聞いたところ、この5人も同じ貸しスタジオを予約してたらしい。一緒に行こうって事に
なって、8人でワイワイキャアキャア喋くりながらスタジオへ向かった。

「バルたん、良かったねえ~」
「これからは、堂々と会えるんじゃないの?」
「羨ましいですわ~」
「宇宙人の友達なんて、面白そうですね」
「だ、大丈夫か?怖くないか?」

女子高生が8人も集まって喋りながら歩いた日にゃ、ちょっとした騒音である・・・そうそう、今さらだが『けいおん!』をレンタルしてキャラ把握したんで、
簡単に書いておこう。これから先、単発ゲストや台詞あるチョイ役とかで出演させる機会あったら参考にしやがれ。

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☆平沢唯/ボーカル&リードギター(ギブソン・レスポール)/2年C組☆
これでもかってくらいホンワカ喋る。将来どころか日常生活が不安になるくらい、ぐーたらでマイペース。
ただし音感は凄くて、聴覚でギターをチューニングしてしまう(チューナーを知らなかったからだけど)

☆田井中律/ドラム(ヤマハ・ヒップギグ)/2年C組☆
男勝りで大雑把で、明るく社交的な元気っ子。肩書きは軽音部の部長だけど、頻繁に脱線して澪にどつかれる。
【愉快での設定:美穂の師匠で、ファムについても知ってる。家での練習用にエレキドラムも所有】

☆秋山澪/ベース&ボーカル(フェンダー・ジャスベース左利き用)/2年D組☆
律とは幼馴染み。男子口調で喋る。あがり症で人前で何かやるのが苦手だけど、追いつめられると頑張る子。
文化祭のお化け屋敷すら尻込みするくらい、極端な怖がり。その一方で、脱線しまくる律に鉄拳制裁する役。

☆琴吹紬/キーボード(コルグ・トライトン76Key)/2年C組☆
超お嬢様だけど庶民的。あちこちに別荘あったり、唯がギター買った楽器店が琴吹グループ系列で顔が利いたりする。
5人が飲み食いする茶や菓子は、食器も含めて紬が用意してる(バンド名が放課後ティータイムになった張本人)
見た目に合わぬ怪力で、ママチャリ並みの重さがある愛用のキーボードを普通に担いで歩く。

☆中野梓/リズムギター(フェンダー・ムスタング)/1年A組☆
唯一の1年生なんで、基本は敬語で話す。両親の影響で、後輩だけど演奏が1番上手で音楽の知識も深い。
ロクに練習せずお菓子食って喋ってるだけの先輩達を、本気で心配して叱咤する真面目っ子。
唯の妹の憂(うい)とは、クラスメートで仲良し。ちなみに小柄でツインテールなんで、見た目が紅葉と被る。

※山中さわ子先生/音楽教師で軽音部の顧問※
優麗高卒業生で軽音部OBでもある。ちなみに軽音部時代は、デスメタルをやってた。
本人は黒歴史にしてるが、メガネを外したりギターを手にしたりすると≪覚醒≫して雰囲気が一変する。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

う~ん。こうして書き連ねると、かなり描写の変更が必要になってくるな。特に話の都合で頻繁に登場してた律を、大人しい真面目っ子に書いちゃってた。
これから登場させる時は、何事も無かったように『男勝りで流れを脱線させるキャラ』で書こう。ってゆ~か澪と梓以外は、美穂のクラスメートでやんの。
今さらだけど、そ~ゆ~設定なんだから仕方ないな・・・・と『けいおんキャラ』について延々と書いてる間にも話は進む。8人が賑やかに喋くりながら
歩いてたら、道端に小さな車が停まってた。皆は話しながらチラ見して、年齢相応に「このクルマ、ちっちゃくて可愛い」とか思いながら通り過ぎたらドアが
開き、さも仕事が出来そうな雰囲気を漂わせた大人の女性が降りてくる。ハンドバッグから出した写真を取り出して確認すると、8人に近寄って声をかけた。

「こんにちは。ちょっと良いかしら?」
「ぇ?ァタシ達ですかぁ~?」
「私OREジャーナルの桃井令子と言います。ちょっと、お話を聞きたいんだけど」
「ぇ?ぇ?マスコミの人がィンタビュー!?すげぇっ!!」

普通にはしゃぎだしちゃった紅葉と反対に、美穂は軽く警戒してた。OREジャーナルの桃井令子と言ったら、火車と戦った時に居合わせてクライマックスを
撮影して配信した記者じゃん。自分達に声かけたのは、ただの偶然なんだろか?それとも、何かしら掴んでるんだろか?掴んでるとしたら、どの程度だろう?
まさか、仮面ライダーの事まで付きとめちゃいないだろな?そう考えながら眺めてたら、令子はハンドバッグから取り出した写真を眺めてから美穂に寄ってきた。

「あなたが、霧島美穂さん?」
「・・・・そうです」
「ぇ?ミホが指名されたっ!何ゃらかしたの!?逮捕されるの!?」
「ちげーよっ!!何で、そんな発想になる!?・・・あたしに何か用ですか?」

困惑しながら亜美を見て、「紅葉を黙らせてくれ」と視線で訴える。察した亜美が紅葉の手を引っ張って「邪魔しないで黙ってなさい」と美穂から遠ざけた。
いきなり名指しされて露骨に警戒してる美穂に対して、令子はニコっと微笑みながら、ネットで拾ってプリントアウトした『バルたんに乗っかって飛んでく美穂』
の写真を見せて訊ねる。

「何人かに訊いて回ったけど・・・これに写ってるの、霧島さんね?」
「・・・・・・はい」

チラ見した美穂は、心の中で舌打ちした。こんな御時世だから「ひょっとして撮られてるかも」と思ってはいたけど、実際に撮られた上にネットへアップされてると
知ったら「何処の誰だ、余計な事しやがったのは?」とムカついてしまう。「ピンボケで、誰が写ってるかまでは現場で見てた奴等にしか解らない」ってのが救いだ
けれども。でもまあ、そんな心中は欠片ほども見せず、さも『突然の取材で緊張してる女子高生』を演じて令子に微笑み返した。

「羽里野山で風谷真魚さんが誘拐された時、バルたんと一緒に犯人を追ったのよね?」
「はい、そうです」

戦いで培った勘が「この記者は出来る」と判断し、またも亜美とアイコンタクト。≪キュルルルリン!≫っと言う効果音と共に、心拍計のモニターに表示される
波みたいな青い閃光が2人の間を走り抜ける。『ニュータイプが邂逅した時のピキーン』で、一瞬にして意思の疎通を完了した。

≪紅葉が余計な事を喋らないようにして!≫
≪うん、解った!≫

美穂の事や羽里野山での事件を知った上で直接コンタクト取ってくるとは、かなりのキレモノと見た。紅葉がうっかり余計な事を喋ったら、拙い事になっちゃう。
何と言っても、初めてゲンジの姿で亜美の前に現れた第一声が「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっっっっ!!!あみぃぃぃっっっっっ!!!」で、その次が
「ダイジョブだった、アミ?危なかったねぇ!怪我ゎ無ぃ?立てるょねぇ?」ですもん。こやつを放っておいたら、何をほざきやがるか解ったもんじゃない。実際、
令子を眺めながら「何処かで見た気がするなぁ」と呟いてるし・・・察した亜美は、咄嗟に紅葉の尻へツツツと指を這わせながら叫んだ。

「あっ、お尻にクモっ!」
「ぇ!?ぇ!?・・・ちょ、ゃだぁ~っ!!」
「払ってあげるから、ジッとしてて」
「ぅんっ!」

令子に興味津々な紅葉だったが、たちまちパニック起こして令子どころじゃなくなった。年頃娘は虫が嫌い。カブトやクワガタみたいなカッコイイ系。もしくは
テントウムシや蝶みたいなキレイ・カワイイ系なら大丈夫だけど、クモは好きになる要素ゼロである。「ほら、ジッとして」と亜美に言われ、まだ「ゎぁ!」だの
「きゃぁ!」だのと絶叫しながら遠ざかったのを確認してから、美穂は令子に向き直って努めて冷静に対応した。

「すいません、騒がしい奴で」
「大丈夫よ、気にしないで」
「お話の通り、あたしはバルたんに乗っかって、一緒に行きました」
「凄い行動力ね。良かったら、詳しく聞かせてもらえないかしら?」
「ええ・・・でも話すのは構いませんけど、これからスタジオで練習が」
「あら、ごめんなさい。歩きながら話しましょう」
「はい」

美穂と令子が並んで歩き出し、放課後ティータイムの5人を間に挟んで紅葉と亜美がゾロゾロ続く。美穂は「何処まで話しても大丈夫かな?」と考えていた。
ちなみにバルたんは美穂と真魚に気を遣って、『拉致騒動』は科特隊にも話してない。バド星人との抗争は、表向き『襲われたから、身を守る為に戦った』で
通している。つまり『拉致騒動』は優麗高の生徒達しか知らない事なのだ。それを持ち出して来たって事は、その前に起こってる『弁当紛失騒動』は調べ済み
だと思える・・・たぶん本命は『バルたんと同行した先で何を見たか』だろう。

「何で霧島さんが一緒に?」
「え~とですね・・・・実は、遠足にビール持ってったんですよ」
「ビール?」
「好きなんです。山で飲むビールって、美味いじゃないですか」
「・・・はあ」
「美穂、遠足にビール持ってったの?不良だ~っ」

いきなり律が後ろから割り込んだんで、話が中断されてしまう。美穂は振り返って「ちょっと静かにね」と言ってから令子に向き直って続けた。

「バレたら停学だから、もちろんコッソリ持ってきましたよ・・・
 でも飲もうと思ったら、バルたんに盗まれてたんです。それでチョット揉めまして」
「揉めちゃったの?」
「へぇ~。あの時バルたんちゃんの傍に転がってたビール、霧島さんのだったのかあ」
「不良だ不良だ~っ!先生に言ってやろっ!」

唯とまで加わって、律と一緒に囃し立てられる。美穂が対応に困ってたら、澪が「邪魔すんの止めなさい」と律をブン殴り、脳天に巨大なタンコブがプクっと
膨れて、ようやく静かになった。その様を眺めてた美穂と令子は、頭に漫画みたいな巨大汗を浮かべて「ハハハ」と力なく笑った。

「・・・・続けていいですか?」
「・・・・どうぞ」
「はい。あたしのビール飲んだバルたんが、酔っぱらっちゃったんです。
 アルコールが合わなかったみたいですねえ・・・売店の屋根から転げ落ちて、
 盗んだ弁当をブチ撒いたんで・・・・あ、バルたんが皆の弁当を盗んだのは知ってます?」
「ええ、他の生徒さん達から聞いてるわ」
「じゃあ話が早いですね・・・『コイツが弁当泥棒の犯人だったのか』って捕まって。
 で、あたしバルたんをブン殴ってやろうと思ったんだけど、あっちの2人に止められました」
「・・・・はあ」
「そしたら今度は、A組の風谷さんが宇宙人にさらわれたなんて騒ぎになりまして・・・
 バルたんが『お詫びで、奴等やっつけて風谷さん助ける』って言いだしました」
「ふんふん」
「あたしが『どうせ、おまえと誘拐魔がグルなんだろう』って言ったら、
 『なら身の潔白を証明するから、一緒に来てくれ』と言われまして。それで一緒に行きました」
「・・・なるほどねえ」

時たま相槌しながら聴いてた令子は、美穂が話に一区切りついて黙ってから暫し考え事してる風だった。

「ここから本題なんだけど・・・行った先で、何があったのか教えてもらえるかな?」
「はあ」

美穂は返事しながら、心の中で「ほら、やっぱりね」と思う。

「科特隊の捜査で、千石釜池に争ったらしい痕跡が発見されたんだけど、
 その池が『宇宙人達に追いついて戦った場所』って事で、間違いないかしら?」
「はい」
「宇宙人は2人だったそうだけど、バルたんが1人で戦ったの?」
「そうですよ~。だって加勢するにしたって、他に誰がいるんですか?まさか、あたしだとでも?」
「霧島さんも戦ったの?」
「まさか~っ!」
「そうよね・・・・これは風谷さん本人から聞いた話なんだけど」
「何ですか?」
「『千石釜池で意識を回復した時に、“白鳥の騎士様”を見た』と言ってるの」
「白鳥の騎士様?」
「ええ・・・少しだけ醒めた時に目撃して、また気絶したみたい」

『真魚がちょっと覚醒して、自分を目撃してた』って言う思いがけない話を聞かされて、美穂は再び心の中で舌打ちする。この記者は、何処まで掴んでる?
迂闊な事を言ったら、自分の秘密がバレるかも。そこから色々と手繰ったら、紅葉の秘密にも辿り着いちゃうかも知れない・・・てゆ~か気配と視線を感じて
後ろを見たら、紅葉&亜美&放課後ティータイムの7人も興味津々で話を聞いていた。紅葉は落ち着いたら本能で令子を警戒しだしたのか、ちょい真剣な表情。
それに亜美と律も心配そうに眺めてる。

「白鳥の騎士様かあ・・・風谷さん、ショックで幻覚でも見たんじゃないですか?」
「でも特徴を訊いてみたら、土曜の夜に文架警察署で未確認生物と戦った“白い戦士”と
 同一人物と見て間違いないのよ・・・幻覚で、そんな偶然ってあるかしら?」

何だか嫌な質問のされ方だ。先に自分に意見を言わせてから、土曜の夜の事を持ち出すなんて・・・ひょっとして、あたしを“白い戦士”と思ってる?
でもまあ、根拠のない推測だったら、何とでも言い逃れできるかな。変身の瞬間を見られたってならともかく。

「確かに、偶然にしちゃ変な話ですね」
「そうでしょ?霧島さんは、バルたんの戦いや“白い戦士”を目撃してないの?」
「それなんですけど・・・実は奴等の1人に殴られて、あたしも気絶してて・・・
 直ぐに醒めたけど、その時はもう宇宙人達は倒されて灰になっちゃってました。
 “白い戦士”は、全く知りません。来てたとしたら、あたしが気絶してる最中だと思います」
「そっか・・・・ありがとう」
「いえ。肝心な事を知らなくて、ごめんなさい」

そこまで話したところで、貸しスタジオに到着した。まだ何やら訊きたそうな様子だった令子は、名刺を渡して「話あったら、いつでも連絡ちょうだいね」と
言って、来た道を去って行く。とりあえず今日のとこは誤魔化せたようだけど、もっとネタを仕入れてから来られてたらヤバかったかも。頭が切れそうだから、
ちょっとした話の矛盾や違和感から色々と推理して、最終的には自分達の秘密に辿り着くかも知れない。また会う事あったら、要注意だ。

「さて、練習しよか」
「ぉぉぉ~~っ!!」
「じゃあ、ここで解散っ!」
「終わったら、お茶しない?」
「ぃぃょ~っ!!」
「良くないっ!!買い物して帰って、晩ごはんと宿題と掃除っ!!」

放課後ティータイムと別れてスタジオに入るなり、美穂はドッと疲れたらしくてドラムの椅子に座り込んだ。あの記者と接すると、かなり神経が磨り減る。
紅葉が自販機で冷たい茶を買ってきて「ぉ疲れ!ぁと、さっきのぉ礼!」と2人に渡す。「さんきゅ」と受け取って半分くらい一気飲みしてから、改めて
「ふう~っ!」っと大きな溜息を吐いた。

「桃井さんって、なかなかキレモノだね。私までヒヤヒヤしちゃった」
「だな・・・・・・また会ったら、気をつけて話さなきゃ。特に紅葉」
「ぶぅ~~っ!!何で、ァタシぉ警戒すんのょっ!?」
「だって、紅葉が1番ボロだしそうだもん」
「しなぃもんっ!!そんなドヂぢゃなぃもんっ!!」
「何で、紅葉ちゃんの事が心配なのお~?」
「だってコイツ、隠し事や駆け引きってもんが苦手だから・・・・・・って、平沢っ!?」
「ぁりゃっ!?ぉ部屋、間違ぇてね!?」
「えへへ~っ、ちょっと3人の練習が見たくなって来ちゃった~」
「『来ちゃった』って・・・」
「自分の練習しなきゃダメでしょうよ」
「1曲だけ見せてもらったら戻るよ~」
「・・・あのな」

唯が「さも当然」とばかりに、紅葉達の部屋に紛れてた。しかも驚く3人に動じる様子もない。肝が据わってるのか、単なるアホの子か?解りにくい娘だ。
言葉で表現するなら【紅葉まったり版】と言ったところか?そこへ澪が入ってきて、唯を見つけると「やっぱりね」と言いたそうな顔でコメカミを揉んで
から、3人に「ごめんなさい!」と頭を下げ、唯の襟首を掴んで引き摺って「ほら行くよ!」と出て行った。残された3人は、ポカンとして眺めてる。
でもまあ、拍子抜けした所為で緊張がほぐれた。誰からともなく「練習しよか」って空気になって、それぞれの楽器の用意をして演奏を開始する・・・・
とりあえず1曲終えたら、気の所為だろうけど我ながら上手に出来たような気がして「今の何か良くね?」って明るい雰囲気になる。

「ちょっとは良くなったかなあ」
「うん、今のは良かったよ!」
「ちょっと会わない間に、とても巧くなったばる」
「にっひっひっひっ・・・・・バルたん早く帰ってこなぃかな」
「だな」
「ところでバルたんは、何を唄いたいかな?あたし達は1曲ずつ希望したけど」
「そぅだねぇ」
「ボクは『愛おぼえていますか』が唄いたいばる~っ!」
「ぁ、ゃっぱり!?カラォケで聴いた時、めっちゃ良かったょね~っ!!」
「薄々アレだろうなと思ってたけど、やっぱりか」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぁれ?」
「ばる~っ」

ふと気がついたら、当のバルたんが居た・・・3人は文字通り目を点にしてポカンと呆け、3拍ばかり置いてから「何が起きてんの?」って顔して互いに
目を合わせ、ギターアンプに腰かけてニコニコしてるバルたんを眺め・・・・・そして自分でも何言ってるか解んない歓声を上げながら駆け寄って抱き合った。
隣で練習してた放課後ティータイムが「何事か?」と中断して覗きに来て、バルたんを発見したら3人と似たような反応をしてから満面の笑顔になって部屋へ
乱入してきて、一緒に再会の喜びを分かち合う。
 

紅葉と愉快な仲間達・バルたん編入作戦3章⑥

 投稿者:ゾルダⅢ世  投稿日:2018年 7月 5日(木)14時20分47秒
返信・引用
  > No.961[元記事へ]

―朝:源川家―

森で発見したお菓子の家を、遠慮の欠片も無くバクバク食って「幸せぇ~」と幸福の絶頂にいたんだけど、いきなり激しく揺さぶられて現実世界に戻された。
「ちょ、そりゃ無ぃしょ」って言いたげな顔で見上げたら、傍らに亜美が立ってる。枕元のスマホを掴んで見たら、表示されてる時間は、朝の6時ちょい過ぎ。
こんな時間に何で亜美が?・・・解った、夢の途中なんだ。だったら良いや、お菓子の家に戻って続きを食おう。せめてチョコウェハースの暖炉だけでも。

「クレハ!!朝だよっ!!」
「・・・もぅちょっと食べてから・・zzzzz」
「こら、寝るな~っ!!」

二度寝を決め込もうとしたけど、許してくれる亜美じゃない。再び激しく揺さぶられて、強制的に覚醒させられてしまった。布団で顔の下半分を隠したまま
枕元に立ってる亜美を見つめる目は、露骨に不満を訴えている。ちなみに亜美は、とっくに身支度を済ませてエプロンつけてた。何時に起きたんだ?

「まだ6時ぢゃん・・・・ぁと1時間・・・・・」
「朝ごはんと、お弁当の支度するよっ!!さっさと起きるっ!!」
「んぁ・・・・・・・・・そぅだった・・・・・・」

ライブに備えて、昨夜から合宿してたのを思い出した。渋々と布団から這い出して起き上って「ふぁぁぁ」と大欠伸し、とりあえず顔を洗いに行こうと1歩
踏み出したら・・・・・むぎゅっ。

「いてえ~~~~っ!!」
「ぁ・・・・・・・ゴメン」

布団を抱きしめて寝てた美穂の足を、うっかり踏んずけちゃった。飛び起きて食ってかかって「何しやがる」「だから、ゴメンてば~」と、起きた次の瞬間に
揉めだす猛獣共。すっかり母ちゃん役が板についてる亜美が「はい終了!顔洗って歯磨き!」と洗面所に向かわせる。居間兼キッチンを通ったら、タイマーを
セットしてた炊飯器から、ごはんが炊ける匂いが漂ってた。美穂はともかく、紅葉は急速に覚醒する。やがて身支度を済ませた紅葉と美穂が、キッチンへ来て
エプロンつけた。亜美は3人の弁当箱を用意してる。亜美のは如何にも年頃娘っぽい、スヌーピーのイラスト入った小さな弁当箱。紅葉は見た目より量を優先
した、ほぼ重箱みたいな2段重ね。美穂は売店派で弁当箱を持ってないんで、有紀のを貸してやった。

「私は、お弁当作るからね。2人は朝ごはんヨロシク」
「ぅぃ~っす!ぉ味噌汁と~・・・ハムェッグでぃぃ?」
「うん、いいよ」
「任せるわ・・・てか2人とも、いつも朝ガッツリ食ってるの?」
「そぅだょ~」
「ミホちゃんは、食べないの?」
「ん~・・・・・せいぜいバナナかな。休みの日はカップ麺とか」
「起き抜けに食欲無い人?」
「いや・・・・・単に面倒くさいから」
「ぁりゃま!?ぉ味噌汁ほしくなったりしなぃ?」
「そんなに、こだわり無いんだ。たまにコンビニで、カップ味噌汁買うくらい」
「人それぞれだねえ」

亜美は弁当箱に炊きたてごはんを詰め、昨夜からタレに漬けといた鶏モモ肉をフライパンで焼く。冷蔵庫を覗いて、常備してる塩茹でブロッコリーや
佃煮なんぞを取り出した。一緒に覗いてた紅葉は、卵とハムとワカメと長ネギと自家製ピクルスを出して並べる・・・3人家族の割に巨大な冷蔵庫だけど、
紅葉がチビの大食い。有紀も昔ほどじゃないけど、時たま(内緒で変身した後に)凄く食べる。しかも有紀は、ワザと冷蔵庫の中身を減らして出かけた。
食材が底を尽きかけちゃってるから、今日の放課後は買い物しなきゃ。

「ミホゎ、ぉ味噌汁の具を切ってね」
「・・・・どうやんの?」
「ちょっと見てて~・・・・包丁持って、左手こんな感ぢで添ぇて・・・
 ヮカメゎ適当に畳んで刻んで、ネギゎ斜め薄切りね」
「・・・・・やってみる」

手本を見せてやってから「ぢゃ、ョロシク」と包丁を渡して、自分はハムエッグ作りを始めた。美穂はおっかなびっくりで包丁を使って、ワカメとネギを切る。
かなり不細工だけど、まあいいか。やがて切り終えてから次の段取りを訊き、昨夜のうちに水を張って煮干しを浸しといた鍋を火にかけて、沸騰するのを待つ。
紅葉が中身の量を見ながら「だぃたぃ、こんくらぃかな」と、お玉に適量の味噌を掬って美穂に渡した。

「沸騰したら中火にしてネギ入れて、煮ぇたら弱火にして、ヮカメ入れてぉ味噌ぉ溶かして終了」
「そっか・・・解った、やってみる」
「プロの味ぉ再現ってなると難しぃけど、これなら簡単っしょ?」
「・・・・・・・頑張る・・・」

そんなこんなで、朝ごはんと弁当が出来上がってテーブルに並んだ。揃って「いただきます」して、賑やかに喋くりながら朝食タイムになる。よくもまあ、
こんなにも話すネタがあるもんだ。ちなみに亜美と美穂は普通に茶椀だけど、紅葉だけ丼で食ってる。おそらく通常時でも、気合い入れて何かやる時には
無意識に妖力を放出してるんだろう。そうでなければとっくに『痩せてたら可愛いのに残念な子』もしくは、若い身空で糖尿病になっちゃってる。

「クレハ、新聞ある?」
「無ぃんだょねぇ。パパとママ、スマホで読んでるから」
「そっか・・・じゃ、ニュース見よう」
「あ」
「何ミホちゃん?」
「いや、何でも」

ホントはアニメの再放送を観たかったんだけど、何となく言えなかった。亜美がリモコンでテレビつけて、ニュース番組を選ぶ・・・羽里野山が、相変わらず
大繁盛してるようだ。まだ7時前だってのに駐車場が6割方埋まっていて、シャトルバスの乗り場にズラッと行列が出来上がってる。わざわざフランスから来た
と言う若い男が、片言の日本語で「ウチュジンオンナノコ、アテミタイデェ~ス。ジャポネトクサツサイコ~~!」と、満面の笑顔でインタビューに応じてた。

≪宇宙人少女の声を聴いたと言う証言を、幾つか得ています。この山の何処かに、今日も居るのでしょうか?≫
≪取材によると宇宙人少女は、登山マナーの呼びかけ・ゴミ拾い・迷子の保護等、1日中働いてるとの事です≫

そこで映像が迷子預り所の録画に切り替わり、顔にボカシ入れた男児が「ママとはぐれたら、おっきなハサミのお姉ちゃんが助けてくれた」なんて話してた。
羽里野山のニュースが終わり、続いて科学特捜隊極東基地の特徴的な建物が映された。何があったんだろう?

≪土曜の夜に関する公式発表も無く沈黙を続けてた科学特捜隊ですが、ここへ来て動きが見られます・・・
 昨日の早朝、パリ本部からタケナカ最高総議長が日本支部を訪れました。
 午後には、タケナカ最高総議長とムラマツ隊長が文架市を訪れて、市長と非公式に会談。
 そして今日の午前中に、市長の要請で緊急市議会を開催。何事か可決される模様です。宇宙人少女関連でしょうか?≫

アナウンサーの解説に合わせ、科特隊基地に隣接する飛行場に着陸する専用機とか、タケナカとムラマツと市長が笑顔で握手してる様子とかが流された。
知らないとこで、何が起きてるんだろう?亜美と美穂は、完全に箸を止めてニュースに見入ってしまう。紅葉もハムエッグ乗せた丼ごはんを掻き込んで
咀嚼して飲み込む作業だけは反射で続けつつ、真剣な表情で見てた。


☆ここでアバンタイトル終了~オープニングへ☆
『仮面ライダーゲンジたいそう第二』
仮面ライダーゲンジたいそう第二!! ぅぃ~~~~っす!!


―広院町から陽快町へ向かう道―

軟膏が切れそうだし、週の初めくらいに来なさいと言われてたんで、紅葉は北斗先生に「病院ぇ寄ってから行くので遅れます」と電話で伝え、正面玄関で2人と
別れて陽快町の『粉木整形外科』へ向かった。放課後は優麗祭関連の作業で抜けれないし、その後はスタジオで練習。帰ったら晩ごはんを作って食べて片づけて、
宿題と風呂。しかも今日は、買い物もしなきゃならない。何だこの、売れっ子タレント並みの忙しさは?とてもじゃないが、放課後に病院へは行ってられない。
出席日数なら余裕だから、朝一で行く事にした。余談だけど、美穂が「さも当然」と原チャリに乗ろうとしたのを亜美が止めて、2人は徒歩で学校へ行った。

「昭和の雰囲気って不思議だな。知らなぃのに、懐かしぃ感じする」

せっかくなんで散歩を楽しむ事にする。紅葉は古びた木造住宅を眺めたり、古くからあるらしい大木を見上げたり、気が向いた路地へ入って迷路みたいに
入り組んだ裏通りを物珍しそうにキョロキョロ眺めたり、実にマイペースでテクテク歩いた。雰囲気に浮かれて、終わってから学校へ行くのを忘れてるらしい。
狭い路地の両側に並ぶ、古びた木造家屋の群れ。小ぢんまりした庭で、紅葉に向かって尻尾を振りながら吠える雑種犬。雑貨屋の軒先に掛かる、錆び塗れな
蚊取り線香のホーロー看板。壊れたまま放置された、ガラス瓶を引っこ抜くジュース自販機。歩いてたら、まるでタイムスリップしたような錯覚を感じた。

「ぉもろ~ぃっ!」

ちなみに普通に本通りを行けば“謎の青年”が暮らすアパートが途中にあるが、裏通りのプチ冒険を終えて本通りへ戻ったら、迂回して通り過ぎてた・・・
そんなこんなで本陣町を過ぎ、陽快町の『粉木整形外科』へ到着。『YOUKAIミュージアム』とか言う、寂れてショボくれたインチキ臭い店の隣にある、
病院とは名ばかりの古びた木造一軒家である。そもそも病院だってのに、看板すら無い。初診で来た時は有紀から渡された地図を頼りに歩いてたけど通り過ぎて
しまい、戻って表札に『粉木勘平』と書かれてるのを眺め、「まさかね」と思いながらチャイム押して訊ねたらここだった。駐輪スペースに、主が乗る年代物の
中型バイク。マニアは目の色変えて見惚れるが、紅葉はチラ見した程度で脇を抜けて玄関のチャイムを鳴らす。関西弁の好々爺の声がインターフォンから聴こえた。

≪新聞なら、間に合ってるでぇ~っ!≫
「ちがぃまぁ~す!予約してた源川でぃ~す!」
≪ああ、嬢ちゃんか。鍵は開いとるから、勝手に入りや~≫
「ぉ邪魔しま~す!」

軽くギィ~って鳴るドアを開けて、靴を脱いで上がる。「入れ」と言ったのに静まり返ってるんで、奥の居間らしい部屋を見て首をチョコンと傾げてたら、
いきなりハロウィンのジャック・オー・ランタンを手にした白衣姿の粉木医師が現れ、クネクネと奇怪極まる歩き方で紅葉の前まで来てから不意に叫んだ。

「パパパパッ!パ~ンプキ~ンッ!」
「・・・・・・・・・・・?」
「あへ?ハロウィン向けのネタやけど、スベってもうたかの~?」
「ぃぇ・・・ちょっとビックリして・・・」

ちょこっと引きながら、笑顔で返す。かなり変なお爺ちゃんだけど、腕は確かだ。渡されたスリッパを履いて廊下を進み、居間の手前の右側の扉を開くと
診察室である。事務机には数冊のファイルと年代物の医学書や薬学書がブックエンドで支えられて並んでるだけで、この御時世にパソコンも置いてない。
机側の壁にバスの時刻表と、何故か若き日のかとうれいこがビキニ姿で写ってるビールのポスター。反対の壁際に、スポンジが飛び出たボロボロの寝台。
奥の戸棚には、医療器具・漢方薬を調合する道具・薬草etc.が、それなり整理されて置いてある。こんな病院に、患者が来るんだろうか?

「ちょっと診せてみいや」
「は~ぃ」

荷物を適当に置き、袖を通さず羽織ってたジャケットを脱ぎ、三角巾を外して粉木の方へ患部を向けて椅子に座った。包帯を解いてガーゼを剥がした粉木は、
「どれどれ」と勿体ぶりながら手を添えて、患部をジッと見る・・・最初は酷かった青痣が、だいぶ小さくなって腫れも引いてた。粉木は患部のあちこちを
指で撫でては「ここはどや?痛くないかの?」なんて訊いてきて、紅葉は「平気で~す」「ぁ、そこチョット痛ぃ」とか答えた。肌色を取り戻しつつある、
10代女子のピチピチモチモチツルツル肌。シャワーの湯がパア~っと弾け、浴びた次の瞬間に水玉になって転がり落ちてく様が目に浮かぶ・・・紅葉は
明後日の方を見てたんで気付かなかったが、粉木は役得で紅葉の腕を擦りながら「これでもか」と目尻を下げて鼻の下を限界まで伸ばしてた。ドサクサ紛れで、
Tシャツに薄らと透けてる水色のブラジャーもバッチリ拝見していやがる。

「ちょっと、腕を上げてみい」
「は~ぃ」
「痛くないかの?」
「大丈夫でぃ~す」

腕を真上に挙げさせて、さも念入りに診察してる風を装いながら腋の下に顔を近づけ、こっそり「すぅ~っ」って深呼吸して甘い体臭を堪能してから診察終了。

「順調に回復しとるけど、あんまり無茶したらあかんでえ」
「してませ~ん」
「ホンマか?そのギターは、何やねん?」
「ぁ・・・・それゎ優麗祭のィベントでチョット」
「ほんま無茶すなよ~・・・そこらのヤブ医者の診察とクスリなら、最短で全治3週間やで。
 ワシが診て、ワシのクスリ使こうとるから、まあ10日ありゃ治るけどの」
「ぇぇぇ~~?ホントにぃ~?・・・・そんな名医にゎ見ぇなぃんですけど?」
「あへ~!?遠慮ない嬢ちゃんやのう・・・まあ、ええわ。クスリ作るから、ちょっと待っとれや」
「は~ぃっ!」

診察室から出てキッチンへ行き、茶と温泉饅頭を盆に乗せて持ってきて「口に合うかの?」と勧め、自分は棚から道具や薬草を取り出して軟膏の調合を始めた。
無茶してないどころか妖怪と戦っちゃってる事を、とっくに知っている。てゆ~か共闘したし。それにしても、並外れた回復力にビックリさせられる。
粉木は“時代劇の医者が使うゴリゴリする奴”で薬草を磨りながら、嬉々として饅頭を頬張る紅葉をチラ見して「さすが有紀ちゃんの娘やな」と、心の中で呟いた。


―本陣町の、とあるアパート―

青年は毎朝、雇い主である老人の家で朝ごはんを頂戴する。だが早朝に電話あって「大事な客と極秘の話するから来るな」と言われたんで、棚を物色して発見
した、賞味期限ちょっと過ぎてるサッポロ一番塩ラーメンを茹でて食って済ませた。「用事が済んだら連絡するから、それまで待機してろ」と言われてるんで、
とりあえず身支度してからは特にやる事も無く、ベッドに寝転がってボケ~っと天井を眺めたり、芦村架純のポスターをボケ~っと眺めたりして過ごした。

「・・・・何だ、この苛々?」

不思議な苛つきを感じてた。まるで『かけがえのない存在が、きったない狒々ジジイに穢されてる』みたいな感覚。だが何故、そんな事を感じるのか解らない。
やがて10時になろうかって頃、老人から「終わったから来い」と電話が来た。青年は億劫そうに立ち上がり、スニーカーを履いて外へ出る・・・・
そんなタイミングで、アパート前の本通りを【文架大橋経由・文架駅行き】のバスが走り過ぎた。治療を終えて学校へ向かう紅葉が乗ってたけど、アパートと
反対側の席に座って景色を眺めてたんで、【100点なバィクと60点な青年】の存在には気がつかなかった。


―文架文化会館―

市の中心部からやや離れた、洒落た造りの多目的ホールである。直ぐ傍を山逗野川が流れ、向こう岸にリバーサイド鎮守。正面の広大な駐車場に、日本どころか
世界各国から訪れたマスコミの取材陣が集まっていた。妙にピリピリした緊張感を漂わせながら、黙々と準備するクルー達。言うまでもないが、桃井令子も居る。
昨日に引き続き優麗高の生徒達をメインに訊き込みしてみる予定だったが、大久保から「重大な発表あるらしいから、文架文化会館へ行ってくれ」と連絡が来た。

「何を発表するのかな?」

取材道具一式を用意して待機してたら、出入り口の方がザワザワ騒がしくなった。何だろうと目を向けたら、科特隊専用車とパトカーが入ってきた。砂糖に群がる
アリの如く駆け寄るカメラマンを警備員が制し、ゆっくり進んだ2台の車は正面玄関前まで誘導されて停まる。科特隊専用車の助手席からムラマツがサッと降りて
後部ドアを開け、出てきたのはタケナカ最高総議長だった。報道陣にペコリと一礼し、ムラマツを伴って文化会館へ入ってく。パトカーからは、市長と警察署長と
小沢澄子が出てきた。5人にフラッシュと質問の雨が浴びせられるが、揃って無言だった。それから間もなく≪報道関係者様は、大ホールへどうぞ≫と世界各国の
言語で放送され、一同はドヤドヤと大ホールへ向かった。


―昼休み・2年B組―

紅葉は3限目の途中に登校してきた。例の如く「ちぃ~~っす!」って元気過ぎるキンキン声を響かせて、遠慮の欠片も無く授業を中断して教師に窘められ、
その後は普通に授業を受けたり、休み時間に寄ってきた友達に経過報告したり“本陣町プチ冒険”を話して聞かせたりして過ごし、やがて4限目が終わって
昼休みである。亜美と机を寄せて弁当を広げてたら、間もなく美穂も来て加わった。亜美が担当した弁当を「いただきま~す」と食い始め、暫くは普通レベルの
騒がしさで喋くりながら堪能してたが、やがて美穂が妙にシンミリとして呟く。

「いいもんだな、手作り弁当ってのも」
「でしょ!買った物ばかりぢゃ、味気なぃょ」
「あんま気にしないけど、たまにチョットね」
「それに好きな物ばっかり食べてたら、栄養も偏っちゃうでしょ」
「・・・そうだなあ」
「合宿が終わっても、ぃっだって作ってぁげるょ~。
 何だったら、ァタシの家で晩ごはん食べればぃぃんぢゃね」
「いや、そこまでしてもらっちゃ悪いよ」
「遠慮しなぃ遠慮しなぃ・・・
 ってゅ~か、ぉ料理教ぇてぁげるょ。ミホ少しゎ出来るょぅになってみれば?」
「・・・出来るかなあ・・・」
「簡単なのから始めりゃぃぃぢゃん」
「そうだね。自炊すれば安上がりだし、女子力上がるよ」
「女子力はともかく、食費が浮くのは助かるかも」

そんな会話してたんだけど、前の席でスマホいじりながら食ってた男子生徒が、不意に「大変だ~!」と怒鳴って立ち上がったんで“ほのぼのシーン”終了。
男子生徒は慌ててテレビを点けて、ATVの昼ニュースをセレクトした・・・画面の片隅に『LIVE』と表示され、映っているのは文架文化会館の大ホール。

「ァミのピァノ発表会ぉ思ぃ出すな~」
「そうだね」
「・・・・始まるよ」

壇上に据えた立派な机の向こうに、科特隊のタケナカ最高総議長とムラマツキャップと市長と警察署長の4人が並んでる。間違いなくバルたん絡みだろうけど、
何事だろう?3人は言うまでもなく、教室にいる全員が釘付けとなる。他のクラスも同じみたいで、安普請なプレハブ校舎の壁を通して、両隣の教室から同じ
音声が微かだけど聴こえてくる。ATV昼ニュースの顔とも言える深ト麻美アナウンサーが現地レポートしていて、緊張した表情でカメラに向かってる。

≪既に国境を超えて世界中から注目されてる宇宙人少女ですが、沈黙を貫いてた科学特捜隊から
 公式な発表がされる模様です・・・・・・あ、始まるようです≫

壇上で席に座ってたムラマツ隊長が、腕時計をチラと眺めてから立ち上がった。ざわついてた会場が、シーンと静まり返る。ムラマツは「オホン」と咳払い
してからマイクを手にして喋りだした。会場に声が響き渡り、外国の記者達には同時通訳でイヤホンに伝わる。

≪では、時間になりましたので始めさせて頂きます。
 私、科学特捜隊・極東支部ムラマツ班で隊長を勤めております、ムラマツトシオと申します。
 既にインターネット等で話題になっておりますが・・・
 極東支部で身柄を預かっております宇宙人の少女について、正式な発表を致します≫

がやがやがやがや

≪まず彼女の出身星はバルタン星で、名前はバルたん・・・『たん』が平仮名になります。
 日本語以外では解りにくい話ですが、本人曰く『平仮名の持つイントネーションが大事』との事です。
 平仮名で『たん』と表記すると、何となく優しくて可愛らしい印象になります。
 例えば、今も根強いファンを持つ日本のアニメ作品『涼宮ハルヒの憂鬱』のヒロインであります
 【涼宮ハルヒ】ですが、これを【涼宮はるひ】や【涼宮春陽】と書きますと、受ける印象が全く・・・≫
≪ゴホン・・・・ムラマツくん、その辺で≫

緊張しちゃったのか、脱線して涼宮ハルヒについて熱く語りだしたムラマツを、タケナカが制した。

≪あ、失礼しました・・・日本以外の方々には解りにくい話ですが、ご容赦を願います・・・
 え~・・・彼女と同胞達が地球を訪れた目的は、観光及び地球人達と触れ合う事。
 既に御存知の方もいらっしゃいますが、彼女はバルタン星人ながら地球人の少女に似た姿で産まれました。
 本人の談によりますと『前から地球に興味があって、来てみたかった』との事です。≫

ざわざわざわざわ

≪これまで得た情報を基に、あらゆる機関と協議を重ねた結果・・・・
『地球に対する悪意は無し』と判断しました。また宇宙船の故障により、暫くは宇宙旅行が不可能との事です。
 したがいまして【条件付きで、バルタン星人達の地球への滞在・行動の自由を認める】と言う結論に至りました≫

記者達のざわめきが一段と大きくなり、無数のフラッシュがパシャパシャパシャパシャと壇上を照らす・・・B組の教室はシーンと静まり返った。
紅葉さえ箸を止めて、「ムラマツ隊長の言葉を一語一句聞き漏らすまい」って勢いで画面を見入る。

≪条件その1:母艦を武装解除した状態で、科学特捜隊極東基地に隣接する空地に停泊させる。
 その2:母艦及び小型飛行艇を飛ばす際は、地球の航空法を遵守する。
 その3:冬眠カプセルに入っている者を出す際は、所定の手続きをする。
 その4:戦闘に特化した超能力を、むやみに使わない。緊急時や正当防衛の場合は、この限りではない。
 その5:日本国外へ出かける場合は、所定の手続きをする。
 その6:行った先での法に従い、秩序や風紀を乱さない。・・・・・・条件は、以上であります≫

相変わらず焚かれる、無数のフラッシュ。記者達は大慌てで本社へ連絡してたり、腕組みして考え込んでたり、前代未聞の事態に様々な反応をしてる。

≪もう1つ・・・バルたんをバルタン星人代表者とし、私ムラマツトシオが彼女の身元引受人となります。
 既にこちらの科学特捜隊パリ本部・タケナカ最高総議長の、許可も受けております≫

ジッとテレビを見入ってた紅葉・亜美・美穂だったが、一様にパアっと明るい表情になった。条件付きと言えど、バルたんの地球滞在が認められたのである。
この調子で事が進んだら、バルたんが戻ってくる日も遠くないだろう。3人は誰からともなく立ち上がって「ウェ~~~イッ!!」とハイタッチ。

「そぅだっ!!・・・・ちょっと売店に付き合って!!」
「何するの?」
「ぃぃから、ぃぃからっ!!」

言った次の瞬間には、もう出入り口まで駆けている。亜美と美穂は、ワケ解らないけど苦笑しながら付いてった。紅葉は昇降口から外に出て、最短距離で
売店へ突き進む。早々に食い終えてバレーボールで遊んでた男子の群れを突っ切り、花壇を飛び越え・・・亜美と美穂が売店に辿り着いた時には、大量の
ジュースを見繕って代金を支払ってた。こんな大量買いは想定してなくてビニール袋が無いもんだから、困ったおばちゃんはダンボール箱に品物を詰める。
それを受け取って持とうとしたんだけど、考えたら三角巾で左腕が塞がってた。

「・・・・・・何事だ?」
「クラスの皆で乾杯するっ!!」
「えええ~っ!?」
「それで自腹を切るのか?太っ腹と言うか、何と言うか・・・」
「だって、めでたぃ時ゎ祝杯でしょ!!」
「てか、そのお金・・・・・・買い物で使う予定だった・・・」
「どぅにかなるょっ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「それょり運ぶの手伝ってっ!!」
「しょうがねえなあ」

苦笑しながらダンボール箱を持とうとしたけど、40本オーバーのペットボトルが詰まった箱を生身の女子が持つのはキツイ。亜美と美穂とで持とうと
頑張り、紅葉が横で応援をする。だが、どうにも無理っぽかった。まさかジュース運びで変身するわけにも行かないし、モタモタしてたら温くなる。

「平山さん達、何してるたい?」
「あ、石松さん」
「・・・・ぶひ」

御都合主義発動で、昼めしを食い終えた石松が唐突に現れた・・・ちなみに今日は、肉野菜炒め定食ごはん超盛りとコロッケカレー超盛りを食い、さらに
食後のデザートでカレーライスを食ったらしい。

「ぁ、ブチョーさんだぁ!!1本ぉごるから、これ教室まで運んで下さぃっ!!」
「お安い御用ばい」

石松の手を握って自販機の前まで引っ張って、コインを入れて「好きなの選んで」と微笑む。石松はミルクティーを選んでボタンを押し、ゴトンと出たのを
礼を言って受け取ってから戻ってきて、段ボール箱を軽々と担いで歩きだした。それを感心して眺めながら、3人は後を付いてく・・・紅葉が意味ありげに
「ニィ」っと笑い、美穂のジャケットの裾を引っ張りながらペースを落とす。自然と亜美と石松が並んで歩くようになった。美穂は頭に【?】を浮かべてたが、
紅葉が何度も亜美と石松をチラ見しながら「ニィ」っと笑うのを眺めたら、何となく事情を察したらしい。「ヒヒッ」っと笑いながら頷いてペースダウン。

「あ、あの・・・土曜日は、ありがとうございました」
「いやいや、当たり前の事したまでたい・・・
 え・・・え~と~・・・・ずっと練習しとるようじゃね?」
「あ・・・・はい。まあ、何とかボチボチ・・・」
「駅前のスタジオに入るの見たって、後輩から聞いたばい」
「そそっ、そうなんですかっ?」
「お、応援しとるたい、頑張りんしゃい」
「あ、あああ、ああ、ありがとうございますっ」

互いに照れちゃって、間が持たない。亜美が時たま「何で、こうなるの?」と言いたげな顔してチラッと振り返るが、2人は咄嗟に明後日の方を向いて
知らんぷり・・・・そんなこんなしてる間に、B組の教室へ到着した。モジモジしながら「じゃあ、また」と別れ、亜美は軽くプンスカしながら紅葉に
何やら言おうとしたけど、もう教室に入って「ァタシのぉごりっ!皆でバルたんに乾杯しょぅ!」って、ジュースを配ってる。その間にも、テレビでは
色々と事が進んでた。ムラマツの話が終了したらしく、司会の男が脇から現れて話しだす。

≪未確認生物撃破に協力し、文架市の平和を護った功績を称え、バルたんに感謝状の授与を行います。
 まずはG3チーム責任者・小沢澄子管理官より、花束の贈呈です≫
「・・・・・・・・・・・・・ぇ?」
「ホールに来てるのか!?」

慌ててテレビを見たら、透明化して潜んでたバルたんが姿を現して報道陣に満面の笑顔で手を振った。どうやらサプライズだったらしくて、会場は
暫し沈黙した後に蜂の巣を突いたような騒ぎになる。バルたんは無数のフラッシュで照らされながらペコリと挨拶し、澄子から綺麗な花束を受け取って
握手をし、続いて緊張しまくりな警察署長が感謝状を読み上げて渡した。何処で作法を教わったのか、うやうやしく両手で受け取って会釈する。

「バルたんすげ~~~~っ!!!皆、ジュース持った!?乾杯しょぅっ!!」

紅葉はクラスメート達に呼びかけながら、三角巾を外して教卓へヒラっと身軽に飛び乗った。ミニスカが翻ってパンツ見えそうになったんで、亜美が思わず
「ちょ、クレハ!!」と注意する。だが嬉しさが先走って耳に届いてないらしい。亜美と美穂は、苦笑しながらジュースを持って蓋を開けた。教卓の紅葉は
メッツ・グレープフルーツの蓋を開けて高々と掲げ、空いた手を腰に当てて声を張り上げる。

「バルたんの事ぉ・・・・ぇ~と・・・・色々と祝って、かんぱぁ~~~~ぃっ!!!!!」
「かんぱ~~~~~いっ!!!!」×全員

皆はペットボトルを高々と掲げ、隣近所と「うぃ~っす」と言いながらコツンと合わせてからグビグビと一気飲み。やがて教室のあちこちから、申し合わせたように
「ぷはあ~っ」って声が上がるのだった。
 

紅葉と愉快な仲間達・バルたん編入作戦3章⑤

 投稿者:ゾルダⅢ世  投稿日:2018年 6月28日(木)20時46分44秒
返信・引用
  > No.959[元記事へ]

―また妙な夢を見た(軽~く脚色)―

何人かでつるんで遊んでたら、不意に俺ともう1人だけが別の場所に飛ばされてしまった。もう1人とは全く面識ないのに、何故か夢の中では奴を
「伊達昌平だ」と認識していた・・・幸い服は着ていたから、どうやら“覚醒前”らしい。だったら、まあ良いか。
飛ばされた先は、カジノみたいな場所だった。ごった返す、正装の人々。コインがチャラチャラ言う音・・・。
俺と伊達はスーツ姿の綺麗なお姉さんに案内され、勧められたテーブルに着く。どうやら【このゲームをクリアしないと、元の世界に戻れない】って
ルールらしい。ちなみに案内されたのは、小洒落たモノでも難しいモノでもなく、ただの【すごろく】だった。サイコロ振ってコマ進めて、止まった
場所に書かれた指示に従う。早い話、人生ゲームみたいなもんだ。なにゆえ、カジノで人生ゲーム?・・・とりあえずサイコロを振る。

「・・・・おいおい~」

止まった場所に書かれた指示は『サーキットでGT-R・NISMOとタイマンして勝て』だった。しかも勝手に指定された俺の車は軽自動車。
無茶にも程があるだろう。相手は600馬力のモンスターぞ。スタートして2秒も経ったら、遥か先で点になってんぞ・・・・
まあ、ガチで運転じゃなくアーケードゲームだけども。それにしたって無理だ。でもクリアしないと元の世界へ帰れないんで、俺はシートに座った。
ちなみに伊達はと言うと、気がついたら見当たらない。さっきのお姉さんと一緒に、寝室にでも行ったんだろう。





そこで醒めた。自分の夢ながら、続きが少し気になる。てゆ~か、どうせなら案内係のお姉さんと寝室に行きたかったぜ。何やってんだ夢の俺!!
呑気にゲームやってる場合かバカモノめっ!!こ~ゆ~時の積極性に関してだけは、伊達を少し見習えっ!!


―街角―

ど~んっ!!

作者らしき人物を撥ね飛ばしたような気がした。窓に少し血が付いたけど、令子は無視してスマートを走らせる。紅葉達が向かったのと反対の方角から来て、
校庭を囲む塀に沿った道端にスマートを停めた・・・さすがの令子も、午前中は二日酔いが酷くて仕事どころじゃなかった。とりあえず文架警察署へ行って
停めっぱだったスマートに乗り込んだけど、運転したらヤバいレベルの頭痛と眩暈。マスコミ関係者が二日酔いで運転して、万が一にも事故ったら拙い。
運転席でグッタリしながら昼近くまで考え事して、ようやく動けるようになった。羽里野山に行けばバルたんに会える確率が高いと踏んだけど、酷い混雑で
取材どころか現地への到着さえ不可能。仮に行ったところで、既に他の新聞社やテレビ局が大挙して訪れてるに違いない。出遅れた上に今さら感あるような
記事を書くくらいなら、他社とは違う角度から焦らずジックリ調べてみようと考え直した。

「それ優麗高っす。同級生だった奴が通ってんだけど、昨日メール来ました」
「どんなメールか、詳しく教えて貰えるかな?」
「『未確認生物と戦った宇宙人娘とは、先週の月曜に羽里野山へ遠足した時に会った』って」
「ありがとう」

まずは「先週の月曜に羽里野山でバルたんに遭遇したのは、何処の学校か突き止めよう」と思い、通りすがりの高校生に片っ端から訊ねてみたら、そんな情報を
得たんで優麗高を目指して今に至る・・・「突破口が見つかったかも」と安堵しながら門から吐き出されて散ってく生徒達を眺め、バッグとICレコーダーを手に
スマートから降りて、擦れ違いそうになった女生徒グループに名刺を見せながら声かけた。

「OREジャーナルの桃井って言います」
「マジ!?記者さんだって!」
「おお~っ!」
「カッコいい~!」
「宇宙人の子を調べてるんだけど、ちょっと話を聞かせてもらえるかしら?」

キャーキャー騒ぐ女生徒達を質問で落ち着かせてから、いきなり本題に入った。

「先週の月曜に羽里野山で、優麗高の生徒さん達が遭遇してるそうね?」
「あ、はい。皆のお弁当が、あの子に盗まれたんです」
「・・・お弁当を?」
「はい」

そこは知ってるけど、如何にも「そんなの初耳よ」って風を装いながら質問を続けた。

「何でまた、高校生のお弁当を盗んだのかしら?」
「え~と・・・聞いた話だと、食糧の調達だとか」
「私達、そんなに近くで見なかったんで」
「ってゆ~か、人が集まりすぎて近寄れなかったんです」
「・・・なるほどね」

頷いた令子は、バッグからスマホを出して画像ファイルを開いて見せた。SNSで拾った画像で、映ってるのはバルたんに乗って飛んでく美穂の姿・・・
とは言っても遠目でハッキリ映ってないし、男か女か判別しにくいファッションだし、ついでに貧乳だしで、この写真だけで人物を特定するのは無理。
SNSにアップした者も、さすがに個人の名前までは載せてない。誰がどんな理由で、バルたんの背に乗って同行したのか?そして、行った先で何を見た?

「背中に乗ってる子のクラスと名前、知ってたら教えてもらえるかな?」
「ん~・・・・上級生の女子ってだけは」
「顔は知ってるけど、名前まではチョット」

この女生徒グループは1年生だった。2年か3年の生徒に訊いてれば、即座に判明しただろうけども・・・令子は丁重に礼を言い、他の生徒に当たってみる。
あえて「背中に乗ってる人」と言わず「背中に乗ってる子のクラスと名前」って訊いてみたが、相手の答えで『優麗高の2年か3年の女子だ』と確信した。


―羽里野山ハイキングコース―

聞きしに勝る混雑ぶりである。バスとロープウェイは通勤ラッシュみたいだし、麓駅や山頂駅の食堂は常に行列。観光地やサービスエリアで食いたくなるもの
で上位ランク常連のソフトクリームが、早々に売り切れてしまう。「野次馬ついでに運動不足解消しようか」なんて人達で、登山道も人が途切れない。そんな中。

「あ~、だりい」

登山客の中に心無い野郎が1人いて、空になったペットボトルをポイと投げ捨てた。斜面をコロコロと転がり落ちてくペットボトル。周りの人達はムカついた
けど、注意して面倒な事になるのも嫌なんで黙ってたら・・・・捨てたはずのペットボトルが空から降ってきて、男の脳天に当たった。何事か?
男は「何だよ、畜生」と空を見上げたが誰もいない。頭でバウンドして足元に落ちたペットボトルを力いっぱい蹴っ飛ばしたら、木の幹に当たる直前で停止して
戻ってきて、おでこにパァ~ンと勢いよく当たってから、フワフワ宙を飛んで男の掌に収まった。同時に、何処からともなく呼びかける声が響く。

≪そこのお兄さん、ゴミを投げ捨てちゃダメばる~っ。
 ゴミは決まった場所に捨てるか、お家に持ち帰りましょうばる~っ≫
「なっ・・・なんだあ~っ!?」

声はすれども姿が見えず。男は呆けて立ち尽くしてたけど、ふと周りを見たら他の登山客達が指さしてクスクス笑ってる。頭に血が昇って「っだらあ!!」と
ペットボトルを手頃な奴に投げつけたら、またも当たる直前で停止して戻ってきて顔面を直撃。しかも足を掬われてスッ転んだ。危うく地面に顔面を強打って
寸前、見えない何かに襟首を掴まれて引っ張られて起こされる。

≪喧嘩はダメばる~っ。マナー護って、仲良くハイキング楽しみましょうばる~っ≫
「ひ・・・・ひゃああああっ!!」

居心地悪くなったマナー悪い奴①は、ペットボトルを拾ってからきまり悪そうに下山してしまうのだった。一部始終を見ていた周りの登山客達は、「直ぐ傍に
宇宙人娘が!?」とキョロキョロしたりカメラやスマホを出したりしたけど、それっきり声は消えた。

「なかなか忙しいばる~」

バスとロープウェイの始発前に、登山道のゴミ拾い。在庫がヤバくなったメニューの材料を、倉庫から運んで届ける。登山の途中で我慢出来なくなって垂れた
小便やウンコに、円盤で調合した薬を振って即座に分解する。溜まったゴミを、円盤へ運んで処理する。人がいない場所で迷子になってた幼児だけ限定で姿を
見せ、あやして泣き止ませてから背に乗せて預り所へ送り届けるetc.・・・・バルたんは最低限の用心しつつ、朝から晩まで甲斐甲斐しく働いてた。


―貸しスタジオ―

下がり切ったテンションは、深刻な精神的ダメージを与えてた。紅葉が3弦と4弦を間違えて明後日の音を鳴らし続けたのに気付いてないんで、堪りかねた亜美と
美穂が指摘したら、何時もならペロっと舌を出して素直に謝るのに「間違ぇてなぃもんっ!」と言い張る。暫くしたら美穂が間違ったリズムを叩きだし、紅葉と
亜美が「今のとこ違う」と指摘したら、バスドラムを勢いよく蹴っ飛ばしながら「何をだよっ!?」とキレる。「2人に当たっても仕方ない」と、解ってんだけど
苛々する。この苛々は何処から来るのか?何だか『大事な男が他の女と良い仲になりそうなのに、どうにも手を出せない場所にいて眺めてる事しか出来ない』って
感じだ・・・・・どんな感じだよっ!?サッパリ解んないよっ!!

「やんのか、ちんちくりんっ!!」
「上等だぁ、こんちくしょぉ~~~~~っ!!」
「いい加減にしなさ~~~いっ!!」

久しぶりにガチで揉める猛獣共の間に割って入って止める亜美も、本番でピアノ使えなくなったショックは大きくて凡ミスを繰り返してた。今日はもう、散々だ。
やがて終了時間が迫ったら、さっさと演奏を中断して帰り支度を始めてしまう。「バルたんが戻って来た時の居場所になろう」と決心した舌の根も乾かぬうちに、
何たる体たらくか・・・やがて真っ先に帰り支度を済ませた紅葉は、2人を待たずにプイっと先に出て行ってしまった。

「ぉ先っ!!」
「あっ、待ちなさいよクレハっ!!」
「放っとけよ」
「でも・・・」
「今日はダメっぽいよ・・・ちょっと頭冷やす時間が要るかもね」
「・・・・・・・・・・・・・」

ド素人の寄せ集めだってのに、何を呑気な。必要なのは、チームワーク取り戻して練習に励む事じゃないのか・・・去り行く紅葉と平然としてる美穂とを
オロオロしながら交互に眺めてた亜美だったが、とりあえず美穂と同行して一緒にスタジオを後にした。美穂はスタスタ早足で歩いて、最寄りのコンビニへ
入ってく。亜美は暫し所在なさげに店前でウロチョロしてから「お茶でも買おうか」と入ってったら、美穂が弁当コーナーで立ち尽くしてた。

「どうかした?」
「・・・明太クリームスパゲティー売切れてた」
「ひょっとして晩ごはん?」
「うん」
「それしか食べないの?」
「ビール飲む」
「あのねえ・・・そうじゃなくて、野菜とかは?」
「切らしてるけど、青汁とサプリ飲むから要らない」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

行った事ないからどんな部屋か知らないが、『独りでコンビニスパゲティー食いながら晩酌してる美穂』を想像してみたら、寂しいような悲しいような
何とも言えない気分になってしまった。そして紅葉も、最悪な気分で帰るのに出迎えてくれる親が不在。【食いしん坊・料理上手・好き嫌い無し】だから
食事に関しては心配ないけど、彼女は他の事がダメである・・・亜美は代わりの弁当を選ぶ美穂の後姿を眺め、続いて綺麗な部屋をブッ散らかしたまんまで
色々と自棄食いしてる紅葉を想像し、やがて何事か閃いたらしくて美穂の手を掴んで、コンビニの外へ引っ張り出した。

「ちょっと何っ!?まだ買ってないんだけどっ!!」
「いいから、一緒に来てっ!!」

有無を言わさず美穂を引っ張り、急ぎ足で文架駅のロータリーへ向かう・・・・広院町を経由するバスの乗り場で、他の乗客に混ざった紅葉が不貞腐れた
感じを隠そうともせずスマホいじってた。別の学校の男子が見惚れたけど、機嫌悪い時の美穂にも負けない≪近寄るなオーラ≫を発してたんで、残念ながら
声かける勇気が湧かなくて諦めてる。

「クレハっ!!ちょっと来てっ!!」
「・・・・・・・・・・ぇ?」

乗客の列から引っ張り出して、適当な場所まで連れて行く。荒くなった呼吸を「ハァハァ」と整えてる亜美を、2人は「いきなり何?」と困惑して眺める。
やがて息を整えた亜美は、2人を強い視線で見つめながら提案した。

「今日から日曜まで・・・・クレハの家で、合宿するよっ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・んぁ?」

亜美の言葉が脳にインプットされたが、それを理解するのに時間を要した。で、理解した次の瞬間に「いきなり何なのよ?」と言いたげにアワアワしだした
紅葉と美穂に、亜美は反論の隙を与えず畳みかける。

「私達に必要なのは、頭を冷やす時間じゃなくてチームワーク!!
 ド素人バンドなのに、次の日曜が本番なんだよっ!!悠長な事、言ってられないの!!
 それまでに、バルたんが安心して帰って来れるようにしなきゃダメなの!!解ってる!?」
「う・・・うん・・・まあ・・・」
「そんな返事してるようじゃ、ちゃんと解ってないっ!!」
「・・・ぐっ・・・」
「今日から日曜まで、皆で共同生活!!寝起きして、ごはん作って食べて、お掃除して、
 勉強して、学校行って、スタジオ通って・・・とにかく、一緒に生活するの!!」
「ふぇぇぇ~~~~~!?」
「不満!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「まさか、このまま空中分解する気!?」
「そんなの、ゃだっ!」
「あたしも」
「他に良い案ある!?あるなら言ってみてよっ!!」
「・・・・・・・・・・・ないね」
「・・・・・同ぢく」

まさか、こんなブッ飛んだ提案されるとは思わなかった・・・とは言っても、亜美の意見には一定の説得力あるし、他に良い案なんか浮かばない。
かなり戸惑った紅葉と美穂だったが、亜美の目に「何を言われたって引かないからね」って強い意志を感じたんで受け入れた。
そして亜美にしてみても、この提案は“一か八かの賭け”だった。上手く事が進めば、演奏が格段に良くなるはずだ。それと紅葉と美穂の女子力が上がる。
あとまあ紅葉は、只でさえ余り勉強しないのに、留守番すると輪がかかる。自分の目が光ってれば、少なくとも宿題だけはやるだろうし。だが相手は、乙女の
姿をした猛獣達。下手したら激しく衝突して、何もかもブチ壊しになってしまう諸刃の剣。だが一縷の望みに賭けて、亜美は実行を提案した。


―ハワイのビーチ―

晴れ渡った空、真っ青な海、真っ白なビーチ、並ぶヤシの木、通りを行くオープンカー、リゾートホテルにカフェ、デザートや軽食の屋台etc.
『ハワイのビーチ』ってワードで浮かぶ光景を、適当に想像してくれ・・・水着姿の有紀が、ビーチパラソルで作った日陰の下で簡易ベッドに寝転んで
寛いでた。小説の文章に目を走らせ、枕元の小さなテーブルに置かれたトロピカルドリンクを時たま口に運ぶ。傍目には、バカンスを満喫してる美魔女だ。

「今晩、一緒に過ごしませんか?」
「ごめんね~。私、人妻なの」

細マッチョな白人イケメンの誘いを流暢な英語で断りながら、左薬指のリングを見せる。イケメンは「オ~ウ」と残念そうに肩をすくめて去った。
有紀はスマホにイヤホンを嵌め、画面に指を滑らせる・・・傍目には音楽を楽しんでるようだけど違った。出発前、あちこちに仕掛けといた盗聴器が拾った
音声を聴いてるのである。

(あらまあ?あの大人しい亜美ちゃんが、思い切った提案したわね・・・
 大変な時に突き離してどうなるか試してみたけど、想像より面白い展開になってきたわ)


―ビジネスホテルの一室―

取材から戻った令子は、手洗いとうがいだけ済ませてから休みもせず机に向かって、ノートパソコンを起動させた。優麗高の生徒達に片っ端から当たって
みたら、なかなか興味深い情報を得られた。メールを開いてからタイピングして、ゲットした特ダネを箇条書きする作業を始めた。編集長にも解るように
纏めて、中間報告としてメールで送るつもりだ。

※バルたんと名乗る宇宙人少女の円盤をA。もう1つの円盤をBと呼称

◎先週の月曜日に、羽里野山で起こった出来事◎

・宇宙空間でBに襲撃されたAが、羽里野山近辺に着陸。
・科特隊が、2つの機影をレーダーでキャッチして出動。
・シャトルバスのエンジンが盗まれる事件が発生。
・Aを追撃したBは、羽里野山上空で科特隊のビートルと交戦。撃墜されて不時着。
・バルたんが食料調達の為に、遠足で訪れていた優麗高の生徒達から弁当を盗む。
・追ってきたB星人が、優麗高2年生の風谷真魚なる女生徒を誘拐(目的は不明)
・弁当泥棒で捕まってたバルたんが「お詫びの印に、B星人を倒して風谷真魚を助ける」と、
 2年生の女生徒・霧島美穂を伴って追いかける。
・同じく2年生の女生徒・源川紅葉が、独断で2人の後を追った(非常に好奇心旺盛で活動的らしい)
・約10分後、霧島美穂から友人の2年生・平山亜美の電話に「風谷真魚を救助した」と連絡。
 平山亜美は、勝手に追いかけてった源川紅葉を探して連れて帰るよう2人に頼んだ。
・同じ頃、ウルトラマンが出現したとの情報あり(目的と活動内容は不明)
・複数回の爆発音が聞こえたとの情報あり。
・約20分後、バルたん・霧島美穂・源川紅葉の3名が、揃って戻ってきた。
 目撃談によると、バルたんは2人とすっかり仲良くなってたらしい。


◎疑問点◎

・バルたんは何故、霧島美穂を連れて行ったのか?
・霧島美穂は、行った先で何を見たのか?
・源川紅葉は、何処へ行ってたのか?
・風谷真魚が、最近「白鳥の騎士様」と頻繁に口にしているらしい。
 ひょっとしたら、土曜の夜に文架警察署に出現した白い鎧の戦士の事ではないのか?

◎備考◎

・バルたんは翌日に、優麗高2年B組(源川紅葉と平山亜美が在籍)の教室に現れたらしい。
・証拠は無いけれども、手口からしてエンジン盗難事件はバルたんの仕業と推測される。


―源川家―

「着替えや教科書とかを取りに行くから」って事で、一旦解散。亜美と美穂は、それぞれのバス停で降りて自宅へ行った。1時間ばかり経って紅葉が
暮らすマンションへ・・・待ってる間に簡単に掃除をした紅葉は、キッチンで晩ごはんの支度をしている。

「チャチャっと作っちゃぅから、適当に寛ぃで待っててねっ」
「さんきゅ、ヨロシク~」
「何時も悪いね・・・・・って、違う~~っ!!
 私達は、お泊り会じゃなくて合宿してるの!!一緒に作るよ!!」
「え?あたしも?」
「当たり前でしょ」
「・・・・料理はチョット・・・いや、かなり・・・」
「なら、この機会に少しは覚えなさい」
「う~ん」

亜美に促されて、渋々とキッチンへ。紅葉から借りたエプロンつけたけど、何して良いか解らなくてボ~っと突っ立ってる。その隣で紅葉と亜美が、
あれこれ段取りを話しながら支度を始めた。

「何すんの?」
「ぉ米にしたかったけど、炊いたら時間かかるからパスタね」
「ナポリタンとサラダ作るよ」
「そっか・・・・あたし、何すりゃいい?」
「ぢゃ、タマネギ切って」
「・・・・・・・いきなりハードル高いな」

包丁を受け取ってタマネギの前に立つが、どう切ったら良いか解らない。モタモタしてたら紅葉が痺れ切らして「ゃっぱァタシゃる!見てて!」と包丁を
受け取って、慣れた手つきで切り始めた。包丁がリズミカルに上下し、まな板がスタタタタタッと音を立てる。タマネギ数個が、たちまちスライスされた。

「ぁちゃぁ~、パスタ足りないや・・・パンとスープぁったっけな」
「足りないかな?4人分はあるけど」
「ぅん、足りなぃ」
「今さらだけど、良く食べるね」

紅葉はフランスパンとキャンベルのオニオンスープ缶を取り出した。

「ぁ、そぅだミホ・・・パンぉ切って、スープ用意して」
「わかった」
「これなら出来るしょ?」
「・・・・このスープ、どうやんの?」
「鍋に開けてから、缶に一杯の水で薄めて温めるだけだょ」

片手鍋を出して渡してから、自分の作業に取り掛かる。美穂は言われた通り、鍋に中身を空けて水で薄めてから火にかけた。課されたミッションを終えてから
2人の作業を見てたら、ウインナーや野菜を手際よくカットしたり、調味料を混ぜてドレッシング作ったり、パスタ鍋の湯加減を見たりしてる。
やがて沸いた湯に塩を溶かしてからパスタを放り込み、茹で時間を計算しながらプライパンにオリーブオイル引いて火にかけ、具材を炒めてケチャップを
加えてパスタの茹で汁を適量入れ・・・・そんなこんなで、ナポリタンとサラダが完成した。

「・・・・上手いもんだねえ」
「こんなん序の口だょ。ミホも練習したら作れるょ」
「そうかなあ」
「ん?・・・・・・・・・・焦げ臭くない?」
「ォニォンスープだっ!!」
「やべえっ!!」

何時の間にやらスープが沸騰してる。慌てて火を止めたけど、スープが土鍋に焦げ付いちゃってた。紅葉が「ぁちゃぁ~」と言い、美穂が気まずそうに
眺めて頭をポリポリ掻く。

「強火になってら・・・ダメぢゃんミホ。こんなん弱火でぃぃんだょ」
「・・・ごめん」
「てゅ~か、ちゃんと見ててょ」
「・・・うん」
「それより、どうするクレハ?捨てちゃうのも勿体ないでしょ」
「ん~~~~・・・・・・グラタン風にしちゃぉぅ!パンゎカットした?」
「うん、そこ」

指さした先では、切り口が凸凹で妙にブ厚くカットされたフランスパンが、皿へ無造作に積まれてた。眺めた紅葉は、またも「ぁちゃぁ」となる。

「ミホ・・・かなり、ぶきっちょぢゃね?」
「悪かったな!」
「まあまあ、落ち着いて。こんなの切り直せば良いよ」

亜美が慌てて割って入って宥め、歯がギザギザしてるパン用ナイフでカットし直した。こんな小競り合いの積み重ねが、ある時いきなり爆発して取り返し
つかなくなる。最初の夜から、これは拙い・・・薄く切ったパンをオーブンで軽く焼いてから、平たくて浅い土鍋に並べてオニオンスープかけて、ピザ用の
チーズを乗せてレンジでチン。オニオングラタンスープの出来上がり。これなら焼いたパンの香りで、スープの焦げが紛れる。ちょっとトラブったけども、
晩ごはんが無事に完成。3人はテーブルについて、賑やかに喋くりながらディナーを楽しむ。

「さて・・・片づけて、宿題やろうか」
「げっ・・・」
「ぅぁぁぁぁ・・・」
「宿題くらいは、やらなきゃダメでしょうよ」

亜美に追い立てられるように立ち上がり、食器や調理道具を洗って拭いてしまい、ついでに明日の朝ごはんと弁当の下ごしらえを済ませる。終えて直ぐ
入れるよう風呂の準備してから、3人は居間のテーブルに教科書とノートを広げた。ちなみにB組は数学の問題集の指定された範囲で、C組は英文の翻訳。
これまた亜美にヒントを与えられながら、どうにかこうにか終わらせる・・・何だか、ドッと疲れた。風呂に入って寝よう。3人は互いに「お先にどうぞ」
「いやいや、そちらこそ」とやってたが、結局3人で一緒に入った。いちおうニチアサだし、JKのヌードは世間の風当たりがキツイ。かなりの予算を使った
けれど、不自然なまでに大量の湯気をCGで入れたり、泡や巧みなカメラアングルで隠したりして、問題ない範囲のお色気シーンになる・・・紅葉と美穂が
湯船に浸って亜美が身体を洗ってたら、ものっすごい視線を感じた。

「じぃ~~~~~~~~~~~~~~~」
「ぢぃ~~~~~~~~~~~~~~~」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何事?」
「・・・いいな」
「ぅん、ぅらゃましぃ」
「だから何がっ!?」

これが【ゾルダⅡ世】と言う世界の話だったら、投稿1回分を丸々使って延々と入浴シーンを書くとこなんだけども、残念ながらこれだけで終了である。
パジャマやジャージを着て髪を乾かし、紅葉が物置部屋から布団を運んで来て「さて寝ようか」と紅葉の部屋に入ったら・・・・ベースアンプで占領されて
布団をひけない。3にんがかりで「よいしょ」と動かそうとしたけれど、重たくて動かない。

「しょうがなぃな~・・・・・・・へんしぃ~んっ!」
☆ぽわわ~ん キラキラ 綺羅綺羅 きらきらりぃ~ん☆

部屋だってのに周囲が青空になり、お日様や虹が現れ、同時に服が飛び散って『何となく全裸っぽいけど、ハッキリと描写しませんよ』って状態になる。
続いてクマとかウサギとか象とか猫とかタヌキとかキツネとか、ぬいぐるみの動物達が何処からともなく現れて紅葉を取り囲むように輪を作り、「わ~っ!」
「わ~っ!」って賑やかに歓声を上げながら、それぞれが手にしてるザルから色とりどりの紙吹雪を掴んでは撒き散らす。その紙吹雪が紅葉の全身を包んで実体化。
仮面ライダーゲンジに変身完了!!

「ょぃしょっ!」

ビクともしなかったアンプを、軽々と持ち上げて居間へ運んで変身解除。

「ぢゃ、寝ょっ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・何?」
「ゲンジの見せ場、今ので終わり?」
「ぅんっ!だって、ョーカィも何も出てこないんだもんっ!」
「いいのかなあ」
「ぃぃんぢゃねっ・・・さっ、布団ひぃて!」

何となく釈然としないまま、2人は空いたスペースに布団を並べて横になる。紅葉がベッドに潜り込んでリモコンで明かりを消して、部屋は真っ暗になった。
暫くの間、暗闇でピーチクパーチクとガールズトークしてたけど、やがて紅葉が真っ先に「すぅすぅ」と寝息を立てだし、亜美と美穂も何時の間にか眠ってた。
 

ゾルダⅡ世・素敵な仲間達編6

 投稿者:仮面歩行者  投稿日:2018年 6月27日(水)16時43分24秒
返信・引用
  -アトミック研究所・文架支所-

「だって私・・・血の繋がらないお兄ちゃんを愛しているから・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・へ?」

萌は、少し目を潤ませながら寂しそうに微笑み、健気かつ気丈に答える。あっちゃ~・・・どうやら、聞いてはいけないこと・・・と言うか面倒臭いことを聞いちまったっぽい。燕真は何も言葉を返せない。秀一郎は、話の内容が理解できずにキョトンとしている。
そんで、桃次郎さんは、何故か、目をハートマークにして、ウットリとした表情で、萌を見つめている。

「そうか!萌ちゃんも苦労してんだな!
 だがな、健気な淑女ってのも悪くはないが、それじゃ、相手には気付いてさえもらえないんだぜ!
 先ずは、その、兄貴とヤラに、萌ちゃんの気持を、ちゃんと伝えてみたらどうだ?
 それで、もし、受け入れてもらえなくても、萌ちゃんは、次の恋いに進めるじゃね~か!」
「・・・で、でも、私は、お兄ちゃんの傍に居られれば、それで・・・」
「傍に居てどうする?一生、ただの妹として、兄貴と恋人に当てつけられるつもりか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そんなの・・・いや」
「大丈夫だ!この俺が付いている!大船に乗ったつもりで、兄貴にぶつかってこい!
 例え砕け散っても、萌ちゃんの骨は、俺がシッカリと拾ってやるからよ」

桃次郎が萌の恋を応援しながら励ましてるんだけど、どうなんだろ?渦中の萌は気付いていないようだが、傍で聞いている燕真には、桃が萌の失恋を前提にして話しているようにしか聞こえない。もしかしたら、桃次郎は、失恋をして傷心になった萌を狙っている?

「・・・星さん。」
「がっはっはっ!俺と萌ちゃんの間で、そんな呼び方は水くせ~ぞ!俺のことは、桃とでも呼んでくれ!」
「あ、ありがとう、桃さん。でも、急にそんなの言われても決められないよ。少し考えさせて。」
「おうっ!俺は、いつまでも待つぜ!!」

やっぱり狙ってるっぽい。そ~いえば、作者②は見たことが無いんだけど、【トラック野郎】って物語は、毎回マドンナが現れ、桃次郎が惚れては失恋するんだっけ?なるほど、今回のマドンナは梶萌って事か。

まぁ、そんなわけで、桃次郎の独断で、とりあえず、萌が気持ちの整理ができるまで待つって事で、本日は、研究所の宿舎に泊まることになった。

だが、【トラック野郎】的な展開なのは良いんだけど、【トラック野郎】っぽく、一番星を暴走させて、マドンナを男の所に送るの?だけど、男は、現在地から車で5分くらい峠を下った走った場所(渡帝辺工業高校)に居るぞ。ケーサツと争う前に着いちゃうじゃん。・・・てか、SUTEKIのメンバー集めはどうなった?



-渡帝辺工業高校・女子寮-

渡帝辺工業高校から渡帝辺峠をバイクで10分ほど国道側に下りた所に、女子寮が建っていた。その施設は、過去はラブホテルで、国道から離れた人目に付きにくい場所に在ったので、一般のカップルに重宝されていたのだが、やがて、渡帝辺な男共が覗き見をしたり、出口で待機して客を茶化すようになり、一般客は寄りつかなくなってしまった。その後、しばらくは、渡帝辺の男女の専用ホテルみたいな状態で細々と経営を続けたが、十数年前にド底辺同士の痴情の縺れによる凄惨な事件が発生した為に廃業をした。今は、渡帝辺レディース(聖飛会)が勝手に‘女子寮’と名を改めて、不法占拠をしているのだ。
ちなみに、上記の‘凄惨な事件’とは、『チンポ50本切断事件』として、文架市の黒歴史になっている。もちろん、女尊男卑のこの世界に女性を裁く法など存在せず、渡帝辺チンポ50本を切断した女生徒は、無事に渡帝辺工業高校を卒業した。今は都会に出て、フーゾク嬢をしているらしい。

その一室に、ベッドで大の字に手足を拘束された、全裸の真司がいた。頬はゲッソリと痩け、目の下にはクマが有り、栄養ドリンクがあちこちに転がっていて、既に、久遠静花を筆頭にした、聖飛会のトップメンバーから、た~っぷりと‘おもてなし’をされた後のようだ。

「くっそ~・・・なんで俺ばかりこんな目に遭うんだ?」

毎度のことなのだが、可愛い女の子達と交われるのは嬉しいが、できることなら、1対1で♂側がリードして♀側が恥じらうパターン、10歩譲って♂1・♀2くらいで奉仕をしてもらうパターンが良い・・・だが、この世界での性行為は、何故か、♀が群がってきて、♂の人権無視で、栄養ドリンク漬けにされて強制的に何度も何度も何度も何度も放出させられる。最初の3連チャンくらいは、まぁ、それなりに楽しめるのだが、20連チャンとか30連チャンは、跨がる相手がどんなに可愛くても苦痛しか感じない。この世界で、無尽蔵に連射ができるヤツなんて、伊達昌平くらいだろう。

コンコンコンコン!
ドアをノックする音が聞こえる。渡帝辺レディースに、ノックなんて作法を知っているヤツなんて存在したんだ?しかも、ノック音は礼儀をわきまえた4回(2回はトイレ、3回は親しい相手)。少し意外である。真司は、「また、さっきの続き?」「あと5時間は無理だって!」と表情を引き攣らせて、ノックを無視する。
コンコンコンコン!
もう一度ノック音が響き、今度は、真司の返事を聞かずに、静かに扉が開かれる。

「城戸さん・・・無事ですか?」
「・・・ん?」

真司は、申し訳なさそうに部屋を覗き込んだ女性と、面識がある。確か、ザムシードと焔の引き継ぎ映画となる『大決戦!!炎と魔法の6人ライダーvs魔界の大軍団!!』で共演をした。リレー内で焔の初登場になった蜘蛛軍団との戦いにも、地味ながら、焔と一緒に現場に来ていた。

「え~~~~と・・・確か、君は、梶赤馬の相棒の日野芳華ちゃん?」
「覚えていてくれたんですか?」
「君もここに来ていたんだ?でも、なんで?」
「はい!実は潜入捜査で・・・」

どうやら、来客は、真司を干物にする為ではなく、別の目的があって訪ねてきたっぽい。真司は少し安堵をする。一方の芳華も、真司から入出の許可をもらったと判断して部屋に入る・・・が、手足をベッドの四隅に繋がれて、丸出しにされたチンポを見て、「きゃっ!」と可愛い悲鳴を上げて、「ごめんなさい」と赤面しながら背中を向ける。
あ~~~~・・・良い!それそれ!部屋に入るなり自ら素っ裸になって、自分本位に跨がってくる恥じらい無しの女共とは違って、チンポを見て恥ずかしそうに表情を引き攣らせてくれる女の子の方がコーフンを・・・ぢゃなかった、失礼。容姿と年齢を考えれば、未開通とは考えにくいが、おそらく、至ってノーマルな性行為しか経験したことの無い常識人。やっと、まともな思考の女性に出会えた。

「こ、こっちこそ、こんな格好でゴメン。でも、手足が拘束されていて、自力じゃ隠せなくて・・・」
「そ、そうですね。私の方こそ、事情も把握せずに取り乱しちゃって、申し訳ありません。」

芳華は、床に落ちていたバスタオルを拾い上げて、丸出しの真司のチンポを直視しないように、視線を横に向けながら近付き(とは言っても、興味が無いわけじゃないので、見てないフリをしながら、時々チラ見はしている)、股間が隠れるようにバスタオルを掛ける。ふぅ~、ようやく、少し落ち着いた。

「手足の拘束を外してくれるとアリガタイんだけど・・・」
「ゴメンナサイ。拘束を解きたいのは山々なのですが、今は潜入捜査中で、私は新入りの下っ端なので、
 トップから目を付けられるような、勝手なことは出来なくて・・・本当にゴメンナサイ。」
「そっか・・・仕方ないね。でも、それなら、ここに来るのも危ないんじゃ?」
「それは大丈夫です。城戸さんの食事係として、ここに来ました。」
「あ~そっか、ドリンクばっかり流し込まれても、
 責められっぱなしで、食事が出来なきゃ、そのうち餓死しちゃうもんね。」

芳華は、一度廊下に出て、床に借り置きしていた土鍋を持って、真司が拘束されているベッドに戻ってきた。蓋の空気穴から湯気が立っていて、如何にも熱々って感じだ。手足の自由が利かない状態で、どうやって食べろと言うのだろうか?こ~ゆ~時は、オニギリやサンドイッチなどの、食べやすい物が良いんじゃないのかな?

「なんで、よりによって土鍋?」
「す、すみません。でも、貴方に精力が付く物を食べさせろって、久遠さんの命令で・・・
 あの・・・申し訳ないと思いながらも、今は反発は出来ないので、スッポンのお雑炊を・・・」
「スッポン・・・ねぇ。トップの命令なら仕方が無いか。
 スッポンのオニギリやスッポンのサンドイッチを食わされるよりはマシだわな。
 ・・・でも、問題は、どうやって食うか・・・だな。」
「それは、心配しなくて良いです。その為の食事係ですからね。」
「・・・ん?」

芳華が土鍋の蓋を開けると、モワッと大きな湯気が上がった。生卵の乗った白ご飯のお雑炊ってところまでは、ごく普通のお雑炊なんだろうけど、所々に‘何かの肉’が混ざっている。おそらくそれが、スッポンの肉を細かくほぐした物なのだろう。芳華は、レンゲで雑炊の表面を掬って、「はい、どうぞ」と真司の口元に運ぶ。ニオイは悪くない。むしろ美味しそうなニオイだ。どうやら、ちゃんと‘人が食べられる物’を用意してくれたらしい。食事と言って、アマゾンが作った‘謎の汁’を無理矢理飲ませるイケメン狩り軍団よりは、かなりマシな待遇だ。真司は口を開けて、レンゲの中にあるスッポンの雑炊をパクリと食べる。

「熱っ!熱ちちちっ!」
「あっ!ごめんなさいっ!」

メッチャ熱かった。真司は、拘束されて自由の利かない手足でジタバタと暴れながら、口の中に入れてしまった高熱を、「はふはふ」と舌でかき回して、どうにか胃の中に送り込む。

「熱かったですか?」
「う、うん、チョットね」
「スミマセン、次は気を付けます。」

芳華は、次を掬うと、レンゲを自分の口元に運んで、ふぅ~ふぅ~とゆっくり吐息をかけて、雑炊を冷ましてくれる。
あれ?なんだろう?その仕草が、もの凄く愛おしい。典型的な‘可愛い女の子’‘女の子にやって欲しいこと’パターンじゃん。レンゲの上が少し冷めたと判断をした芳華は、熱さを確認する為に少しだけ自分の口に入れて確認して、「今度は大丈夫です」と言ってから、真司の口元に運ぶ。パクリと口の中に入れる真司。うん、おかげさまで、ちょうど良い温度だ。そしてスッポンの出汁が利いていて美味い。

「ありがとう。」
「いえ、どういたしまして」
「あ~~~~~~~~ん!」

状況に馴染んできた真司は、今度は大きな口を開けて、スッポンの雑炊を要求する。芳華は、「良かった」と呟き、ニコリと優しく微笑んで、次を掬って、雑炊が散らないように、丁寧に吐息をかけて冷ます。やっぱり、その仕草が、とっても愛おしく思える。

そう言えば、今まで真司の周りには、こんな‘普通の女の子’は居なかった。超肉食で乱暴者の元カノの美穂、♂を奴隷として扱うハナ達、可愛いんだけど女性らしさの欠片も無い紅葉、適齢期♂を青二才扱いして相手にしない麻由、色っぽいんだけどチェーンソーを振り回すことしか興味の無いギーコ、腹黒すぎる夕子リン、何故か貞子になった優衣。唯一ノーマルの女の子と言えば亜美が該当しそうだけど、何故か、彼女は、石松に一途に好意を持っちゃっているので恋愛の対象外。
だが、「芳華を普通に可愛い」と感じるほどに、真司には疑問が湧いてきた。

「ねぇ、芳華ちゃん?」
「はい、なんですか?」
「君が事件解決の為に潜入捜査をしてるってのは解るけどさ、
 こんなふうに、粗っぽい組織に潜り込むってのは、君の性格には合わないんじゃない?
 もしあんなラリパッパな連中に素性がバレたらどうなるか?
 もし♂共に捕まったらどうなるか?君だって解ってるんだろ?
 捜査をするにも、聞き込みとか、張り込みとか、もっと他に、やりようがあると思うんだけど。」
「そうですね、他にも捜査手段はあるのかもしれませんね。
 ですが、今回の潜入捜査は、梶君が立案した作戦なので・・・」
「ん?赤馬の作戦だから従うの?もしかして、アイツの方が階級が上とか、そんな理由?
 イヤなんだけど、上の命令には逆らえないって事?」
「・・・い、いえ、そうじゃなくて」
「だったらなんで?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「君みたいな賢そうな子が、どうして?」
「・・・・・・・・・・そ、それは、梶君を助けたいから。」
「同僚として、その気持ちは解るけど、ならもっと別の安全な・・・」
「ど、同僚だからではなく・・・梶君の心が離れるのが怖くて・・・。」
「・・・え?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「もしかして、君と赤馬って?」

真司の質問に対して、芳華は、スッカリ冷めたであろうレンゲに盛られた雑炊を土鍋に置いて手を休め、恥ずかしそうに俯いて小さく頷く。

「仕事帰りに2人でディナーをしたり、私に嫌なことがあった時はドライブに連れて行ってもらったり、
 OFFを合わせて一緒に遊びに行ったり、買い物に付き合ってもらったり、彼が私の部屋に遊びに来たり、
 ・・・明確な交際宣言はありませんし、職場内で同僚にチャカされたくないので内緒にしていますし、
 彼はあんな性格なので‘好きだ’とも言ってもらえませんが、私達は交際をしています。」
「そ、そっか・・・そうなんだ」

なんて事だ。やっと、リレー内では希少な、ノーマル女子に出会えたと思ったのに、芳華も亜美と一緒で先約有り。既に梶赤馬の専属キャラだった。可愛いし、お淑やかで女子力高めだし、セーラー服(潜入捜査の衣装)越しでは明確には解らないけど、乳は美穂よりはありそう(美穂>紅葉≧芳華くらい?)なのに、既に他人の所有物なんて、とっても残念だ。

「私は梶君と一緒に居る時が一番楽しくて、
 梶君も私と居ると、普段とは違う子供っぽい笑顔を見せてくれて、
 ずっと今のままで良いと思っていました。」
「・・・何かあったの?」

真司の質問に対して、芳華は、少し寂しそうに小さく頷く。

「梶君の妹の萌ちゃん。とっても仲が良くて、理想的な兄妹だと思っていました。
 可愛らしくて、いつも梶君とべったりで、2人の間には遠慮が無くて、
 私も梶君と、そんなふうになりたいんだけど、出来なくて、
 羨ましいんだけど、萌ちゃんは妹だから、親密度で勝てないのは当然かなって・・・
 萌ちゃんのことは、私から見ても、可愛い妹とか、頼れる友達って思えて、お気に入りだったんです。
 ・・・でも、知ってしまった。2人は血の繋がりは無かったんです。」
「・・・・・・・・・・・・え?そうなの?」

「遠慮が無くて、喧嘩しても直ぐ仲直りできて、意思が通じ合っていて・・・
 あんなに仲が良いのに、実の兄妹ではなかったんです。
 部外者の私が、そんな関係に、勝てるわけがありません。
 でも、萌ちゃんが恋敵と解っても、萌ちゃんのことも好きだから、憎むことが出来ない。
 どうすれば良いのか解りません。
 ・・・だから、今の私は、梶君の気持ちが離れないように、必死に着いていくことしか出来なくて
 ・・・ごめんなさい、こんな、解りにくい説明しかできなくて。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

芳華は、潤ませた目を手の甲で拭った後、「中断しちゃってゴメンナサイ」と言って、レンゲで雑炊を掬いなおし、丁寧に吐息をかけて熱を冷ます。真司は何も言葉を返せない。
あっちゃ~・・・どうやら、聞いてはいけないこと・・・と言うか面倒臭いことを聞いちまったっぽい。

そして、同時に真司は、作者②の魂胆を理解した。いきなり焔が再登場した時は、「なんで焔?」「まさか、SUTEKIメンバーの候補?」「それは無いだろ!」と思ったが、どうやら焔は、芳華を登場させる為の前座扱いらしい。作者は、ヒロイン不在の【2世】に、新ヒロインを登場させる気なのだ。
可愛くて、お淑やかで、常識的で、恥じらいがあって、乳は平らではなくて、主人公の相棒で、主人公のことが好きなんだけど、恋敵を憎むことも出来ないほど穏やかな性格。口癖は、「ごめんなさい」「スミマセン」「申し訳ありません」と、直ぐに謝るところかな?

「ねぇ、芳華ちゃん、念のために聞いとくけど、【愉快な仲間達】って作品の台本とかって貰ってる?」
「貰ってません、一体何のことですか?」
「あまりにもキャラ立ちしちゃうと、芳華ちゃんも、あっちに引き抜かれそうでね。
 ただでさえ、5枠目と6枠目は、まだ、やや曖昧な状況なんで、
 あまりにも突出したキャラが登場しちゃうと、
 歴史上の英雄がリストラされて、代わりにブラコン天才リケジョがメンバーに入ったり、
 主人公の親友を押し退けて、同じようなお淑やかな君が、メインキャラになりかねない。」

新規ヒロイン候補の一角として、芳華が存在感をアピールするのは良いんだけど、真司的には、数ヶ月後には、芳華まで【2世】からいなくなって、当たり前のように【愉快】に参加をしてるんじゃないかと、少し不安を感じるのであった。

「ねぇ、芳華ちゃん。もっと気楽に考えなよ。男は赤馬ばかりじゃないんだよ。
 無理して追っ掛けていても、そのうち苦しくなっちゃうよ。
 君らしく、無理をせずに・・・それで、赤馬と上手くいかないなら、
 もっと上手くいく、赤馬よりも君を大切にしてくれる人を探せば良いんだよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「君みたいな素敵な子なら、それが出来るだろうからさ・・・。」
「変なこと話しちゃって、余計な心配をさせてしまってごめんなさい。
 ・・・でも、ありがとうございます。城戸さんて、優しいんですね。」
「・・・はははははっ!」

芳華は雑炊を掬ったレンゲに吐息をかけて熱を冷まし、真司は照れ笑いを浮かべながら、芳華と反対側に、少しだけ身をよじらせる。
芳華の心が赤馬に向いてると知りつつも、真司と芳華の気持ちが僅かに繋がり始めたからなのだろうか?女子力の高い丁寧なふぅ~ふぅ~等々、希少価値の高い芳華の優しさが愛おしく思えるからだろうか?スッポン雑炊の所為?拘束されてるとはいえ、若い男女がラブホの一室に居るから?男ってヤツの肉体は、なんて正直なのだろうか?先ほど芳華に被せて貰ったバスタオルの下で、息子がムクムクと立ち上がり始めている。
こんなシーンで、しかも、ノーマルな芳華の前で、勃起なんでするわけにはいかない。しかし、焦れば焦るほど、キカンボウに意識が集中してしまう。もっと身をよじらせて隠したいんだけど、ベッドの四隅に手足が拘束されているので、腰のあたりが僅かによじれるのみ。しかも、腰だけジタバタした所為で、バスタオルで擦れちゃって、更に元気になる。

「どうしたんですか、城戸さん?もがいてたら、お雑炊が食べられませんよ。
 はい、あ~~んしてください。」

ご飯を食べさせて貰う「あ~ん」ではなく、別の「アァ~ン」になっちまいそうだ。つ~か、ぶっちゃけ、芳華との「アァ~ン」を妄想してしまう。あぁ、もうダメだ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」×2

真司の下半身にかけられたバスタオルが、立派に隆起をしている。レンゲを真司の口に運ぼうとした芳華は、何気なく横目で‘隆起’を見た後、2度見のガン見。慌てた真司が「見ないで!」と暴れた拍子に、バスタオルがハラリと落ちる。真司の元気なキカンボウと、芳華のご対面。
これが、美穂やハナなら、「美味しそう」と言って跨がってくるんだろうけど・・・ノーマルの芳華に、それは無い。芳華の表情が、徐々に引き攣っていく。

「きゃぁぁぁっっ~~~~~~~~~~~~~~~!!!城戸さんのヘンタイ!!」
「いや、あのっ!これはスッポンの所為で・・・・・・」

気が動転して、身の危険を感じた芳華は、咄嗟に身近にあった土鍋を真司の頭に叩き付けた!土鍋が割れて、熱々のスッポン雑炊が、真司の顔面に降りかかる!

「ぐわぁぁぁぁっっっっ!!!!」

痛くて熱くて、熱くて痛くて、痛くて熱くて、熱くて痛くて、しかも手足を拘束されているんで、スッポン雑炊を振り払うことすら出来ない。地獄である。

「あぁぁっっっ!ご、ごめんなさいっ!!」

我に返った芳華が、慌てて、真司の被ったスッポン雑炊を払い除けて、「ごめんなさい」を連発しながら、水で濡らしたタオルで、体を冷やしてくれる。あ~~~~、真司が粗相しちゃったってのに、スッゲー優しい。

おそらく、今までのヒロインが、同じ状況になった場合、
美穂&ハナ:勃起した時点で、強制放出プレイ再開。つ~か、勃起していなくても強制プレイ執行。
紅葉:土鍋の他に、イスだのテーブルを叩き付けられて放置。へたすりゃ、アカシックバスターのオマケ付き。
亜美:悲鳴を上げながら逃げていって終了。嫌われて絶縁決定。
麻由:「青臭い」と鼻で笑われる。
ギーコ:こんなシーンに発展しない。状況次第ではチェーンソーでチンポを切られる。
夕子:どんなに優しくされても、全てが腹黒いので、勃起に至らない。

だけど、芳華は違う。動揺しながらも、キチンと対応をしてくれた。やっぱ、女子力高い。今の騒動で真司の息子は眠りに就き、またバスタオルを掛けて隠してもらって、どうにか、落ち着いた。しかし、あんな羞恥な騒動の直後なんで、互いに妙に意識しちゃって、無言になってしまう。両者ともに、何を喋ったら良いのか解らない。

「お食事・・・台無しにしちゃって、スミマセンでした。」
「あぁ・・・うん、こっちこそ、ゴメン」
「じゃ、申し訳ありませんが、私、戻りますね」
「・・・う、うん」

芳華は、割れた土鍋を抱え、恥ずかしそうに俯いたまま立ち上がって、部屋から出て行ってしまう。・・・が、数秒後、部屋の扉が開いて、芳華が恥ずかしそうに顔を覗かせる。

「あ・・・あの・・・また来ても良いですか?」
「・・・え?」
「城戸さんとお話ししてると、チョット元気が湧いてきます。また、相談に乗ってもらっていいですか?」
「あ・・・あぁ・・・うん!俺で良ければ、いつでも相談に乗るよ」
「わがまま言ってごめんなさい!でも、ありがとうございます!」

芳華は、恥ずかしそうにハニカミつつ、できるだけ満面の笑顔を浮かべて会釈をして、部屋の扉を閉めた。
部屋に一人で残された真司は、驚いた表情をしつつも、嬉しそうな表情になる。なに、この展開?もしかして脈有り?励ましたりアドバイスしていて、気が付いたら、こっちに振り向いてるパターン?手足が拘束されてなかったら、芳華のことを抱きしめていたんじゃね?
いつもだと、このフラグの数行後には、女子の首が飛ぶんだけど、斬首魔は【愉快】に出張中で、手を出せない!

「やっべ~!干物にされっぱじゃなくて、芳華ちゃんの看護込み!?
 もしかして、俺が疲弊すればするほど、芳華ちゃんの看護が手厚くなる?
 なんだろう、これ?久しぶりに人として扱われてる気がする。芳華ちゃんに惚れちゃいそう。」



-愉快な仲間達の世界-

紅葉&亜美と一緒に下校中だった美穂が、ピクンと眉をしかめて空を見上げた。美穂は、しばらくは無言で空を眺めていたが、紅葉に「どぅしたのぉ?」と聞かれて、徐に口を開く。

「チィィ!スゲーイライラする!」
「んぁ?ミホ、生理?」
「チゲーよ!あんにゃろう、私がこっちに来て目を離した隙に、
 羽を伸ばしまくって、複数の女を抱きまくったり、新しい女を作ろうとしてやがるっ!
 ねぇ、あたし、久しぶりに阿呆共の首を刎ねたいから、あっちに戻って良いかな?」
「・・・んぁ?なんのこと?」
「美穂ちゃんが降板しちゃダメでしょ。結構、重要な役だよ。」
「亜美、今から、アタシのポジションになって!」
「美穂ちゃんのポジションなんて、私にはムリムリッ!
 ・・・というか、あっちの世界での、‘女子力の高い普通の女の子’ポジに新キャラが入りそうだから、
 私もあっちの世界に戻って、私のポジションを守りたいんだけど・・・。」
「アンタ、登場初期はともかく、カレーライス編辺りからは、
 ‘普通の女の子’ポジからは脱線したと思うんだけど。」
「えぇ!?マジで!?」
「ぅんぅん、フツーの女の子ぢゃないね。
 アミが、ブーちゃんにイライラした所為で、極楽浄土編が始まったみたいな感じだもんねぇ。」

今のところ、亜美&美穂が【愉快な仲間達】を降板する予定は無い。



-アトミック研究所・文架支所・宿舎-

与えられた畳部屋で、秀一郎が「見たいアニメ」の為にテレビを占領し、桃次郎は鼻くそをほじりながらエロ本を眺め、燕真は寝転がってジッと天井を見つめている。
ほんの数分前、燕真は、いつものニュータイプ的な直感で、真司に恋愛フラグが立ったことを知った。なるほど、焔のヒロイン2人を立てて、萌は桃次郎、芳華は真司とフラグが立って、同時に育て、赤馬争いに敗れた片方の女子、もしくは両方を、今後のヒロインとしてキャラ立ちを・・・・・・って、チョット待ってほしい。
おかしいだろう!真司がフラグ立てたのは、まぁ良いとして、なんでもう片方は桃次郎?この物語の発起人が燕真と真司で、2人ともイケメンで年相応な元気な男子なんだから、普通なら、燕真と真司が、一本ずつフラグを立てるってパターンじゃないのか?萌は、可愛いし、乳デカいし、頭良さそうだし、兄にベッタリすぎて多分生娘だし・・・カイゾー狂って部分を除けば、燕真が惚れても、不思議ではない女の子だ。なのになんで、燕真が萌にほのかな気持ちを抱くシーンが存在しない?なんでこの、お約束な展開から、自分が外されてるんだ?

理由は簡単である。【愉快な仲間達】側から、「燕真に恋愛フラグはダメ」という凄まじい呪いが発せられているからだ。・・・てか、燕真に恋愛フラグが立っちゃうと、紅葉が【愉快な仲間達】を放棄して、こっちに戻って来ちゃうので、【愉快な仲間達】が円滑に進んでいる間は、作者都合で、燕真に恋愛フラグは立たない。

・・・で、作者②はタイピングをしながら悩んでいた。
ヤバい、『新ヒロインの選抜』『赤馬と萌が、実は血の繋がりの無い兄妹だった』『赤馬を巡って芳華と萌が対立』の3点に舵を切りすぎてしまった結果、このストーリーの方向性が見えなくなった。
今まで、すちゃらかコメディー路線で続けてきたのに、今章は恋愛ストーリー?それは無いだろ?どうしよう、ここまで書いた三角関係をブン投げて、「萌も超肉食女だった」「真司が、目覚めた芳華に干物にされる」とか、「怪獣が出現して、萌も芳華も死んだ」とか、「何事も無かったかのように真司達が別の場所に移動して、何一つ解決せずに、ド底辺編終了」等々、そんな展開はマズいんだろうけど、続きの話をどうすれば良いのか解らない!!
 

紅葉と愉快な仲間達・バルたん編入作戦3章④

 投稿者:ゾルダⅢ世  投稿日:2018年 6月25日(月)11時42分35秒
返信・引用
  > No.957[元記事へ]

―紅葉の部屋―

アラームの音で醒めた瞬間に忘れちゃったが、とっても素敵な夢を見てたような気がした。忙しい土日を過ごして疲れてたのか、昨夜は帰って晩ごはん食って
風呂に入ったら、何もする気力が無くベッドにダウン。たっぷり寝たのと腹が減ったのとで、珍しくキチンと起きれた。チャチャっと身支度を済ませ、歯磨き
するべく部屋を出たら・・・・・・シ~ンと静まり返って人の気配がなく、朝ごはんの匂いもしない。ひょっとして、まだ夢の続き?それともママが寝坊?
照明さえ灯ってない居間兼キッチンで立ち尽くし、踵を返して両親の寝室を覗いてみたけど無人。こりゃ誰もいないやと確信しつつ「ママ~!?」と呼びながら
キッチンへ戻り、そこでテーブルの書置きに気がついて読んで「ちょ、まぢかぁぁ~~~っ!?」と叫んだ。


◎紅葉へ◎

話し忘れてたけど、日曜まで旅行してきます。パパも出張で、日曜に帰ります。
食費はキッチンの引き出しに入れておくから、計画的に使いなさい。

優麗祭の準備で忙しいだろうけど、これだけは守る事。

・早寝早起き・・・特に早起き。自力でキチンと起きる。
・遅刻しない。
・忘れ物しない。
・身だしなみに気をつける。
◎ハーゲンダッツを切らさないよう気をつける。
・レシートや領収書を持ち帰って、家計簿に記入する。
・出かける時は、戸締り・火の用心。
・門限は8時。
・勉強する・・・最低限、宿題は必ずやる(正答率85%以上)
・ちゃんと通院して、先生の言いつけを守る。
・バランス良い食事する。
◎ハーゲンダッツは1日2個まで。
・節電を心がける。
・アンプのボリュームに注意。
◎ハーゲンダッツの在庫に注意。食べたら必ず補充。
・居間は整理整頓。
・お風呂とトイレを、3日に1度は掃除する。
・キッチンは綺麗に使い、常に清潔に。
◎ハーゲンダッツは賞味期限が近い順に食べる。
・洗濯物を溜め込まない。
◎ハーゲンダッツは溜めれるだけ溜めておく。
・ゴミを分別して、決まった日に出す。
◎ハーゲンダッツはフレーバーで分別して、決まった場所に置く。
◎水曜に発売の、ハーゲンダッツ期間限定パンプキンを忘れずゲット!(最低5個)


書置きを手にプルプル震えて立ち尽くしてたら、枕元に置きっぱだったスマホの着信が聴こえた。誰からかなと思いながら部屋へ行ってモニターを眺めたら、
有紀からのメールである・・・・『成田空港なう。行ってきま~す』って短い文章と一緒に、ママ友と自撮りした画像が貼られてた。慌てて電話したけれど、
無機質な機械音声で≪おかけになった電話は、電源が入ってないか電波の届かない云々≫と告げられるばかり。暫くの間、クタ~っと絨毯に座り込んだ。

「ごはんと、ぉ弁当っ!」

何時もなら起きてテーブルに行ったら置かれてる物が、2つとも無い。モタモタしてる間にも、学校へ行く時間が迫る。相変わらずチャリに乗れないから、
時間を計算して早く出なきゃならないのに。そろそろ軟膏が無くなっちゃうから、明日には病院へ行かなきゃ。そう言えば、今日って燃えるゴミを出す日だ。
あれこれと考えてたら、危うくパニック寸前。落ち着いて、1つ1つ片づけてこう。まずは朝ごはんだ・・・4枚切りの食パン2枚をトースターに放り込み、
焼いてる間にトマトに塩かけて丸かじり。焼けたトーストにリンゴジャムを塗りたくって頬張ってモシャモシャ咀嚼し、マグカップに注いだ豆乳で胃に流し込む。
欲を言えばハムエッグ食べたいけど、作って食べてフライパン洗ってる時間が無いからパス。皿とスプーンとマグカップを、洗って拭いて食器棚へしまう。

「ぅゎ~、何にもねぇ・・・ってか、時間ねぇ。ぉ昼ゎ売店か食堂だなぁ」

まず、ごはんが炊けてない。それと「ぉかずゎ昨日の残りで」と思ったが、考えたら食い尽くしてた。食材はあるが、今からメニュー決めて作ってる時間が無い。
弁当は諦めた。歯磨きしながら家中を駆けずり回ってゴミ箱を巡り、燃えるゴミを集めて大きな袋に詰め、洗面所でうがいしetc.ようやく鞄とベースを背負って
ゴミ袋を持って、玄関を出ようとしたとこで「薬ぉ替ぇてなかったぁ~っ!!」と慌てて部屋へ戻って、新しいガーゼに軟膏を塗り広げ(以下略)。
「今度こそ出発だぁ~っ」と玄関を出てエレベーターに乗り、1階に降りたとこで部屋のサッシの鍵かけてないのに気がついて、「ゎぁぁぁ~~っ!!!」と絶叫
しながら戻ろうとしたら、寸前でエレベーターの扉が閉まって上に行っちゃったんで、数秒間「ぬぁぁぁ!」と悶絶してから、鞄とベースを背負ってゴミ袋を持った
まんまで階段を駆け上ったら、途中でゴミ袋が破れて階段に中身をブチ撒いた。

「・・・月曜の朝から、何この試練?」

ようやく全て終わらせたら、早くもクタクタである。演出としてアホ毛がダラ~ンとなり、顔色が青白くなって目が窪み、頬がゲッソリこけ、背中が年寄りみたいに
曲がり、制服はシワクチャになり・・・“砂漠で遭難した人”みたいに太い枝を杖にしてヨタヨタと力無い足取りで歩いて、亜美が待ってる鎮守の森公園の駐輪場へ
向かった。


☆ここでアバンタイトル終了~オープニングへ☆
『仮面ライダーゲンジたいそう第二』
仮面ライダーゲンジたいそう第二!! ぅぃ~~~~っす!!


―ビジネスホテルの一室―

ここ数年で最悪の朝が来た。酷い頭痛でグワングワンして目が回る・・・昨夜は澄子のペースに乗せられて、かなり飲んだ。大ジョッキ5杯目までは数えてたけど、
面倒くさくなって止めた。スマートを警察署の駐車場に停めっぱだけど、運転して帰るのは拙い。てゆ~か歩くのも大変。氷川にお姫様抱っこで運ばれて店を出て、
タクシーでホテルに帰って、どうにか部屋に戻ってからの記憶が無い。これが【ゾルダⅡ世】と言う話だったら『あちこちでゲロ吐いて、全裸で寝た挙句に寝小便。
テイクアウトされた氷川が、隣で干物化してる』ってとこだけど、この世界では大丈夫。吐かないし漏らさないし、ちゃんとパジャマを着て独りで寝てた。

「・・・・・・行かなきゃ・・・・」

持参した頭痛薬を飲んでシャワー浴びて身支度し、朝食バイキングに行った。食欲は皆無だけど、食べなきゃ動けなくて仕事に障る、お粥と温泉卵と冷奴を無理やり
胃袋に詰め込み、お茶とジュースをガブ飲みして終了・・・部屋へ戻って仕事道具を持って、重い身体に鞭打って出かける。フロントにキーを預けて駐車場へ行き、
車が警察署だったのを思い出して溜息を洩らす。隣のドラッグストアでソルマックとマルチビタミンのゼリーを買って飲んでから、徒歩で文架警察署へ向かった。


―優麗高―

「ずいぶんと奔放なママさんだねえ」
「クレハのお母さん、小学生の頃から時々こんな事あったよ」
「前からなの?」
「ぅん、年に1回か2回くらぃ・・・ァタシの自立心ぉ養ぅ修行だって、ぃきなり出かけちゃぅの」
「なかなか思い切った教育方針だな」
「そんな理由、ただの建前だょ。単にママが旅行したぃだけ」
「・・・・はあ」
「でも、このタィミングゎ参るなぁ~。こんな忙しぃ時に」

恒例で正門で待ち合わせてから体育館裏へ向かいながら、美穂は有紀の顔を思い出していた。紅葉が朝っぱらから元気ないんで、風邪でもひいたかと理由を尋ねたら
思わぬ答えが返ってきてビックリ。それとまあ、当たり前と言えば当たり前な事ばっかだけど、数々の≪誓約≫が凄い。これ全部、ちゃんと守って留守番するんだ?
普通に親と暮らしてる高校生って、こんな時は大変だな。自分は独りだから、自己責任で好きにしてるけど・・・ってゆ~か、どんだけハーゲンダッツLOVE?
紅葉がポケットに突っ込んできた書置きを読んだら、ある種の狂気さえ感じた。そんなこんな美穂が思ってる間に、体育館裏に到着して朝のミーティング開始。

「バルたん、頑張って謝罪してるみたぃだねぇ」
「羽里野山、損害どころか大儲けじゃん」
「だったら許してもらって、帰ってきてくれないかなあ」

他の生徒もネタにして騒いでたが、『昨日いきなり羽里野山ロープウェイとシャトルバスのボディに、地球のテクノロジーを超えた【動くイラスト】が描かれた』
って話で、世間が盛り上がってる。ネットにアップされた画像を見たら、バルたんの姿が描かれてた。土曜の夜に別れてから、何があったんだろう?
何はともあれ、羽里野山が大騒ぎ。朝っぱらからロープウェイとバス目当てに、県外からの観光客は言うまでもなく、羽里野山など今さら感ある地元民までが訪れて
行列を作っちゃってる。3人は「現物を見たいな」と思ったけれど、遅くとも正午までに行って並ばないと最終にさえ乗れないって話なんで諦めた。

「話は変わるけど紅葉さあ、つけられたり見張られたりって事ある?」
「ん~と・・・・・言ゎれてみれば」
「されたのかっ!?」

美穂がキッと険しい表情になって、紅葉に詰め寄った。

「正門からここ来るまで、4人の知らなぃ男子にガン見されたっ」
「・・・・・・・・そ~ゆ~のじゃねえよ・・・・・」
「ぃきなり知らなぃォッサンから『芸能界に興味ない?』って言ゎれる事ぁる!」
「心配した時間を返せ・・・・ここ2日くらいの間にだよ」

どうやら、質問の意味合いを理解してもらえてないらしい。美穂は一転して「あいたたた」となってコメカミを揉みほぐし、それを「ヮケゎかんね」って感じで
紅葉が眺めて首を傾げてる。察した亜美が、堪らず助け舟。

「あのねクレハ・・・ミホちゃんは『バルたんがゲンジとファムの事を科特隊に話してないか?
 最悪、尋問で無理やり白状させられたんじゃないか?』って心配してるの。
 内緒なんでしょ、ゲンジとファムになって戦ってる事って?科特隊にバレたら、ダメでしょ?」
「ぁ、そ~ゅ~話か・・・・だったら平気」
「根拠は?」
「勘っ!!」
「勘かよっ!?」
「それにバルたんが、ァタシ達の事ペラペラ話すなんて無ぃもんっ」
「・・・そんな能天気で、大丈夫かあ?」
「でもまあ、クレハの直感は信じていいんじゃないの?
 それと言い方が失礼だけど、バルたんて見た感じよりシッカリ者だし」
「まあ、確かに」

こんなに楽観的で大丈夫かなと心配になるけど、亜美の意見は一理ある。紅葉の勘とバルたんを信じよう・・・始業時間が迫ったんで、ミーティング終了。
3人は仮設校舎へ戻り、それぞれの教室へ入った。


―2年A組―

苛々する・・・主に主演の風谷真魚がNG連発する所為で、思ったように『オズの魔法使い』のリハーサルが進まない。頻繁に口にする“白鳥の騎士様”って、
誰の事なんだろうと、堪りかねて訊いてみたら「遠足で誘拐された時に助けてくれた謎の人」だとか。白鳥を連想する優雅なデザインのマスクと鎧とマントで
素顔を隠した、それはそれは素敵な方らしい。なるほど、命の恩人に恋してしまったのか。思春期女子だから、仕方がないと言えば仕方がないけど、麻由から
してみれば『精魂込めて企画した出し物の成功を、間接的に邪魔する存在』だ。

「恋愛しちゃダメとは言わないけど、今は優麗祭に集中してくれないかしら」
「うん、ごめんなさい。頑張る」

そんなやり取りしてから数日は収まってたんだけども、土曜の夜の騒動で真魚の病が再発してしまった。演劇部が頑張ってるし、演劇やるクラスはA組だけじゃない。
演劇以外にも、コーラス部と吹奏楽部と軽音部が体育館でリハーサルしたがってる。かなりワガママ言ってA組のリハーサル時間を確保したのに、昨日は散々だった。
ネットに真魚の言う“白鳥の騎士様”の画像や映像が出回ってると耳にしたんで、興味湧いて画像検索してみる。

「勇ましいのは認めるけど・・・言うほど優雅で素敵な人かしら?」

しかも拡散した某民放のニュース映像に入ってた声を聴いたら、どうやら正体が若い女性らしい。それとなく真魚に話したら知ってた。知った上で熱を上げてた。
「風谷さんは同性愛者だったの?」とビックリである。まあ、他人の恋愛に口を挟む気は無いけど。それ言っちゃったら自分など、同性愛より特殊かも知れない。
それより“白鳥の騎士”に対して湧いてくる負の感情は何だろう?麻由はおバカさんではないから『彼女が未確認生物と戦って、この街を護ってくれた』って事は
理解してる・・・だがムカつく。それも、理屈でなく本能でムカついてる。何故だろう?

(何よ、あの宇宙人娘。どんな媚び方して、これだけ受け入れられてんの?
 ひょっとして、日本中が集団催眠にでもかけられてんじゃないの?私は騙されないんだから)

苦労して企画した遠足を無茶苦茶にしてくれた宇宙人娘が、色々と評判いい・・・科特隊や警察は、何を考えているのか?一緒に戦ってくれたからと好意的に
思ってるようだが、罠じゃないのか?『未確認生物とグルだった』って発想は湧かないのか?それと鼻の下を伸ばして羽里野山を訪れて、テレビカメラに満面の
笑顔でピースしてるバカ共に対しても「何なのアレ」と怒りや嘲りの感情が湧く。結局のとこ、可愛けりゃ誰でもいいのか?

(あのケガなのに、まだ諦めてないみたい)

もう1つ心配なのは、紅葉の動向。既に『ベース担いで駅前商店街の貸しスタジオに入ってた』って情報を掴んでる。【生徒会ネットワーク】の情報収集力は、
伊達じゃないのだ。いちおう断っとくが、この場合の“伊達”は、言葉通りの意味で、筋肉質でフンドシで獣臭い珍獣の事ではない。それは置いといて・・・
C組の生徒から聞いた話だと、源川紅葉と平山亜美と霧島美穂と秘密の人物で『優麗祭でライブやる』と企んでるらしい。他でもない霧島美穂が、自ら宣言した。
彼女達にライブやる許可を出してなんかいない。いわゆる【ゲリラライブ】って奴だ。それにしても“火の玉娘”と“やさぐれ留年生”なら、無茶な企みするのも
納得だが、優等生の平山亜美までノリノリとは何事か?口八丁で騙されて、乗せられてるのか?借金でもしてるのか?それとも弱みでも握られてるのか?
それから、ボーカル担当するらしい“秘密の人物”は誰だろう?優麗高の生徒なのか?もちろん麻由は『彼女達なりの考えで、優麗祭を盛り上げようとしてる』って
事は解っている。解ってるけど嫌なのだ。

(いちおう釘を刺しとかなきゃ。どうしようかな?・・・・・・・そうだっ)

何事か閃いたらしい麻由は、クールに「フッ」っと微笑む。そんなタイミングで始業のベルが鳴って担任が教室へ来て、日直の司会で朝の朝礼が開始された。
今日の日直は悲惨である。主に麻由の影響で優等生で落ち着いた生徒が多いA組だけど、さすがに土曜の夜の事件には興味津々。それなり頭を捻って朝礼で話すに
相応しそうなテーマを決めて懸命に話してんだけど、誰も聞いてないし若干ザワついてるし・・・堪りかねた麻由が注意して、ようやく静かになった。


―放課後―

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・参ったね」
「え~と、今の貯金が確か・・・・キーボード買うには足りないな。
 いっそ生徒会に申請して、正式な出し物としてやってみたら?」
「無理・・・体育館ゎ、スケヂュールぎっちぎち」

放課後に優麗祭の準備を進めてから、紅葉・亜美・美穂は昨日のスタジオへ向かってた。だが、足取りが重くて口数が少ない。B組の企画は、実に順調。
C組の展示物製作も、問題なく進んでる。3人が悩んでるのは他でもない、ライブ本番での事だった・・・

昼休みに遡る。

午前中の修行から束の間の解放をされた生徒達は、それぞれにランチタイムをエンジョイしていた。弁当を持ってこれなかった紅葉は、4限目が終わると
同時に売店へダッシュ。見事に1番乗りを果たして、焼きそばパン・カレーパン・ホットドッグ・チョココロネの【人気パン四天王】をゲットして凱旋。
亜美と机を並べてたら、ちょっと遅れて売店から戻った美穂がB組を訪れた。賑やかに喋くりながら食べる3人。スピーカーから流れる、昼の放送。

♪若くあかるい歌声に~ 雪崩は消える花も咲く~
♪青い山脈 雪割桜~

ちなみに今日は、生徒会長のジジイ趣味・・・じゃない発案で【戦後日本の復興期に想いを馳せよう】ってテーマである。MC担当が「如何にして立ち直って
高度経済成長を果たしたか」なんて話をし、合間に流れる音楽は『東京ブギウギ』や『青い山脈』と言う、今時の高校生からしてみりゃ化石の如き歌謡曲。
皆たいして興味も湧かず軽く聞き流してた。すると不意に放送が中断されて、当の麻由の声がした。いきなり何だろう?と、生徒達は会話を中断して、耳を傾ける。
そして麻由が『生徒会から皆さんへお知らせです』と切り出した内容は・・・・


◎本日より無期限に、体育館のピアノは授業や催し物関係者以外の無断使用を禁じます◎

・ピアノの使用は、式典やイベントの時のみ。使用しない時は、蓋を閉めて施錠します。
・使用希望者は、先生もしくは生徒会の許可を得て、立会いの下に使用して下さい。
・使用希望者は、あらかじめ先生もしくは生徒会へ申し出て、所定の手続きをして下さい。

ピアノは非常に高価で、メンテナンスが大変な楽器です。予期せぬトラブルで使えなくなる事態を防ぐ為、ご協力をお願いします。


やられた・・・優麗祭当日は、ドサクサ紛れで各自担当の楽器を持ち込み、亜美は体育館のピアノを拝借してライブを強行するつもりだったのにダメじゃん。
それに亜美とバルたんはともかく、紅葉と美穂はド素人。亜美がピアノを弾く手段を封じられちゃったら、もうどうにもならん。どんだけバルたんの歌声が
素晴らしくても、支える演奏が亜美抜きじゃ目も当てられまい。ブーイングと「帰れコール」浴びてる光景しか浮かばない。そもそも、優麗祭までにバルたんが
帰って来れる保証も無いし・・・ダメだ詰んだ。全く成す術なし・完全お手上げ・白旗揚げて降参である。

「ここまで来たなら、練習ゎ続けょぅょ・・・・
 最悪、優麗祭ぢゃなくてもぃぃぢゃん。いつか機会っくって発表しょぅょ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「てか、バルたんが優麗祭までに帰ってこれるか解らなぃし」
「・・・・・・・・う~ん」
「確かに」
「でも練習ゎ続けょ!ァタシ達は、バルたんが帰って来た時の居場所になろぅ!」
「・・・・そうだね」
「うん、練習はしよう」

紅葉の意見で、2人は幾らか気分を持ち直した。紅葉本人も、自分で自分を励ましてるかのようだった。どっちにしろスタジオの予約をしてるから、
今からキャンセルしたら料金が発生するし。どうせ払うなら、使って払った方がマシだ。ちょっぴりだけど足取りが軽くなった3人は、多少は口数が少ない
ながらもスタジオへ向かって歩き出す。
 

紅葉と愉快な仲間達・バルたん編入作戦3章③

 投稿者:ゾルダⅢ世  投稿日:2018年 6月19日(火)21時30分42秒
返信・引用
  ―羽里野山へ向かう道―

夕暮れの道を、科特隊専用車が走ってる。ハヤタがハンドルを握り、助手席にフジ。後部座席にバルたんと社長と専務・・・緊急会議でバルたんの提案が
受け入れられ、これからロープウェイをペイントするべく出かけるところだった。大人しく乗ってたバルたんが、時々チラッと後ろを気にして振り返る。

「どうかしたかい?」
「つけられてるばる~」
「何っ!?」

ハヤタの表情が、キッと険しくなった。科特隊専用車を尾行するとは、何処の何者か?もしや、地球征服を企む宇宙人か?ルームミラーを凝視したら、小さな
乗用車が一定の距離を保って走ってる。距離がある上に薄暗いんで、運転者の顔どころか車種も解らない。

「昨夜、火車に掴まってた女記者さんばる」
「・・・あの人か」
「ここから見えるの?」
「視力600ばる~」
「ええ~~~っ!?」
「ちなみに1時間くらい前から、会社を張り込んでたばる」
「ふむ・・・・念の為だが、宇宙人が化けてると言う事は?」
「だったら波長で解るばる。大丈夫ばる~」
「そうか」
「昨日あんな目に遭ったとこなのに・・・仕事熱心な人ねえ」

確かOREジャーナルの桃井と言ったか、おそらく取材でつけ回してるのだろう。とりあえず害は無さそうだけど、秘密にしておきたい事が少なからずある。
さて、どう対応したもんだろうか?ウルトラセブン以降の防衛チームが所有する車だと、武装してたり最高速度が凄かったりするんだけど、科特隊専用車は
昔のアメ車にステッカー貼っただけの代物なんで振り切るのは難しい・・・そもそも振り切ったところで、こちらが羽里野山へ向かう事など予測済みだろう。


―貸しスタジオ―

火車の騒動の名残で渋滞してるかと思って早目のバスに乗ったけど、予想よりスンナリと着いてしまった。終点の文架駅で降り、美穂の案内で商店街を抜けた先の
ボロい雑居ビルに到着。狭い階段を昇ってドアを開けたらスタジオだった。ロビーは禁煙じゃないんで、ドア開けた途端にムッとするような紫煙の香り。ゴミ箱は
ビールの空き缶で溢れてる。掲示板にバンドメンバー募集やライブの告知が、所狭しと貼られてる。壁には大きなイベントの告知やタトゥースタジオのポスター。
紅葉と美穂はともかく、亜美は退廃的なムードに飲まれて早くもドン引きだ。まだ予約の部屋が先客で塞がってるけど、とりあえず受付だけ済ませてロビーで待つ。

「いいのかなあ・・・こんなとこ出入りしてたら、親や先生に叱られそう」
「でも音楽室ゎ自由に使ぇなぃし、他に揃って音が出せる場所なぃぢゃん?」
「律も練習が大詰めでスタジオ通ってるから、もう家に御邪魔できないんだよ・・・
 スタジオ来ないと、ドラムに触れないからなあ。
 あと、ここが1番料金が安いし・・・今日から本番まで、毎日ここで練習だからね」
「・・・・そっかぁ・・・」

大都市と違って、そう何件も貸しスタジオなんてモノがある地じゃない。ジャンルに関係なく文架市で音楽を嗜む者が集まる場所なんで、割と引っ切り無しで人が
出入りしてロビーが賑わってる・・・文化祭シーズンだからか、よその学校の軽音部らしき集団。別のベンチには、顔つきは知的で大人しいけど鋲付き革ジャンや
膝に穴の開いたジーンズ等のアイテムでイカレた雰囲気を醸してる3人の男・・・1番大人しそうな男の右腕には、西洋風の甲冑に身を包んで斧を持った白虎の
タトゥーが彫られてた。

「あっ、デストワイルダーだっ!」
「ん?・・・・やあ、久しぶり」

美穂が嬉しそうに声をかけ、近寄って「うぇ~い」とハイタッチしたり拳と拳をコツンと合わせたりしてから、楽しそうに喋りだす。

「美穂ちゃんだっけね」
「Hideさん、憶えててくれたんですか~っ?」
「いっぺん会うと、頭に入っちゃうんだ」

いちおう断っておく・・・何処かで見たような3人組だけども、単に『デストワイルダー』って名前の響きがハードロックバンドっぽいし、3人組ってのは
ギター・ベース・ドラムの3人編成バンドって設定として使いやすいから出してみただけだ。ただの行稼ぎエキストラだから、奴等が今後『ストーリーに絡む
重要なゲストになる』なんて予定は無い。まして敵味方関係なく変身要員になるなんて奇蹟は、間違っても起こらん。

「ミホちゃん・・・何処で遊んで、どんな交友関係してんの?」
「ぁのナルトの端っこみたぃな人、カッチョぃぃタトゥー入れてるねぇ」

あっけらかんとしてる紅葉と反比例で、亜美のコメカミを一筋の冷汗が流れ落ちる。

「・・クレハの付ける仇名のセンス、長い付き合いだけど良く解んない・・」
「そぅ?」
「ってかタトゥーだよ・・・・センス良し悪し以前の問題だと思うけどなあ」
「スーパー銭湯で、入場ぉ断りされちゃぅね~」
「いやいやいやっ!もっと色々と、人生に支障あるでしょうよ!就職とか・・・
 売れて音楽で食べれるようになれば良いけどさ、ダメだったらどうするのかな?」
「さぁ・・・・どぅにかなるんぢゃね」

怖いもの知らずで好奇心旺盛な紅葉はニコニコしながら眺め、2人に気付いたデストワイルダーの面々が「あの子、友達?」「可愛いじゃん」「ど~もね」なんて
声かけられたら、サムズアップで「ちぃ~っすぅ~っ!!」と応じてるが、亜美はドン引きで頬を引きつらせてペコっと会釈するのが精一杯。人見知りってゆ~か、
身近にあんな人種が存在しないんで単純に怖い。気を紛らわせるのに、奥の方を眺める。狭い廊下の左右に防音扉が幾つか並んでるんだけど、ここは安普請らしい。
それぞれの部屋で演奏してる曲がゴチャ混ぜになった音が、僅かだけど漏れ聴こえてくる。ちゃんとしたスタジオなら、こんな事はあるまい。自分の演奏がダダ洩れ
かと思うと、コッ恥ずかしくなった・・・そんなこんなしてる間に、予約の部屋が空いた。亜美がレンタルしたキーボードを受け取って、3人は部屋へ入る。

「へぇ~、こんなんなってんだ」
「おもろ~ぃっ!」
「じゃ、さっそく始めようか」

何やかんや言って、スタジオに入ったらテンションが上がってくる。まるでプロのミュージシャンにでもなったような気分だ。物珍しげに部屋を眺め廻してた3人
だったけど、眺めてる間にも時間は過ぎる。我に返り、ケーブル繋いだり弦の調律したり、それぞれの楽器のセッティングを開始。

「このァンプちっちゃ・・・ボリューム絞らなぃと、壊れちゃぅな」
「最近のキーボードって凄いなあ。ピアノと違和感ないや」
「ん~?・・・音に張りが無いような・・・このネジで調整だっけ?」

数分後に全て完了し、3人の中で音感が1番の亜美が主導で練習を始めた・・・ボーカル不在で演奏だけするってのは、どうも勝手が違ってやりにくい。
でもまあ本番が1週間後に迫ってるし、バルたんが戻って来た時に少しでも成長してるのを見てもらいたい。ここが踏ん張りどころである。


―羽里野山ロープウェイ麓駅―

特別に許可を受けた科特隊専用車が山道を走ってきて、麓駅駐車場の片隅に停まった。乗ってきた5人が次々と降りて、光る両目をサーチライト代わりにした
バルたんを先頭に駅舎へ歩く・・・「バルたんの両目が光るなんて、聞いてないぞ」だって?バカモノ!怪獣や宇宙人の目が夜に光るのは、円谷プロ作品なら
常識じゃないか。わざわざ描写するまでも無い事だと思ったから、今まで書かなかったんだいっ!!書き忘れなんかじゃないぞうっ!!

「女記者さんは?」
「途中で帰っちゃったばる~」

駐車場から先の道は、シャトルバス専用で一般車の乗り入れ禁止。OREジャーナルの女性記者は、さすがに諦めたのか追って来なかった。駅舎へ入った社長が
照明のスイッチを入れ、営業時間を終えて真っ暗闇に包まれてた駅舎が煌々と照らされる。バルたんは、さっそく作業を開始した。昼間の如く巨大円盤を召喚し、
フワフワ飛んでってエアブラシっぽい道具を持って戻ると、改札口を通ってホームに停まってるロープウェイの傍らに立って眺め、やがて何を書くか決めたらしくて
エアブラシ(?)を巧みに使ってペイントを始めた・・・この調子で問題をクリアして、早く3人と再会する。


―貸しスタジオ―

「ストップ!紅葉また間違えたっ!」
「そ~ゅ~ミホだって、テンポ変ぢゃね?」
「止めなさいって!私から見りゃ、どっちもどっちよ!」

始めて30分くらい経ったら、場が何だか険悪な雰囲気になっちゃってた。紅葉はベースの太い弦を押さえ続けてるんで、左の指先がヒリヒリ痛い。そのうち皮が
厚くなって慣れるけど、初心者の誰もが通る道である。そして左腕の打撲もまだ痛む。「ちょっと休ませて」と言えば済む話なのに、意地っ張りな性格が邪魔して
言い出せなくてミスを連発する。それが美穂には「物覚えが悪い」と映ってしまう。美穂は美穂で、体力には自信ある方だが、さすがに30分も叩き続けたら疲れた。
「ちょっと休もうよ」と言えば済む話だけど、意地っ張りな性格が邪魔して言い出せなくて、結果ミスを連発。それが紅葉には「物覚えが悪い」と映ってしまう。
ピアノ歴あって音感が優れてる亜美も、立ちっぱなしで慣れないキーボードを弾き続けたんでクタクタ。紅葉と美穂は気がついてないようだけど、「あ、いけね」と
舌を出してしまう事が何回かあった・・・・そのうち堪りかねた亜美が「ちょっと休む?」と提案したのを幸い、思い思いの場所に座り込んで「ふう」と一息吐く。
亜美は無意識に左手の指をグーパーしたり擦ったりしてる紅葉を眺め、続いてベースギターを眺めてから訊ねてみた。

「クレハ、ひょっとして指が痛いの?」
「ん・・・ちょっとね」
「それでかあ・・・そ~ゆ~事は、素直に言えよな」
「ぅん」
「打撲の薬、ちゃんと貼り換えてる?」
「ぁ、ぃけねっ!」

出がけにママから注意されて持ってきた軟膏とガーゼを出す。包帯を解いて剥がしたら、乾いてカピカピになっちゃってた。慣れた手つきで新しいガーゼに軟膏を塗って
貼りつけ、包帯を巻く。亜美が「指先に巻いてみたら?」と小さい絆創膏くれたんで、礼を言って受け取って指先に巻いてみた。これなら痛みが紛れて練習できるかなと
ベースを持って弦を押さえ、首を傾げて「ちょっとピンと来ません」みたいな表情してから絆創膏を剥がしてしまう。

「ダメだった?」
「・・・何かチョット感覚が解りにくぃ」
「でも、そのままだと痛いんだろ?」
「ぅ~ん・・・素手で押さぇなぃとダメっぽぃ。痛ぃけど頑張る」
「あんまり無理しちゃダメだよ」
「ぅん、ぁりがと」

その隣では汗だくの美穂が、汚れた床なのにも構わず大の字に寝転がっちゃって「ゼェゼェ」と荒い呼吸してた・・・あ~あ~あ~、髪や服が埃だらけになってら。
女の子でしょうよ、少しは気を遣いなさいよ。

「大丈夫?疲れちゃったの?」
「正直しんどい・・・・『休んでたら、お金が勿体ないな~』と思って、つい我慢しちゃった」
「気持ちゎ解るけど、それぢゃ練習になんなくね?」
「・・・・そうだね」

10分ほど小休止したら、だいぶ身体が楽になった。誰からともなく立ち上がり、亜美が手書きの楽譜を出して「ここは、こうだね」と2人にアドバイスしてから
練習再開・・・その後は適度に休憩を挟みながら練習し、やがて予約してた2時間が迫ったんで切り上げて、スタジオを後にする。外に出たら、ドッと疲れた。
通りすがりのコンビニでレッドブルを買い、店頭で飲みながらトークに耽る。傍目には、いっぱしのバンド少女達に見える光景だった。

「行こうか」
「ぅんっ!」

紅葉が住むマンションから直で来ちゃったんで、美穂が駐輪場に原チャリを停めっぱなし。亜美は徒歩だけど、どっちにしろ帰る方向が同じ。3人は文架駅前の
バスターミナルまで、店を通るたびに「あのスニーカーいいね」とか「帽子が欲しい」とかピーチクピーチク賑やかに喋くりしながら歩いていくのだった。


―とある焼き肉屋―

「ほらほら遠慮しないでっ!ガンガン行っちゃってっ!」
「いや、私は仕事中で・・・」
「グタグタうるさいっ!貴女の身体は、仕事で出来てんのっ!?
 たまにゃ全て忘れて、食って飲んでプワ~っと発散しなさいっ!!・・・生おかわりっ!!」
「・・・何で、こうなってんの?」

テーブルを挟んだ反対側に座った小沢澄子が、時たまシャックリしながら「食え」「飲め」と令子に勧めてくる。既に大ジョッキ4杯を空けていて、顔が真っ赤っ赤だ。
断ろうもんなら、IQ180の頭脳と豊富なボキャブラリーと巧みな話術で、グウの音も出なくなるまで理詰めで捲し立てられる。向かいや隣に座ってる氷川と尾室は、
時たま目が合うと「すいませんねえ」って顔して眺めるばかり。せっかく焼けた肉が炭と化すのも勿体ないんで、令子はヤケクソで食ってビールで胃に流し込む。

2時間ばかり遡って・・・・

会社を小1時間ばかり張り込んでたら、夕暮れ近くになってから人目を憚るように、隊員や社長と一緒にバルたんが出てきて科特隊専用車に乗り込むのを見た。
「よしっ!」っと歓喜して尾行した令子だったが、麓の駐車場まで来たところで途方に暮れてしまった。先の道が鍵付きの鉄扉で塞がれて進めなくなっていて
【バス専用路につき、一般車通行止め】と書かれた看板が置かれてる。無理やり行けない事も無いけれど、かなりキビシイ。

「う~ん・・・歩いてったら、1時間はかかるかな?途中で擦れ違ったりしたら最悪よね」

行き先の見当はついてるが、向かう手段が無い。それと最近は、あんまり度が過ぎる取材しちゃうと世間が煩い。『取材の為なら、何しても許されるのか』だの
『特権階級のつもりかマスゴミめ』だのと、直ぐに抗議の電話やメールが殺到したり、某巨大掲示板で叩かれたりするのだ・・・自分とした事が、何と迂闊な。
夢中になり過ぎて、つい後先考えずに動いてしまった、これじゃ“本来の世界へ帰ってったバカ”と同じではないか。暫し悩んだ末に、バルたんへの取材を諦める。
どうやら今日は、ツキに見放されてるらしい。だが転んでタダで起きるのは癪に障る。ホテルへ戻るついでに文架警察署へ寄って、G3チームに会ってみる事にした。

「あら、昨日の勇敢な記者さん!?いらっしゃぁ~いっ!!」
「・・・・・え?」
「これから晩ごはんっ!!一緒に行きましょっ!!」
「ちょっ・・・・」

30分ほど車を走らせて文架警察署に到着し、G3チームの居所を尋ねたら「休暇だけど、たぶん寮だ」と言われ、隣接してる職員寮へ行ったら会えた・・・
までは良かったけど、主任の小沢澄子に近寄ったら酒臭い。そしてドンヨリした目で令子を一瞥するなり、パアっと明るい顔で手を引っ張られた。氷川と尾室が
慌てて追いかける。

「小沢さんっ!また焼肉ですか!?」
「決まってるでしょっ!!」
「昼も食べたじゃないですか!」
「昼は昼!夜は夜よっ!」
「さっきまで『飲み過ぎて気分悪い』って寝てたのに」
「迎え酒よっ!!文句あるっ!!?」
「あの、私はは取材を・・・・・」
「だから、食べながら話しましょうよっ!!」

焼肉に憑りつかれた澄子は小柄な身体に合わない怪力で令子を引っ張り、近所の焼き肉屋まで連れてった。そして席に座るなり、皆の意見を聞かずメニューも見ずに
「大ジョッキ4つ!!急いで!!」と厨房に向かって怒鳴り、慌てて持ってきた店員にカルビだタン塩だモツだと注文しながら1杯目を瞬殺して「大ジョッキ!」と
追加注文。すっかり澄子のペースに乗せられた令子は、「ほらほら、グッと空けちゃって!」と煽られるままに飲み干したけど、空きっ腹にビールはキツかった。
一瞬で頭がポワポワして取材どころじゃなくなってしまい・・・そして今に至る。

「あら、良い飲みっぷりね!はい次っ!」
「ふぅ~・・・・・もう、どうにでもな~れっ!!」


―本陣町の、とあるアパート―

広院町と陽快町に挟まれた、昔ながらの住宅街である。“ベースになった別世界の設定”だと、かなり古くからあるらしいけども、今ここで由来や歴史を
クドクド書いたところで、これっきり出てくる機会も無さそうだから面倒くさいんで書かない・・・そんな本陣町に、ボロッちいアパートが建っている。
その一室に、たびたび登場しやがる謎の青年が居た。どうやら、彼が暮らしてる部屋らしい。物を置かない性格なのか単に金が無いからかは知らないが、
部屋そのものはスッキリと片付いてる。目を惹くのは、HNK朝ドラ『ぴよっこ』の芦村架純のポスターくらいだろうか。

「・・・・・・・・・・・・・・・ヒマだ・・・・・」

ちなみに、ちょっと前までは同じく朝ドラ『あんまちゃん』主演でブレイクした透明感がウリな女優のポスターを貼ってたが、彼女は所属事務所と揉めて社長を
惨殺。その顔の皮を剥いで作ったマスクを被って、チェーンソーを凶器に社員を片っ端から虐殺。人肉料理を作っては食い散らかし・・・間違えた・・・
所属事務所と揉めて、強引に独立して自分の会社を設立。『なん』だか何だったか改名してワケ解んない事になっちゃったんで、芦村架純に鞍替えした。

「・・・・つ~か俺の扱い、何時までこんなだ?」

待機命令が解除され、今日は日曜で定休日。昨夜は「閻魔GEARを忘れて出かけた」と言う理由で延々と仕置きを喰らい続け、顔ギリギリで屁をこかれ、
最後の〆で味付け無しの目玉焼きをオカズに朝メシを食わされ・・・散々な目に遭って解放され、アパートに帰るなりベッドにブッ倒れて昼に起きた。
やる事ないんでTUTOYAで『ぴよっこ』を全巻レンタルして、コンビニ弁当を食ってレモンサワー飲みながら一気見。ふと気がついたら夜だった。
『ぴよっこ』は面白いし芦村架純は可愛らしいが、何だか不毛な時を過ごして休日が終わっちゃった気がして虚しい。また明日から退屈な1週間が始まるのかと
思うと憂鬱になってくる。

「・・・メシ食お」

青年は誰に言うでもなく呟くと、億劫そうに立ち上がってスリッパを突っかけ、徒歩3分の常連にしてる食堂へ行く。安いけど味は2の次なボロっちい食堂で、
焼き鮭定食を注文した。おっさん達が野球中継を観ながらビール飲んで騒いでんのが鬱陶しかったんで、ロクに味わいもせずチャチャっと食い終わって勘定し、
逃げるように店を後にする・・・腹が満たされたが、虚しさは消えない。ヒロインズは充実した日々を送ったり恋愛フラグ立ったりしてる上に、火車を撃破する
大活躍だってのに、俺と来たら何をしてるのか。これから先も、こんな感じで話に関わるのか。てゆ~か、関わってさえいない。
 

紅葉と愉快な仲間達・バルたん編入作戦3章②

 投稿者:ゾルダⅢ世  投稿日:2018年 6月14日(木)15時49分47秒
返信・引用
  ―こんな夢を見た(軽~く脚色)―

地元商店街に似た通りをを抜けたら、地元駅に似た駅に着いた。何故か路面電車みたいな小さい車両が走ってる。駅と駅の間も、妙に短い・・・
俺は電車に乗らず、線路沿いを歩く。すると踏切を通過するたびに、戦隊のブルーや青系ウルトラマンが合流してくる。気がつきゃ青だらけだ。
ハリケンブルーやマジブルーみたいな女性キャラが加われば華があるが、何故かアオレンジャーとかクワガライジャーとか男のキャラばかり。
俺は、とある小さな一軒家に入った。戦隊ブルーの群れも入って来る。ウルトラマンコスモスが窓から首を突っ込む。ギチギチになってしまった。
すると天の助け・・・ジャスミンとウメコが登場。場が華やかになって、俺はホッとした。2人は魅力的な笑顔で、俺に何やら話しかけてくる

「〇×△√・・・」
「ωγαφ・・・」
「なるほど、そうだったのか」

何を言われてたかは醒めた瞬間に忘れたけど納得した。とある作戦を遂行する為に、青ヒーロー達を片っ端から集めたらしい。暑苦しいけど、平和の
為なら仕方ない。それとドサクサ紛れにウメコのナマ脚を撫でまくっちゃったから、一連のワケ解らん出来事は良しとしよう。すると・・・

「逃げろっ!!」×たくさん

青ヒーロー達が、揃って逃げ出した。何が起きたか知らんけど、俺も一緒に逃げる。商店街を突っ走ってたら、不意に「こっちだっ!」と呼ばれた。
一緒に逃げた何人かが、映画のポスターの中に潜んでる。俺もペッタンコになってポスターと同化して、逃げたメンツと一緒に息を潜める。
やがて追手が来た・・・初代キレンジャーの中の人と、顔は思い出せないが2人の戦隊デブキャラ。計3人の黄色いデブが、彼方からズンズン走ってきた。

「何処へ消えたんかのう~っ?」

3人のデブは、俺達が潜んでるポスターの真ん前で立ち止まって、持参したカレーを食いだした。しかも1人が、ポスターに寄りかかりやがった。
ゼェゼェと言う荒い息遣い!!Tシャツを通して伝わる湿り気!!贅肉の感触!!暑苦しい事、この上ない!!だが動けない!!誰か何とかしてくれ!!


そこで目が醒めた。


―何処かの道―

「知らねえよバカっ!!こっちは忙しいんだっ!!」

イケメンだけど何となく頭のネジが1本抜けて“のほほん”とした雰囲気を醸してる若い男が、ホンダ・ズーマーで走りながら明後日の方を向いて叫んだ。
“のほほん”としてるけど、それなり真剣な表情で真っ直ぐ前を見つめて、一心にアクセルを捻ってる。ちなみにこの道は、科特隊極東基地へ向かう道。
彼は何者で、何が目的で科特隊極東基地へ向かっているのか?ひょっとして、侵略目的の宇宙人が化けているのだろうか?すると突然・・・・
謎の若者の前方の空間に極彩色の光が現れて渦を巻き、たちまち光のトンネルと化して凄まじい引力で引っ張り込んだ!!

「えっ!?ちょっ、何だこりゃっ!?す、吸い込まれるっ!!
 お、俺は科特隊の取材に行・・・・・・・・・わあああああああああ~~~~っ!!!」

謎の若者は、たちまちズーマー共々吸い込まれて消えてしまった・・・これはあくまでも噂だが、どうやら彼が【愉快な世界】に居座ってると、色々と不都合が
起こるらしい。そこで【神の干渉】が発動されて、彼を【本来、居るべき世界】へ飛ばしてしまったのである。目的を果たした光のトンネルは綺麗に消え失せた。
奇怪な現象の一部始終を目撃してた通行人や車は、まるで何事も無かったみたいに、それぞれの目的地へ向かう。


―(株)羽里野山ロープウェー&シャトルバス・駐車場―

バルたんは「許してもらえた御礼に」と、洗車も始めた。分身術で10人くらいになって、ボディ洗い・ワックスかけ・タイヤとホイールの汚れ落とし・
窓拭き・車内の清掃を、あっと言う間に済ませてしまう・・・ピカピカになったバスを眺め、何事か考えてから社長に進言した。

「前に見た“イタシャ”ってので思いついたけど、バスにイラスト描いてもいいですかばる?」
「う~ん・・・いいアイデアだけど、時間かかるだろう?」
「5分あれば終わるばる。気に入らなかったら、直ぐに消しますばる」
「そうかい。なら、お願いしようかな」
「了解ばるっ!」

さっそく上空に浮かんでる巨大円盤へ行って、直ぐにエアブラシっぽい道具を手に戻ってきた。バス全体を眺めて少し考えてから、下書きも何もせず直で
塗料を吹き付ける。どんな塗料なのか、塗った次の瞬間には乾いた。どんな仕組みのエアブラシか、塗りながら色を自在に変えてく・・・ミリ単位の作業を
器用にこなし、≪精緻な羽里野山をバックにした、デフォルメされてるバルたんの自画像と円盤≫のイラストを、たちまちバスの両面に描いてしまった。
しかも単なるイラストでなく、バルたんがコロコロと表情を変えながら動き回ったり、円盤が飛んだり、雲が形を変えながら流れたりしている。

「羽里野山っぽくしたけど、リクエストあったら何でも描きますばる」
「・・・・・こりゃ凄い・・・」
「どんな仕組みなのかしら?」
「地球で言うナノテクノロジーを発展させた塗料ばる~」

ハヤタ・フジ・社長・何時の間にやら集まってきた社員達は、イラストの出来栄えとバルタン星のテクノロジーを感心して眺めるばかりだった。
まあ、何はともあれバスの問題が解決。社長は嬉々としながら控えの運転手を呼び出して現場へ行くよう命じ、生まれ変わったバスは走り去っていく。

「あれなら、良い宣伝になるよ。ありがとう」
「お詫びの印ですばる~。他のバスとロープウェイにも描きますばる?」
「他にも?」

悩んだ社長はチラとハヤタを見る。やってもらえるなら有り難いが、受け入れて良いのか?考えたら『宇宙人が地球へ訪れてる』って言う、国レベルの問題だ。
本人は「お詫びの印」と言ってるが、地方の一企業が深く関わり合うってどうなんだろう・・・社長の心情を察したハヤタは「構いませんよ」って感じで頷いた。
科特隊の副隊長の御墨付きなら問題ないかな。

「・・・お願いしちゃおうかな」
「解りましたばるっ!今日にでもやりますばるっ!」
「では、運行が終わるまで何処かで待機していよう」
「彼女が余り出歩くのは、拙くないですか?良かったら休憩室を利用して下さい」
「そうですね・・・では、お言葉に甘えて」
「じゃあ、円盤を隠さなきゃばる~っ」

バルたんが指をパチンと鳴らしたら、上空へ浮かんでた巨大円盤は大気に溶け込むように消えた。興味を持ったハヤタが本部に連絡してみたが、応答したイデは
羽里野山一帯に飛行物体の反応は無いと言う。どんなテクノロジーなのか?・・・何はともあれ建物へ戻り、社長が自ら案内して休憩室へ行く。


―源川家―

焼きそばが、全て食い尽くされた・・・経理担当の亜美が発した『神の声』により、女子ーズ&美穂&源川夫妻の15人に対して、用意した焼きそばの材料は
10人分。二の腕や腰回りなんぞが気になる年頃な女子ーズは「ちょっと足りないけど、まあいいや」って気分だが、大昔のアメ車の如き低燃費を誇る紅葉は
全く足りてない。そんな紅葉にとって、美穂の差し入れは神の恵み。焼きそばが無くなった途端、張り切ってたこ焼きの仕度を開始した。

「♪ひゃっはぁ~~~~~~~~っ!!」
「あの身体の、何処に入ってくの?」
「・・・さあ?」

軽く200個は作れるらしい業務用サイズたこ焼き粉を全てボールに開け、調理法に書かれてる分量の水と生卵を入れて掻き混ぜ、茹でタコと長ねぎと紅生姜を
刻む。ホットプレートをたこ焼き用と交換して温め、油を引いて生地を豪快に流し込んでタコを一片ずつ放り込み、刻みネギと紅生姜を満遍なく振りかける。
生焼けになったところで、揚げ玉をパラっと振りかけ、竹串を使って器用に引っくり返し・・・綺麗なキツネ色で、表面カリカリ中トロトロ。専門店でも出せる
レベルの、見事な出来栄えのたこ焼きが完成した。

「ぉ待たせミホ!焼けたょっ!」
「やった~、さんきゅっ!」
「ソースと生姜醤油どっちがぃぃ?」
「ん~~~~・・・ソースにしよかな」
「OK・・・マョゎ?」
「ガッツリよろしくっ!」

たこ焼きを8個ばかり皿へ並べてソースを刷毛で塗りたくって、とても綺麗なマヨビームをかける。匂いと見た目で、女子ーズの美への探求心は見事に崩壊した。
「やっぱ、少し貰おう」と、誰からともなくホットプレートの周りに集まりだす・・・そこまでは平和に事が進んでたんだけどど、いきなりトラブルが発生。
紅葉が最後の仕上げで鰹節と青のりを振りかけようとしたら、美穂が「あ、いけねっ」って感じで慌てて止めに入った。

「ストップ!青のり要らないっ!」
「ぇ?かけなきゃ美味しくなぃぢゃん?青のり嫌ぃ?」
「いや、嫌いじゃないけど・・・前歯にベタ~ってくっついたら、みっともないじゃん」
「嫌ぃぢゃなぃなら、かけなょ!てゅ~か、これミホが買ってきた青のりだけど?」
「いちおう買ったけど、あたしは要らないから」
「何それ!?ヮケゎかんねっ!」

要らないと言ってるのに振りかけようとするもんだから、美穂は軽く「イラッ」っとして立ち上がって、紅葉の手を押さえつけた・・・てゆ~かデジャビュ?
相手の顔がボヤ~っとして思い出せないけど、お好み焼き屋でこんな事あったような気がする。

「香ばしくなって美味しぃょ~っ!」
「美味しい・美味しくないじゃないのっ!歯にくっつくのが嫌なんだよ!」
「邪道だぁっ!青のりが怖くて、たこ焼きが食ぇるかぁ~っ!」
「だから、止めてってば!」
「せっかく綺麗に焼けたから、美味しく食べて欲しぃんだぁ~っ!」

紅葉も意地になっちゃって、何としても青のりを振りかけようとする・・・で、こんな時に止めに入る亜美が、間の悪い事にトイレ借りて席を外してた。
崇と女子ーズは、初めて目にする猛獣のスキンシップにオロオロするばかり。有紀は毎度の如く「母さんは見守るだけよ」って教育方針を貫いて放置。
紅葉と美穂は、互いに心の中では「そこまで言うなら引くべきか」と思いかけてたんだけど、何となく引き際を見誤って収まらなくなって揉み合いを続ける。
しばらく「かけろ」「いらない」と青のりの袋を掴んで引っ張り合ってたら・・・・すぽっ、ひゅう~~~~・・・・

(しばしスローモーション)
2人の手から、青のりの袋がスッポ抜けて飛んだ・・・
居間へのガラス戸を開ける亜美の手のアップ・・・
目を真ん丸に見開いて、青のりを見る紅葉と美穂・・・
中身をこぼしつつ、宙を舞う青のり・・・
居間へ入る亜美の足がアップ・・・
居間の方へ飛んで行く青のり・・・
口を「あああっ!」って形に大きく開く、紅葉と美穂と女子ーズ・・・
亜美が「どうかしたの?」と言いたげな顔で、キッチンを覗く・・・
その頭上で、徐々に口を下に向ける青のり・・・
(スローモーション終了)

「騒がしいけど何ご・・・・・・」
「わああああああああああああ~~~~~~っ!!!!」×いっぱい

ばさっ・・・青のりの袋が、戻ってきた亜美の頭へ真っ逆さまに直撃。ようやく止まった紅葉と美穂が、気まずそうに眺めてる。亜美は艶々ショートボブや
顔や服を青のりまみれにしたままプルプルと小刻みに震え、胸倉を掴み合ったまま固まってる紅葉と美穂を見て事情を察し、やがて低く落ち着き払った声で
「チョット、そこへ座りなさい」と命じながら居間の絨毯を指さす。蛇に睨まれた蛙の如く大人しくなった2人は、肩をすくめながら言われた通りにした。


―優麗高の体育館―

日曜日返上で、3年A組の生徒達が集まっていた。大道具が背景をセットし、小道具が細かい物を配置し、衣装を着たキャスト達が思い思いの場所で待機。
照明は台本を眺めながら「〇幕のこのシーンで暗転」とか「〇幕の冒頭、この角度からスポットライトでドロシーを照らす」とかって、麻由と打ち合わせ中。
演劇を行う別のクラスとの交代時間は3時だから、かなり忙しない。麻由は照明との打ち合わせを終えると、休む間もなくテキパキと動き回って全体の様子を
把握したり指示を出したりする。

「・・・・・・・・・」

1900年代初頭の米国の田舎娘みたいな衣装を着た真魚が、皆から離れた場所でポツリと独りで座って台本を読んでいた。話そのものは、小さい時に読んだ事
あるから知ってる。頑張って台詞も覚えたし、他の細々した事も頭に入ってる。だがまあ、問題が1つ。相変わらず“白鳥の騎士様”が頭から離れず、集中力を
著しく欠いていた。離れないどころか、愛しさが募る一方だった。真魚は本読みを中断し、スマホを取り出して眺める・・・ネットに出回ってる“白鳥の騎士様”
の画像を片っ端からファイルに保存してあり、1番カッコよく映ってるのを壁紙に設定してる。それをジ~ッと見つめて溜息を吐いた。

≪命が惜しくないのかよっ!!てゆ~か邪魔だっ!!あっち行けっ!!≫
「・・・・はぁ」

昨夜の報道で知った『“白鳥の騎士様”が若い女性だった』と言う事実は、かなり衝撃的だった。ニュースが終わってから晩ごはんも食べず部屋へ引っ込み、
ベッドに潜り込んで頭まで布団を被り、そのまま明け方近くまで悶々と考え込んでいた。少女漫画のキャラみたいに線が細いな~と思ってはいたけれども、
まさか女性だったとは。声を聴いた感じ、年上だとしても20歳そこそこ。ひょっとしたら同年代かも知れない・・・てゆ~か、この気持ちをどうしよう?
自分は今まで、至ってノーマルだと思っていた。だが“白鳥の騎士様”が女性だと判明してからも、募る想いに変わりが無いのである。

(私って同性愛者だったの?・・・・いや違う。
 だって他の可愛い子を見ても、「可愛いな」って以上には何も思わないもん。
 私は単に“白鳥の騎士様”が好きなだけ。他の女の子は、恋愛対象じゃない)

ぽわわ~ん

本人も含めて誰も気づかなかったが、真魚の姿が一瞬だけ異形に変わって直ぐ元に戻った。【覚醒】の前兆である・・・アギトやギルスに覚醒するには、
一定の苦痛が伴う。特に酷い例は、テレビ本編での葦原涼だ。ギルスに覚醒する前は色々と酷い目に遭ったし、覚醒後も変身するたびに激痛や老化現象に
苦しめられた。だが真魚の場合は、どうやら肉体的な苦痛じゃなくて【恋の苦しみで覚醒】するらしい。

「真魚ちゃん、始めるよっ!!」
「あ、うんっ!」

呼ばれて我に返った真魚は、元気に返事をして立ち上がってステージへ向かう。恋愛も大事だけど、今は『オズの魔法使い』でドロシーを演じ切るのが最優先。
せっかく主役を任されたんだから、ちゃんと皆の期待に応えなきゃ。今日はNG無しで、リハーサルするぞっ!!・・・と思ってステージ裏の控えスペースに
向かったけれども、その気持ちが何時まで保つかは神のみぞ知る。


―何処かの道・その2―

文架市方面への幹線道路が、交通事故の処理で軽く渋滞していた。並ぶ車の中に、スマートが紛れてる・・・運転席の令子は焦っていた。張り切って出発したのに、
ほぼ半日を無駄にしてしまった。道の駅での小休止を終えて出発したら間もなく、またも大久保編集長から着信。オーディオと連動させたスマホで、運転しながら
通話する。

「はい」
≪令子、今どこら辺だ?≫
「〇〇だから、基地まで約1時間くらいですね」
≪そっか・・・そこまで行っちまったのに残念だけど、宇宙人娘は居ないぞ≫
「えっ?」
≪隊員と一緒に、文架市へ行ってるみたいだ。メール送るから、リンク先を見てみろ≫
「・・・解りました」
≪それと、さっき【神の声】が聴こえてな≫
「・・・はあ」
「『あのバカは、本来の世界に送り返した。安心しろ』との事だ」
「・・・・・・・・・・はい」

スマートを道端に停めて待ってたら、直ぐにメールが来た。Instagramへのリンクが貼りつけてあり、飛んでみたら『バスにイラストを描くバルたん』とか
『バルタン星人の巨大円盤』とかが貼られてた。どうやら(株)羽里野山ロープウェー&シャトルバスの社員が撮影して載せたらしい。てゆ~か、行き違いだ。
取材先が取材先だけに、普通の企業とかと違ってアポを取るのが難しい。科特隊にも広報部とかあるだろうけど、令子が会いたいのはバルたんなのだ。かと言って
隊員のスケジュールやバルたんの居所を訊いたって、極秘事項だから教えて貰えない。こうやってアポなし突撃取材を敢行するしか思いつかなかったから出かけたけれど、
それにしてもガッカリしてしまう。唯一の救いは”あのバカ”が居なくなったって事だろうか・・・通話を終えて大きな溜息を吐いた令子は、次の交差点でUターン。
落ち込んでいても仕方ないから、さっさと文架市へ戻る事に決めた。


―源川家―

「クレハが悪いっ!ミホちゃんに謝りなさいっ!」
「せっかく綺麗に焼けたんだもん、どぅせなら美味しく食べて欲しぃぢゃん」
「だからって、嫌がる事を無理強いしちゃダメでしょっ!」
「・・むぅ~~~~~っ・・」
「もういいよ亜美。紅葉なりの親切で、やった事だし・・・
 青のり付いたら付いたで、爪楊枝やティッシュでも貰えば済んだ話だもん」
「ミホちゃんは女の子として、身だしなみを大事に思っただけでしょ。今のはクレハが悪いよ」

居間の絨毯に正座した2人に、亜美がコンコンと説教した。紅葉は「チョット納得ぃかなぃ」と言いたげな感じだったけど、自分が頑固だったのも認めてたんで、
美穂と互いに「ごめん」「いやいや、あたしこそ」と謝った。続いて2人がかりで亜美をトッピングした青のりをパタパタはたき落とし、絨毯に掃除機をかける。
かくして中断されてた女子会が再開し、皆でホットプレートを囲んでたこ焼きを焼いた・・・女子ーズは優麗高の猛獣ツートップを正座させて説教する亜美を
眺めて、「普段は大人しいけど、言うべき時はビシッと言う子なんだな」と改めて思う。紅葉に説教してるのは何度か見たが、美穂さえ頭が上がらないとは凄い。

「ピザ用チーズ、トッピングしたぃ人~っ!?」
「いいねっ!」
「私も頂戴っ!」

何やかんやで小1時間も経ったら、たこ焼きも食い尽されてしまった・・・残り70個分になった頃には「もう無理、入らない」「晩ごはん抜かなきゃ」って、
女子ーズも源川夫妻も満腹の腹を擦ってウーロン茶を飲むばかりで箸が進まない。紅葉は残りを全て焼いてペロリと胃に収め、ようやく消耗したエネルギーを
補充できたのか満足そうな笑顔を浮かべた。後片付けしてから、用事ある半数が「お邪魔しました~」と帰ってく。居残り組は、紅葉の部屋へ引っ込んだ。

「何これっ!?」
「でかっ!!」
「ぁ、それね。ベースのァンプだょ~」
「凄くね?」

6畳の部屋に不釣り合いな、巨大ベースアンプが鎮座してる。他にもタンス・机・ベッドなんぞが置かれてるんで、これじゃ部屋の中を行き来するのが大変だ。
布団を干したい時など、どうやって通るんだろう?紅葉はベッドに放りっぱだったベースギターを手にしながら話した。

「このベースギターって、前のオーナーがカスタムしてんだって。
 ぉ店の人に『小さぃアンプ使ったら、鳴らした瞬間に壊れる』って言ゎれて、これにしたの」
「へぇ~っ」
「兄ちゃんが車に色々やってるけど、楽器もカスタムするんだ?」
「何がどう違うの?」
「ん~・・・・ピックァップがどぅだとか聞ぃたけど、ょくゎかんね」

弦と並行してベース本体に2つ埋め込まれてる、四角いパーツを指さした。

「これが取り替ぇてぁるらしぃんだけど、1個3万円するんだって」
「マジか~っ!?」

値段を聞いた女子ーズは、暫し呆然としながら紅葉の愛機を眺める。やがて誰からともなく、音を聴いてみたいって話になった。途端に張り切った紅葉は、
ベースとアンプをケーブルで繋ぎ、アンプの電源を入れてベースのストラップを肩にかけ、「ふぅ~」っと深呼吸してから弦を弾く。

ドドッ!!! ダダダダッ!!! ズドォ~~~~ンッ!!!
(お手数だけども、大きな字でヨロシク)

うっかりして、アンプのボリュームを最大にしちゃってた。凄まじい重低音が響き渡って部屋の空気がビリビリと震えたような錯覚を覚え、ビックリした女子ーズは
「うひゃあ!」「きゃあ!」と悲鳴を上げる。両隣に住んでる人が雷と勘違いし、「洗濯物を取り込まなきゃ」とベランダへ出たら爽やかな秋晴れなんで首を傾げた。

「ゃべぇ・・・ゃっちゃったぁ~・・・」
「あ~、ビックリした」
「すげえな、それ・・・元の持ち主って、もしかしてプロ?」
「・・・知らなぃ」

紅葉がベース抱えたまま気まずそうに突っ立ってたら、有紀が飛び込んできて「ボリュームに気をつけるかヘッドホン使うか、どっちかにしなさいって言ったでしょ」と、
説教されてしまい、紅葉は“昔の漫画で失敗しちゃったヒロイン”みたいに、頭に手を置いて「てへっ」と苦笑い・・・その後はボリュームを最小にして、紅葉が拙い腕前
ながらも『青空になる』のベースパートを懸命に弾くのを、皆で静かに聴き入った。そんなこんなしてるうちに、気がつきゃ4時近くである。スタジオの予約は5時からだが、
ちょっと余裕持って到着しとこう。

「ごめん、あたし達5時からスタジオで練習なんだ」
「そろそろ行った方が良いね」
「じゃあ、帰ろうか」
「ごめんね」
「いいよ、気にしないで」
「私達こそ大勢で押しかけて、パパとママ迷惑だったでしょ」
「そんな事なぃょ~っ!賑ゃかなの好きだから、楽しんでたょ~!また来てね!」
「うん」

皆それぞれ帰り支度。紅葉はベースとケーブルをギターケースにしまい、「外出するから念の為に」と左腕を三角巾で釣り、上着を羽織ってギターケースを担いだ。
源川夫妻に挨拶して外へ出る。日に日に明るい時間が短くなっていて、太陽はだいぶ西の空へと傾いていた。紅葉がチャリに乗れないんで、バスで行く事にする。
正面玄関を出て最寄りのバス停までゾロゾロ歩き、やがて定刻通りにやってきた文架駅行きのバスに紅葉・亜美・美穂が乗り込んで、見送る女子ーズに笑顔で手を振った。
 

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